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地方創生のキーは、地元を離れた「出身者」たちだ―地域特化型クラウドファンディング「FAAVO」が描く日本の未来像

Jタウンネット編集部

Jタウンネット編集部

2015.04.26 11:00
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地方創生や地域おこしを合言葉に、政府は莫大な補助金・助成金を地方に交付しようとしている。一方こうした従来型の「上から下」の流れだけでなく、地方の企業・個人の新たな資金調達方法として注目を集めているのが、「クラウドファンディング」(CF)。

さまざまな特性を持つCFサービスが続々と立ち上げられる中、サーチフィールド(東京都渋谷区)の「FAAVO」(ファーボ)は、地域を盛り上げるプロジェクトに特化したCFだ。

地域×クラウドファンディング「FAAVO」のトップページ
地域×クラウドファンディング「FAAVO」のトップページ
https://faavo.jp/

FAAVOは現在、全国38エリア・47都道府県で展開している。本部直営のエリアもあるが、地域別に共同運営者を募る「エリアオーナー制度」を導入している。

あえて「地域」にこだわるCFを立ち上げた理由とは。そして、そんなFAAVOが描く未来像とは。Jタウンネットはサーチフィールドのオフィスを訪ね、FAAVO事業リーダーの八木輝義さんに思いを聞いた。

FAAVO事業部リーダー 八木輝義さん
FAAVO事業部リーダー 八木輝義さん

出身地と出身者をつなげたい

――サービスを開始したのはいつ頃ですか。
八木 2012年6月28日に弊社の新事業として立ち上げました。
東日本大震災が起きたとき、東北出身で現在は遠くで生活している人たちの多くが「福島を応援したい」「東北を応援したい」という気持ちになりました。しかし被災地に行って手助けしたいと思っても、身体をもっていけない人はいます。
現地で起きている支援イベントや自立しようと頑張っている人たちを、外からでもいいので応援したい。その思いをなんとかするために、出身地と出身者をつなげる方法はないか――。探したところ見つかった答えがFAAVOだったというわけです。

――「FAAVO」は初めて聞く言葉ですが、そこに込めた意味を教えてください。
八木 「FAVORITE、FAVOR」(地元に対する偏愛)の「FAVO」の真ん中に、「ACITON」(行動)の「A」をプラスした造語です。
誰でも故郷に対する偏った気持ちがあると思うのです。それは別に悪いことではありません。単なる思いだけじゃなくて、行動に出していけるようなことをしたい――そのイメージでFAAVOを運営しています。

――プロジェクト第1号として誕生したのは、「FAAVO宮崎」でした。通常、こうしたIT系のサービスは東京や大阪など、大都市圏から始めるのが普通ですが、なぜあえて?
八木 最初のプロジェクトが宮崎だったのは、事業を立ち上げた齋藤隆太取締役の故郷だからです。覚悟をもって臨めるところ、自分自身がコミットできる場所からスタートしました。

現地の人がオーナーになることの強み

FAAVOの特徴の1つが、上述の「エリアオーナー制度」だ。

FAAVO本部は共同運営者(エリアオーナー)に対して、CFを始めるために必要な「商標使用権」「システム」「運営ノウハウ」を提供する。この対価として共同運営者は一定の固定費(フィー)を支払う。
共同運営者はエリアオーナーとしてプロジェクト起案者(プレイヤー)を募る。設定期間内に目標金額に達しないと成立しないため、エリアオーナーはCFマネジャーとしてプレイヤーをフォローしなくてはいけない。

――なぜエリアオーナー制度を導入したのですか。
八木 地方でCFを展開するとき、プレイヤーを集めることがネックになります。CFという手法があると言葉で伝えるだけでは不十分で、目の前の人物を信用して、その人の言っていることだから試してみようという人が多かったのです。

FAAVOの「都道府県別オーナー制度」(エリアオーナー制度)のページ
FAAVOの「都道府県別オーナー制度」(エリアオーナー制度)のページ

1回試した人=プレイヤー経験者が口コミで成功体験を伝えたり、イベントやセミナーで話したりしないと、そのエリアでプレイヤーは増えません。
そこで弊社は全国にCFのマネジャーを置くべきだと考えました。自社でやるのが大変と言うよりも、東京から地方の現場は見られないのです。
信頼できる現地の企業にシステムをお渡しして、審査や原稿の入稿もやってもらう。本部のダブルチェックはあるにしても、現地の肌感とか、どういったチャレンジがあるとか、コネクションも含めて現地の人に任せた方が、地域の風土づくりや気持ちの醸成につながります。

――東京の本部オフィスだけでは限界があると。
八木 はい。「成功するためにどうすればいいのか」と考えるプレイヤーからすると、相談できる窓口が近くにあるのは心強いですよね。
顔が見えて、相談しながらよりその内容をブラッシュアップしていける、肌感が分かったうえで言葉を添えてくれる、アドバイスしてくれる――。現地の有力者を知っている人がCFマネジャーになると、横のつながりを使って「このプレイヤーだったらこの人を合わせてあげればいい」と世話することも。プレイヤーからすると大きいですよね。お金を集めてからが本当のスタートですから。
エリアオーナーにとっても、コンサルティングで長くお付き合いをすることで本業にプラスになると考えます。
志ある企業は大手だけとは限りません。NPOや地方発ベンチャー、コンサルティング会社など規模や業種は様々です。

西日本ほどCFに意欲的

――どのような企業がエリアオーナーになっているのですか。
八木 大きいところだと不動産仲介業のオープンハウス(東京都千代田区)や静岡新聞社が挙げられます。面白いところですと、地元金融機関の飛騨信用組合(岐阜県高山市)が飛騨高山エリアのオーナーを務めています。

FAAVO飛騨・高山のトップページ
FAAVO飛騨・高山のトップページ

普通だったら融資に結び付かない、詰め切れていない事業内容だとしても、CFで資金や支援者が集まれば、その商売や新商品にニーズのあることが分かります。そうやって走り出したのであれば、次に融資を実行する可能性が出てきます。つまり融資の与信の判断にもなり得る。テストマーケティングとして使えるので、いろんなチャレンジャーを支援することができるというわけです。

――それは思いつかなかった発想ですね。
八木 FAAVO大阪のオーナー、NPO法人「まちイノベーション」もパワーと馬力があります。

FAAVO大阪の運営団体、オフィシャルパートナー、パートナー
FAAVO大阪の運営団体、オフィシャルパートナー、パートナー

ここはオフィシャルパートナーとして大阪府と(大阪市)住之江区が入っています。最初は住之江区だけでしたが、その後大阪府(環境分野)とも提携しました。
プロジェクトの案件を探してきてくれるパートナーは12ありまして、その中にはFAAVO兵庫のオーナーも含まれます。関西は横のつながりがあって、お互いに紹介し合えるようなパートナーシップを結んでいます。合同でイベントを開催することもあるようです。
全国的に見ると西日本のエリアオーナーが頑張っていますね。気質なんでしょうか。新しいものを試してみて、広めていって......。「やってみたらいいじゃない」という雰囲気がすごくあります。

地方自治体の参加も始まっている

八木 自治体がオーナーまたはパートナーになっているケースもあります。
例えば島根県県庁には「しまね暮らし推進課」という部署があって、そこの課が中心にCFをやっています。ただし直接動いているのは県職員ではなくプロジェクトのアドバイザーです。プレイヤーにアドバイジングする仕事をしていて、県は彼らに助成するという仕組みをとっています。
福井県鯖江市は行政自らがエリアオーナーとして動いています。
埼玉県と弊社はパートナー協定を結んでいます。共助社会実現のために市民の担い手をつくる課がありまして、共助仕掛人の方が案件を拾ってきて、紹介してもらうというやり方です。

――行政のネームバリュー力は大きそうですね。
八木 地方の人からすれば、自治体が窓口だと安心感があるのでしょう。相談は増えてきます。その内容の精度が高くないと県は突っ返してきますが、意外とそれが良かったりするんですよね。プランが練られていない点に関しては対策を話してくれるので、プレイヤーたちにとってもプラスになっていると聞きます。

「『クラウドファンディングで終わるつもりはない』 FAAVOが見据える『地方創生』、その真の目標は?」へ続く】
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