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東京の子供たちが「ずら」「もんげー」と方言をしゃべりだしたのは「妖怪」の仕業だった

Jタウンネット編集部

Jタウンネット編集部

2014.06.27 17:45
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文学に親しんだ人なら、芥川龍之介が1922年(大正11年)に発表した「トロッコ」を一度くらいは読んだことがあるだろう。

主人公は8歳の良平。小田原~熱海(あたみ)間に敷設される軽便鉄道の工事現場でトロッコを目撃する。彼はそれに乗りたいと思っていたが、2月初旬にその夢を果たす。ところが、自宅から遠い場所まで運ばれた後、一緒にいた作業員たちから無造作にこう告げられ、良平はあっけにとらえる。

「われはもう帰んな。おれたちは今日は向う泊りだから」
「あんまり帰りが遅くなるとわれの家(うち)でも心配するずら」

かれこれ暗くなる時刻に1人取り残される――ストーリーの転換点となるこのセリフは、地域の言葉「ずら」と相まって読者に強烈な印象を残す。舞台となった熱海や伊豆をはじめ東海・甲信地方の方言だが、使う人は徐々に減っている。

「~ずら!」と叫ぶ子供たちが足立区に集結

ところが、2014年6月21日、東京の下町・足立区西新井にいる子供たちが「~ずら!」「~ずら!」と言いながら歩く怪現象が発生した。筆者はたまたまその現場に通りかかり、東海・甲信地方に迷い込んだのかと一瞬錯覚してしまったが、手をつなぐ親は標準語を話している。

そうか、21世紀の子供たちは大正文学を読んでいるのか。あせったずら~......と感心していたがどうも様子が違う。疑問に思った筆者が彼らの後をつけていくと、地域最大級のショッピングモール「アリオ西新井」に到着した。

写真:すべて編集部が撮影

写真:すべて編集部が撮影

入口付近にあった「今日のイベント」に目をやると、そこには「妖怪ウォッチ キャラクターショー 11時~/13時~」の案内が。親子連れはこのイベントを見学するために集まっているようだ。

「妖怪ウォッチ」が子供たちの間で大人気なのは知っていたが、ゲームやアニメ番組に触れたことは一度もない。イベント開始時刻まで15分を切っている。せっかくの機会なのでショーを観覧することにした。

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1階モールゾーンを歩いていくと、その奥にあるセンターコートは親子連れでたくさんの人だかり。立見もかなりいて、今から座るのは不可能。
「まだ~」と不満気な顔をする、こらえ性のない子供もいて、叱る母親の姿がほほえましい。

11時を少し回ったところでショーはスタート。小学5年生の主人公ケータと自称・妖怪執事のウイスパーの声が聞こえ、着ぐるみのケータくんが登場する。続いて現れたのはケータくんのクラスメイト・フミちゃん。彼女の方がちょっとだけ大人っぽい感じだ。

着ぐるみ撮影に熱中

ショーは30分ほど続いた。人間が登場したときは子供たちの反応はイマイチだったが、赤いネコの地縛霊「ジバニャン」、レジェンド妖怪の「ブシニャン」、そして田舎の神社から都会にやってきた設定の「コマさん」が現れると、子供たちの目はキラキラと輝いた。
「~ずら」「もんげー!!」の方言を多用するコマさんは一番人気だ(参考:「妖怪ウォッチ」ブームで岡山弁「もんげー」が今年の流行語に?!)。そうか、子供たちはコマさんに影響されて、ずらずらしゃべっていたのか。

コマさんは透明なハートの持ち主で、それが最大の武器になっている。ブシニャンが悪さをするが、コマさんの心から発せられるキラキラに太刀打ちできない。「純粋な心がまぶしいでござる...」といって改心するシーンはショーの見せ場。大人がハマる理由はこのへんにありそうだ。

ショーの後半は「ようかい体操第一」のダンスタイム。テンポのいいメロディと巧みな歌詞がうまく融合しているのに舌を巻く。こりゃ子供たちが一斉に踊り出すわけだ。

【妖怪ウォッチ】ようかい体操第一(YouTubeより)

ショーが終わった後は撮影タイムへ移行。子供たちより大人の方が熱心で、その様子が写真にありありと写っている。

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もっとも、全ての子供たちが夢中になっていたわけではなく、ショーが始まって早々に顔をそむけたり、帰りたがったりしている子もいた。キャラたちの着ぐるみは精巧だったが、映像の世界ほど機敏な動きができるわけではない。子供心に「なんか違う...」と感じたのだろうか。

もう一つは、コマさんの双子の弟・コマじろうが現れなかったことだ。アニメで描かれる兄弟のやり取りに癒される人は多いと聞く。会場から「コマじろうはどこ~?」とつぶやく子供をあちこちで見かけた。

妖怪ウォッチのキャラクターショーが始まったのは最近と聞く。今度ショーを観覧するときは、新たな妖怪に会ってみたい。

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