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批判殺到で中止になった鳥取市の「公務員婚活」、いったい何が悪いのか

Jタウンネット編集部

Jタウンネット編集部

2015.03.06 18:29
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気がつけば日本は未婚者だらけの国となり、婚姻率は1970年代前半の半分近くにまで下がっている。
もちろん恋愛と結婚は個人的なことで、他人があれこれ口を出すものではない――という考え方はあるだろう。しかし国や地方自治体の危機感は切実だ。「このままでは少子化や孤独死が進展するばかり。なんとかカップルを増やさないと」と、婚活サポート事業に乗り出している。

鳥取市は「新たな出会い支援事業」を2010年から実施している。具体的には毎年100万円程度の予算を組んで、婚活イベントに対する補助等を行ってきた。
2014年11月には市と地元企業が一緒になり、「すごい!鳥取市婚活サポートセンター」を開始した。

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男女各20名程度が参加する婚活イベントや、6~10名の小規模グループが食事をしながら交流するパーティーなどを開催。2月15日の「バレンタイン婚活!」では5組のカップルが誕生した実績もある。

いい感じで推移してきた鳥取市の婚活支援事業。ところが3月13日開催予定の「ホワイトデー婚活!」は中止が決まった。
理由は男性の参加資格が「公務員」に限ったこと。3月6日の毎日新聞によると、5日にイベント内容がマスコミに報道され、「税金で実施するのは許されない」「職業限定は人権侵害では」と内容を批判する電話や電子メールが20件以上あったことから、その日の夜に開催中止を決めたという。

自治体の取り組み自体は当然必要

「俺たちの税金を使って、公務員サマは身内を結婚させようというのか!」――この件にお怒りの人たちの意見というのは、だいたいこういうところだろう。だがこの話、そんなに悪いことなのだろうか(もちろん、「税金泥棒」と言われないためにはもっとうまいやり方があったかもしれないが)。

少子高齢化に地方が苦しむ中、現場で働く公務員たちは、そんな町を支える中核的存在であり、そして貴重な住民だ。彼らの結婚率をなんとか上げようと自治体が取り組むこと自体は、十分合理的な話だ。事実、ネット上ではそうした冷静な声もある。

たとえば山形県は「県庁花咲か応援隊」を組織して独身職員をフォローしようとしている(参照:同僚が結婚のサポーター! 山形が始める「県庁花咲か応援隊」の正体に迫る)。
Jタウンネット編集部の電話取材に応じた山形県の担当者によると、県庁職員の独身者割合は県全体の生涯未婚率を上回るという。

安定性抜群で、財政破たんでもしない限りそこそこの給与が保障されている公務員。さぞモテモテかと思われがちだが、現実はそうイージーではない。

また民間に目を転じれば、企業などが「プライベートの充実は仕事にもプラス」との観点から、社員の婚活促進に取り組む動きは少なくない。こうした動きは、少子化社会に会って「企業による社会貢献の一環」とさえ賞賛されている。
まず隗より始めよ、とも言う。自治体なら、なおのことではないだろうか。

婚活支援は市政の一大テーマだったのが

だからこそ、深澤義彦鳥取市長は婚活サポートセンター創設時に次のような応援メッセージを送っていたはずだ。

「私が若いときは、職場の同僚や上司また、時にはお節介好きな親戚、ご近所さんなど出会いのキューピットがそこここに待ちかまえており、結婚を意識していなくても自然に結婚していたように記憶しています。ですが、時代も移り変わり、職場の人とは毎日顔を合わせて仕事をするけど、それ以外の人とは出会う場がないという声をよく耳にするようになりました。
働く環境や子育てをする環境も大事ですが、今の皆さんに一番大事な出会いの場づくりも大切だと実感しています」

外からの圧力に弱いのは気のせい?

今回のイベント中止で思い出されるのは、お蔵入りとなったゆるキャラ「かつ江(渇え)さん」だ(参照:鳥取市の餓死系ゆるキャラ「かつ江(渇え)さん」が怖すぎる)。

昨年2月に市は鳥取城跡マスコットキャラクターを公募し、次点となった「かつ江さん」を籠城戦マスコットキャラクターにしようとしたが、賛否のメールが相次いだことから市教育委員会は3日間で公開を中止した。

今回のイベント中止を決めたのは熟慮の末だったのだろうが、鳥取の今後のためにも、ぜひ婚活への取り組みは継続してほしい。

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