山梨県「農家の皆さん、農地を貸してください」
農家が作物の栽培を止めてしまった「耕作放棄地」は年々拡大している。農林水産省の2010年調査によると、その面積は日本全体で滋賀県全体と同じくらいになっている。
都市部や平地でも増えている耕作放棄地だが、中山間地域はとくに深刻。海なし県で山に囲まれた山梨は全国2番目の放棄地率となっている(1番は長崎)。
仕組みは次の通りだ。(1)農地中間管理機構(農地集積バンク)が所有者から農地を借り、(2)新規就業者や意欲のある農家に転貸する。まとまった土地を地域ぐるみで貸し付けると、地域に協力金が支払われるという。
借り手は集まっているが貸し出す農地は...
せっかく農地を集めても借り手がいないことには意味がない。 2014年度、県は3回に分けて借り手を公募している。県の農政部農村振興課の担当者に電話取材したところ、200の個人・企業から応募があり、希望耕作面積の合計は170ヘクタールに達する。この中には新規就業者も含まれる。
一方、貸し手の募集については市町村や一部JAに業務委託をしている。情報をストックしている段階だが、収集に苦労している様子だった。
いくら農業の人手不足が進んでいるといっても、優良な農地は農家にとって羨望の的。山梨の農地は果樹園が多いが、耕作地が売りに出されるという情報が流れれば、隣近所がすぐに申し込む。
売り手の方から顔見知りに「買ってくれないか?」と頼んで、成立するケースも少なくない。
リニア新幹線の経由地になることが決まっている山梨。耕作放棄地を所有する農家が公共事業用地への転売を待っていたり、万が一帰農するときに備えて貸し出しを渋っていたりするケースもあると聞く。
耕作意欲を失った土地所有者と意欲的な生産者のマッチングを図るのが農地中間管理機構の役目。県は10年間で4500ヘクタールの土地を次世代の担い手に提供することを目指している。機構を通さない貸借を含む目標値とはいえ、ペースを上げないといけないだろう。
農地の集約化事業は今に始まったことではないが、過去、国が推進した施策はほとんど失敗した。今回の農地集積バンクは、安倍政権の農業構造改革を受けたもので、全国の都道府県が取り組んでいる。山梨県などの今回の取り組みの行方は――。