「地方は、今度こそ変われると思う」 ふるさと回帰支援センター・高橋公代表理事に聞く(後編)
「地方移住」の現在を探るべく、ふるさと回帰支援センターの高橋公代表理事へのインタビューを行ったJタウンネット編集部(前編はこちら)。
ご多忙の中にも関わらず、自らセンター内を案内していただくなど、熱っぽく、かつ親身に「ふるさと回帰運動」の今を語ってもらった。
後編では地方移住・地方政策のこれからに関する部分を紹介したい。
都会人の移住者誘致にかつてないほど地方が本気
――センターと協力している地方自治体はどれくらいありますか。
高橋 当センターにブースを出しているのは現在21県ですが、2015年度から新たに十数県増えます。さらに市町村も会員になりたいと言ってきています。今過疎地といわれている自治体は約770カ所。それに対して当センターの会員数は150。決して多いわけではありません。これからだと思いますね。
――地方自治体の取り組みに変化はありますか。
高橋 移住者の仕事といえば農業が圧倒的でしたが、地場の中小企業を回って就職の掘り起こしをやっている自治体もありますよ。本格的にエンジンがかかってきたのはここ数年のことですが。
労働行政は見直しの時期かもしれませんね。国(ハローワーク)に一元化するのではなくて、もっと都道府県に落としてもいいかもしれません。
全国の自治体が当センターで開いたセミナーは昨年が120回。今年が136回あります。こちらから各県に伝えているのは、どういう人たちに来てほしいのかということ。対象を絞ったり、特徴を出してセミナーを開いたり。
ふるさと回帰運動は「西高東低」
各地をくまなく回り、土地土地の話題が出ると「あそこは大好きでね......」と笑顔を見せるなど、取材の間にも地方への深い思い入れを感じさせた高橋代表理事。これからの取り組みが気になる地域を尋ねた。
――注目している地域はありますか。
高橋 センターで人気の高いのが山梨。悠々自適のシニア世代が多いですね。一方、高知は若者が多いです。農家から有機栽培の野菜を仕入れて、それをインターネットで売るというのがあります。いい意味でユニークなところですよ高知は。
来年3月に新幹線が開業する北陸はこれからでしょう。あーでもない、こーでもないと期待を込めて議論して、準備しているのは初めてじゃないでしょうか。北陸は持ち家率ナンバーワンだし、一流の中小企業もたくさんあります。外から人がやってくるようになったら人気が出ると思いますよ。
福島第一原発の事故後、最初に人気が出たのは九州でした。ところが向こうはそういうことが信じられず、「田舎暮らしするなんてそんな馬鹿なことを」「東京に行ったのに何で帰ってくるんだ」という感じで、受け皿ができなかった。それで移住希望者たちが中国地方に流れてしまった。しかし宮崎、長崎などは県が力を入れ始めています。
今日も、ある県の副知事がこのセンターにやってくる予定です。どこも今、みんな「乗り遅れてはいけない」と動いているんです。
2015年、政府も地方移住に本気
新聞や雑誌に広告を一切打たず、口コミ頼りでやってきたふるさと回帰支援センター。1カ月の相談件数が1000件に達するまで10年以上の月日を要した。
高橋代表理事は2015年以降、この取り組みにドライブがかかるだろうと予測する。
というのも、まち・ひと・しごと創生法の施行を受け、大都市から地方へ人材を貫流するシステムを政府が策定中だからだ。
「具体的にセンターが協力できることがあればしっかりとやります。予算がつけば、もう少しダイナミックに展開できるかもしれない。国民運動という形で」(高橋代表理事)
このインタビューの直後の19日、同センターの増床を記念して開催されたパーティーでは、まち・ひと・しごと創生本部事務局長代理の山崎史郎氏も出席し、国自ら「全国移住促進センター」を設置するなど、積極的な地方政策を打ち出す方針を語っていた。
過去、政府は様々な地方移住対策を打ってきた。しかし過疎化は止まらず、いびつな人口構成がもたらす問題は、より大きな衝撃となって3大都市圏に迫る。その中で起こる「都市から地方へ」のうねりは、ある意味で生き残るための「本能」が呼び起こしているのかもしれない。
高橋代表理事は、こう力強く語る。
「ふるさと回帰支援センターを立ち上げて12年。やっと政府が追い付いてきたように思います。地方を何とかしたい、というのは竹下内閣の『ふるさと創生事業』(1988~89年)など、何度もチャレンジし、失敗してきました。ただ今回は、これまでのふるさと回帰運動の積み重ねもあるし、そして自治体も力を入れている。今度こそは変われると思う」
「変えなきゃいけない」