都営バス最古、大塚車庫が29日閉鎖......お別れイベントに行ってきた
東京都文京区大塚にある「大塚車庫」こと都営バス大塚支所は、最も古い歴史をもつ都営バス営業所だ。2015年3月29日をもって約86年の歴史に幕を閉じる。
大塚支所は東京メトロ丸ノ内線茗荷谷駅から徒歩3分、春日通り沿いにある。
茗荷谷は跡見学園女子大学や御茶の水女子大学、貞静学園などの女学校が集中して立地する、女子率の高い町だ。
都営バスの前身である市バスがスタートしたのは1923年(大正12年)に発生した関東大震災がきっかけだ。市電が復旧するまでの応急処置として緊急導入され、1924年1月18日に創業した。大塚起点の路線は同月28日に運転を開始している。
市電は同年6月に全線が再開。7月末日をもって廃止することが市参議会で議決された。ところが従業員の存続運動が起き、7月26日に恒久運行化が決まった。わずか5日前のことだ。
1928年に大塚営業所が置かれたが、2008年に支所に格下げされている。
ずいぶんとレトロな車庫だが建設されたのは1925年。元々この場所には市電の車庫があった。その後バスの営業所が移転してきたという経緯をもつ。
3月7日、ファン向けさよならイベント「大塚車庫の記憶」が開催された。
朝8時から12時までの午前中の開催。小雨の降るあいにくの天気にもかかわらず、大勢のバスマニアが集まった。
普段は人影のまばらな車庫に大勢の人が集結していることに、通りすがりの女子学生たちが「何か起きているの!?」と目を丸くしていた。
フィルム式方向幕のバスにマニアが興奮
最近のバスは行先方向幕がLEDになっているが、イベント用に集結したバスは、フィルム仕様の方向幕になっている。
熱心なバスマニアがアングルを変えて一心不乱に撮影に励んでいる。
見どころはバスだけではない。古びた格納庫のディテールがいちいち年季入っている。下の写真は、時代を感じさせる「検」の文字が印象的だ。
バスの下部から点検整備ができよう、人が潜れるようになっているところもある。
事務所建物の壁面には「日常点検個所及び点検順序」をまとめたパネルがあった。
防火水漕は金魚のすみかに
その横には、古いタイプの停留所標識や、金魚のすみかとなった防火水漕なども。文字が右から左に流れているということは......戦前戦中の設備だろうか。
都営バスグッズや不用品の販売コーナーも設けられたが、めぼしいものは早々に売り切れてしまった模様。
路線バスの運行はどうなる? 現場の本音は?
30日からは車で約2.7キロ離れた巣鴨自動車営業所に統合され、すぐ近くの停留所「大塚車庫前」は「窪町小学校」に改称される予定だ。
所轄の「都02系統(大塚駅~錦糸町駅)」と「上60系統(池袋駅東口~上野公園)」は引き続き運行される。
かつて大塚支所に勤めていた現役の運転手に話を聞いた。
「建物は古くて電気配線はむき出しだけど、コンパクトで使い勝手は悪くなかった。なまじっか広いと歩くんだよね(笑)。昔の職人が丁寧に作った建物だから、東日本大震災でもそれほど影響はなかったって聞いている」
「本当は巣鴨が大塚に集約されるはずだった。でも文京区の都市計画の一環で巣鴨統合に変更された」
「近所の学校法人が土地を欲しがって、それに応じたって噂だけど、詳しいことは知らない。ただ、直下の浅いところを丸ノ内線が通っている。ビルを建てるのは容易じゃないはず。グラウンドに転用するにはピッタリだろうけど」
「運転手の交代は巣鴨より大塚の方が便利。現場としては『残したい』という声が挙がってた。でも土地が売れるなら、都営地下鉄の赤字の穴埋めに少しはなる。そういう目論見もあったんじゃないかな」
「巣鴨営業所も舎人ライナー開通で所轄エリアのバスの本数はだいぶ減っている。(他の交通機関が)止まったときの代替機関としてバスは残るけど、そこで働く身からすれば厳しい時代だよ」