ニッポンの「地域」を、世界に売り出せ! JR西日本が挑む「海外通販」の未来
「JAPANSQUARE」という通販サイトをご存じだろうか。海外ユーザーに向けて、さまざまな日本製品を売り出しているユニークなサービスだ。
その事業をプロデュースしている企業の名を聞いたら、少し驚くかもしれない。西日本旅客鉄道。そう、あのJR西日本なのだ(ナビバードとの共同事業)。
「JRがなぜネット通販を、それも海外向けに?」――その問いに答えるキーワードは、「地域」だ。
地域の食品・工芸品を海外に!
「ニッポンの製品が、世界で人気」――こんな話題を、最近よく聞く。100円ショップが訪日外国人に大受けだったり、あるいはネット通販でインスタント食品や菓子、飲料などに海外から注文が殺到したり......。
一方で、海外の人たちに届く「日本」の多くは、全国で流通するような大手メーカーの製品だ。私たちの日々に根付いている、「地域」「ローカル」の商品というのは、なかなか世界に飛び出す機会がない。
そんな中でJAPANSQUAREでは、古くから地元で愛されているような「地域の名産品」が積極的にフィーチャーされている。
「2014年1月28日にオープンして1年、最近はリピーターの方が増えてきました。高価な蟹の缶詰や南部鉄瓶など、予想もしなかった商品に人気が集まるなど、驚くことも多いです」
運営に当たるJR西日本創造本部の担当者は、こう語る。サイトは英語、中国語(簡体・繁体)、韓国語に対応。中国を筆頭に、台湾やアメリカ、ヨーロッパ各国と広い地域から日々注文が集まっているという。
ラインアップは、うどんなどの麺類や乾き物、金平糖など和菓子、といった食品。あるいは、作り手の温かみが伝わってきそうな工芸品。その多くは中小の地場企業から生まれた製品だ。海外のユーザーにとっては、JAPANSQUARE以外ではなかなか手に入らないであろうものも多い。
「いいもの」を通じて観光拡大にも
JR西日本は2010年、中期経営計画で「地域との共生」を掲げた。
「鉄道」と「地域」は、切っても切れない関係だ。地域の沈滞は、JR西日本にとってもマイナスとなる。これまでの結びつきを生かしつつ、地域の経済を盛り上げる方法はないか――そこで注目したのが、「販路をなかなか拡大できない」地場企業の悩みと、まだ競合が少ない「海外向け通販」という市場だ。
「当社がプラットフォームになることで、地域の企業は海外へと販路を広げることができます。こうして国内の『いいもの』を海外に広めていけば、これをきっかけに日本観光に......という展開にもつなげられるのでは」
行く行くはこのJAPANSQUAREをはじめとした「地域」ビジネスを、「鉄道」に留まらない新たな事業の柱に育てたい――そんな期待もにじむ。
世界中が相手、いったい何が受ける?
微博(ウェイボー)など各種SNSを合わせ180万人のフォロワーを集めるなど、海外の「日本ファン」からの注目も熱い。今後もサービスの拡充を進め、将来的には食品や工芸品などに留まらず、訪日客向けの「体験・見学」などの商品も取り扱いたい、という。
今後5~6年以内に、年間5億円を目指す。
「世界中が相手ですから、どんなものが受けるかはまだまだわかりません。だからこそ、どんどんいろんなものを売り出していきたいと思っています」