三田線車両基地の真上にそびえたつ「都営西台アパート」...昭和が生んだ巨大団地の現在
家族連れでにぎわう都営フェスタ
入口は高島平駅から徒歩7分ほどのところにあり、入場すると多くの鉄道ファンでごった返していた。
普段は立ち入ることのできない車両工場にも入ることができた。輪軸をはじめ重厚な車両部品がいたるところに置いてあった。
1968年11月に開設された検修場は西台駅から高島平の間に立地する。敷地面積は13万7000平方メートルあり、最大で336両収容できる。敷地内で試運転も可能だ。東京メトロ・都営地下鉄の車両基地の中でも最大級の広さを誇る。
引上線には3編成が留置され、家族連れが記念撮影をしている。
それとは反対の西台駅方面に目を転じると――留置線の上に大きな集合住宅群が並んでいるではないか。
これが噂の構造物か――工場見学を早々に済ませ、さらに東の方角に足を進めた。
大きな集合住宅群の正体は「都営西台アパート」。1972年に人工地盤が造成され、その上に集合住宅が建設された。同時代に高島平に誕生した団地と同様、結婚して家庭を持った「団塊の世代」が主なターゲットだった。
東から5~8号棟の4つの建物があり、筆者は最も西側の8号棟の最上階へ向かった。
入口付近にある郵便受けに目をやる。ガムテープで封をされている部屋が多い。
14階でエレベーターを降りると――住人のおばあちゃんたちが集まっていた。これから買い物にでかけるところらしい。都営フェスタで気になって立ち寄った、いい撮影ポイントはないですかと尋ねると、彼女たちは親切にいろんなことを教えてくれた。
今日は見えないかな~。冬に北風が吹くと富士山がきれいなんだよね。
都の職員も言っていたの。『ここのロケーションは最高ですよ』って。
家賃は人それぞれだけど、私は2万円ちょっと。
住人はみんな年寄りばっかりでね~。8号棟が一番年寄り多いの。
入口のポストにガムテープがいっぱい貼ってあったでしょ? みんな死んじゃうのよ。
近所付き合いのない賃貸マンションに住む筆者。昔の長屋はこんな感じだったのかもと思いつつ、写真を撮って再び地階へ降りる。