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政令指定都市で唯一「百貨店」がゼロの町はどこ?

Jタウンネット編集部

Jタウンネット編集部

2015.02.26 19:37
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バブル崩壊まで百貨店は、どの都市にとっても繁華街のランドマークであり、小売業の王様だった。

時代は移り変わり、現在の日本で百貨店経営が成り立つのは、人口100万人規模の都市くらいと言われる。実際、現時点で全国の政令指定都市には必ず1つは百貨店が存在する。 ところが、「100万人ライン」を40万人以上も上回るにもかかわらず、市内唯一の百貨店が消滅する政令指定都市がある。

人口142万人の町がデパートゼロに!

東京都と横浜市に挟まれた神奈川県川崎市は、人口約142万人。県庁所在地以外で最も住民数が多い。
川崎唯一の百貨店として君臨してきた「さいか屋」が、2015年5月末をもって営業を終了する。
閉店まで残り約3カ月となり、大感謝セールが2月25日から各フロアでスタートした。

さいか屋川崎店閉店大感謝セールの告知(同店の公式サイトより)
さいか屋川崎店閉店大感謝セールの告知(同店の公式サイトより)

明治時代初期に横須賀市で創業したさいか屋は、1956年に念願の川崎進出を果たす。現在の水準からすると決して広くはない店舗だが、1988年にJR川崎駅前に開業した西武百貨店川崎店の攻勢もしのぎ、地域一番店としての地位を死守してきた。

刺客は駅反対側にできたガリバーモール

そんな状況が一変したのが、2006年にJR川崎駅西口にオープンしたラゾーナ川崎プラザ。東芝工場跡地に建設され、駅直結の好立地にもかかわらず延床面積はさいか屋の約5倍もある。

ららぽーとを展開する三井不動産が運営するだけあって、客を飽きさせない仕掛けはお手のもの。テナント誘致能力は最強クラスだ。
川崎市民どころか、多摩川を隔てた東京都大田区や横浜市鶴見区あたりからも人が押し寄せる一方で、さいか屋は窮地に追い込まれていった。

テナントに「洋服のサカゼン」を迎え入れたり、外商を廃止したりと、なりふり構わぬ経営努力で黒字化を果たしたが、リースバックしたファンドから定期建物賃貸借契約の更新を断られ、閉店することとなった。

上記のとおり、全国の政令指定都市には最低1つは日本百貨店協会に加盟する「百貨店」がある。このさいか屋閉店で、川崎市では政令指定としては唯一、百貨店がない街になってしまう。

さいか屋閉店を惜しむ人のツイートで目立っていたのは、地下の食品売り場の素晴らしさを誉める声だ。決して新しくはないけれど、味にこだわりのある下町の名店のような魅力がデパ地下にはあり、それは同店も変わらない。
そういえば、同フロアは1986年に放送された連続テレビドラマ「あそびにおいでョ!」の舞台にもなり、主演の斉藤由貴さんはデパ地下の店員に扮していた。掘り起こせばいろんな歴史があるものだ。

大都市の百貨店も安泰ではない時代

川崎市は縦に長い都市だ。JR横浜駅ほどの強力な求心力は川崎駅にない。それでも2013年度のJR川崎駅の乗車人員は19万7010人、京浜急行京浜川崎駅の乗降人員は11万9034人それぞれいる。これはJR札幌駅と市営地下鉄さっぽろ駅を足した数よりも多い。
これだけの商圏を抱えながら、黒字化するためになりふり構わぬ策を講じ、それが閉店の引き金になったというのは皮肉だ。それだけラゾーナの吸引力がすさまじいのかもしれないが。

もっとも川崎店は完全閉店するわけではない。6月3日、川崎日航ホテルテナントゾーンにサテライト店舗を開く。店舗面積は260平方メートルとコンビニ程度の広さだが、中元歳暮ギフト・学生服・婦人服等の販売を行う。
発祥の地にある横須賀店も変わらず営業する。

さいか屋川崎店(妖精書士さん撮影、Wikimedia Commonsより)
さいか屋川崎店(妖精書士さん撮影、Wikimedia Commonsより)

ところで、日本百貨店協会に加盟するデパートが1、2店舗になっている政令指定都市はほかにもある。

静岡県浜松市は遠鉄百貨店だけだし、熊本市は今月末の県民百貨店閉店で鶴屋百貨店のみとなる。
福岡県北九州市には小倉駅と黒崎駅にそれぞれ井筒屋が立地するが、集客に苦戦している。

先ほどJR川崎駅の乗車人数が19万人以上いると書いたが、JR浜松駅は3万5494人、JR熊本駅は1万3516人(中心部からは離れているが)、JR小倉駅は4万6750人、JR黒崎駅は1万5908人しかそれぞれいない。

大都市にある百貨店を襲う試練。その波は川崎で収まるだろうか。

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