丹下健三設計の香川県立体育館は「無駄な建物」なのか?
2005年に亡くなった丹下健三は、20世紀後半を代表する建築家として世界的に知られている。彼の代表作といえば1964年に建設された東京オリンピック国立屋内総合競技場(代々木体育館)が真っ先に挙げられるけれども、同じ年に竣工した香川県立体育館(高松市福岡町)が、2014年9月末に閉館することが決まった。
アートを押し出す香川県にとって貴重な建築だが...
船を模したその構造物は地上3階一部半地下で、1300席のスタンドとアリーナがある。アリーナはバスケットボール2面、バレーボール3面、バドミントン8面、ハンドボール1面、卓球26台、ソフトテニス2面などに使用可能。1階はフィットネススタジオ等に使える会議室や第1~3トレーニングルームもある。
現代美術館や現代建築が点在する香川県は、「うどんだけじゃないんだぞ」とアートを全面に打ち出している。香川県公式観光サイトを開くと、やはり丹下氏が設計した県庁舎東館(彼の初期の傑作で、公共建築百選の1つ)と体育館が並んで掲載されている。県民の美意識向上に貢献した建物といって過言ではない。
ところが耐震調査の結果、天井に使われているコンクリート製の板などが落下する危険性が高いことが分かり、2012年7月からアリーナの使用を中止している。東日本大震災では、東京の九段会館で天井崩落事故が発生し33人が死傷した。利用者の安全を第一に考えるなら、使用中止措置はなるほどやむを得ない。
県は耐震改修工事を実施するため3回入札を行ったものの応札業者は現れず、今回の決断に至った。体育館を取り壊すか、何らかの形で建物を残すかはまだ決まっていない。
辛らつな2ちゃんねる、保存求めるツイッター
7月4日放送のNHK「おはよう日本」でこのニュースが報じられると、辛らつな声が多く上がったのが2ちゃんねるだ。
「体育館とか競技場とか質実剛健なデザインが一番いいわ」
「こういう「有名建築家」の設計した建築物って、 見てくれに拘り過ぎて後々のメンテナンスや実用性の低い物が多いよねw」
「もったいないけど取り壊しすべきだろうな」
NHKの報道によれば、県が工事を断念した理由の1つが「天井が低いため、改修してもバレーボールやバトミントンなどでは全国規模の大会に使えない」という点だったという。なにしろ半世紀前の建物ではあるし、設計当時はそうした使途を想定していなかったのかもしれないが、少なくとも現代の目で見れば実用性に難があるとの指摘は否定しきれない。
一方で、ツイッターには取り壊し反対派の意見が多く投稿されている。
えー(ーー;)
丹下さんの香川県立体育館よが閉鎖...
文化財として残してもらいたいな...
— 阪口暁洋 (@AkiSakagucci) 2014, 7月 3
中学時代に思い出のある体育館が閉館になってしまうようです。確かに古いけど、取り壊されると寂しいですね。 Reading:丹下健三設計の香川県立体育館 閉館へ NHKニュース http://t.co/wUAfFfdf5H
— LuckyBook (@luckybird7) 2014, 7月 4
香川県立体育館閉館!ショック。どうか取り壊しだけはやめてください。
— いとう まさたか (@m110adr) 2014, 7月 4
建築家の日埜直彦さんによる、こんな少数意見も。
大変不真面目な意見かもしれないけど、香川県体育館はそのまま放っておいて、廃墟になってなお残るその勇ましい姿を見てみたい気がする。Reading:丹下健三設計の香川県立体育館 閉館へ NHKニュース http://t.co/8Ulbfnkk00
— 日埜直彦 (@naohikohino) 2014, 7月 4