犬たちのための「ふるさと納税」...殺処分ゼロに貢献できる神石高原町とNPOの取り組み
話題の「ふるさと納税」、豪華なお礼の品に人々の目は集まりがちだが、広島県神石高原町は集まったお金の「使い方」が支持されている。
寄附金額が激増した理由は「犬の保護」
同町のふるさと納税がユニークなのは、自治振興会や町内のNPO法人を支援対象に指定できること。
2014年9月、町内を拠点に捨て犬などの保護活動を展開する「ピースウィンズ・ジャパン」(PWJ)が指定先に加わったところ、ふるさと納税寄附額の平均100万円を80倍以上も上回る額が集まった。
愛犬家が共感した理由とは
2010年11月から犬の保護活動に取り組むPWJ。そのプロジェクトであるピースワンコ・ジャパンは、町内に西日本最大級のドッグランやドッグカフェなどを備える。犬にとって楽園といっていい環境だが、現在は広島県内の殺処分数ゼロを目指す。
「行政の動物愛護センターから犬を引き取っています。殺処分寸前の犬はケアされない傾向にあり、ケガの治療を受けられず苦しんでいる子もいました」(PWJの担当者)
誰からも手を差し伸べられることのない、傷ついた犬たち。しかし、そんな犬だからこそPWJは何とかしたいと考えている。
獣医師が健康状態を診断し、必要に応じてワクチン接種や手術を含む治療を施す。さらに人と暮らせるようドッグトレーナーがしつけて、新しい飼い主を探す。このほかセラピー犬や災害救助犬として育成する取り組みもしている。現在は180頭ほど保護しているという。
少し前まで新しい飼い主探しに苦労していたそうだが、広島市と神奈川県藤沢市の大型商業施設に譲渡センターを開設したことで、「飼いたい」と申し出る人は増えている。
「動物を飼いたいとお考えの方は、まず最初に当センターに来てほしいですね。人懐っこい子ばかりですよ」(PWJの担当者)
昨年末までのPWJの実績は、総保護数が369頭、譲渡返還数が169頭。引き取り数と譲渡数が増えれば増えるほど施設の拡充やスタッフの増員が求められる。そのためにも資金が必要というわけだ。
殺処分数ゼロの実績を町も認めた
PWJの活動もあって神石高原町は殺処分数ゼロを達成した。そうした実績が認められ、ふるさと納税の支援先にPWJは指定された。
「(PWJを)地域づくりに必要な相手と考えていましたので、財政支援ができないか検討していましたが、今回のような形がよいと判断しました」(町役場の担当者)
環境省がまとめた2013年度の「犬・猫の引き取り及び負傷動物等の収容状況」によると広島の殺処分数は1383頭で、全国で4番目に犬の殺処分数が多い。
全国ワーストだった2011年の2342頭と比較すれば大幅な減少だが、行政だけでは限界があるのも事実で、PWJのような民間団体は必要不可欠だ。
ドッグカフェはリゾート施設としても魅力がある。
岡山との県境に広がる同町は標高500~700メートルの高原地帯に位置する。風光明媚な環境を活かした「仙養ヶ原ふるさとの里」は複合型レジャーキャンプ場。南は瀬戸内海、北は大山まで見渡せる。
ドッグランはその一角にあり、3エリアの合計面積は6000平方メートルもある。ログハウスは犬同伴の宿泊も可能だ。
ふるさとチョイスの募集は1月31日をもって終了したが、町に対するふるさと納税は現在も受け付けている。
お礼品のコーヒー豆はPWJから送ることになっているが、ただいま申し出が殺到しているため発送は遅れ気味。到着まで1カ月ほど待ってほしいとのこと。
「寄せられた寄附金額は想定以上でしたが、温かい応援をいただいたことが何よりうれしかったです」(PWJの担当者)
地域ならではの魅力あるお礼品も素敵だが、こうした選択肢もふるさと納税には存在する。