「世界最速の新聞配達に挑戦」 西日本新聞のCM動画が突き抜けている
ジャージ姿の新聞配達員。またがる自転車の荷台には、なぜかバカでかいロケットエンジンが。固唾を飲んで見守るスタッフたち。彼らが目指すのは――「世界最速の新聞配達」。
九州のブロック紙である西日本新聞の経済電子版「qBiz(キュービズ)」のWeb広告「世界最速の新聞配達」がネット上でちょっとした話題になっている。
自動車を一瞬で追い抜き...
「qBiz」は6月から「いい野菜は、八百屋が知っている。」をキャッチコピーに、九州ゆかりのクリエーターが手がけた動画を月替わりで公開。qBizサイト内の記事は有料だが、動画は広告なので、特設サイト(http://cp-nnp.jp/)で、無料で見ることができる。
話題の「世界最速の新聞配達」は7月に公開された第2弾広告で、担当したのは宮崎市生まれで広告代理店「BBDO J WEST」の眞鍋海里さん。その内容は、ロケットエンジンを積んだ自転車で世界最速の新聞配達に挑もうとするチームをドキュメンタリー風に追ったという想定だ。冒頭で「野菜と同じように、情報は鮮度が命。だから速く届けたい。そんな西日本新聞社の熱い想いを、僕らは、CMという枠を超えて表現したかったんだ。」と制作意図をテロップで説明しスタートする。
動画はまず、ガレージのような場所で自転車後部の荷台にエンジンを取り付けるシーンから展開し、工場の庭のような広い実験場へと移っていく。スタッフたちが着々と準備を進め、いよいよ測定開始へ。ポストまで200メートルの地点から号砲とともに発車すると、エンジンからゴーッという轟音とともに白煙が噴射され、あっという間にトップスピードへ。その速さを強調するため、並走する車を軽く追い抜くシーンが盛り込まれており、配達役の男性が見事に新聞を投函してチャレンジは見事に成功する。
ここでベートーヴェンの「交響曲第九番」が流れ、スタッフの歓喜の輪ができたところで「いい情報は、速く届けたい。」という感動的なテロップが浮き上がる。これで終わりかと思いきや......。
購読率低下に危機感...面白CMまだまだ出る?
オチは特設サイトで確認してもらうとして、この動画、突っ込みどころも多いうえ、新聞社のCMだけに号砲に新聞紙で折った紙鉄砲が使われといった小ネタもちりばめられている。ネットでは「ねつ造だ」「本当のチャレンジではない」など否定的な意見もあるが、「オチが最高」「こういうバカは好き」「すばらしいアホっぷりだ。最後の台無し感もいい」「こういうくだらないことを一生懸命やるのってなんかイイ」など好意的なコメントが数多く並ぶ。西日本新聞の「qBiz」サイトでは、17日夕方時点で「再生10万回突破」したとして、スタッフTシャツのプレゼントを受け付けている。また、動画投稿サイトYouTubeにもアップされ、18日昼までの再生回数は25万回を超え、その後も増え続けて人気の動画の一つになっている。
CMに登場した自転車は25日まで福岡市・天神の西日本新聞会館1階ロビーに展示されており、来館者を楽しませている。6月公開の第1弾は電通九州の左俊幸さんが担当し、8月公開予定の第3弾は福岡県生まれで「伊右衛門」シリーズなど数々の有名CMを手がけた中島信也さんが担当する。9月以降も継続される見通しだ。
こうしたCMが登場する背景には、新聞の購読率の低下がある。若者を中心に新聞離れが進み、新聞各社は危機感を強めている。ニュースを読むのは紙からパソコンやスマホ、タブレットへとデジタルデバイスへと移りつつあり、各社はWebサイトに力を入れるようになってきた。日経新聞や朝日新聞などが有料化したり、毎日新聞など多くの新聞社がパソコンなどで紙面イメージを見られるサービスをするなど試行錯誤を続けている。今後もこうした傾向は強まるとみられ、こんなWeb広告も多数登場することだろう。