千葉・野田市などが目論む壮大な「東京直結鉄道」計画は果たして実現可能か
「東葛」と呼ばれる千葉県北西部の鉄道事情はひと昔前までひどいものだった。1995年の常磐線の最混雑率は247%で「殺人ラッシュ」と言ってもおかしくないレベルだ。そうした事態を改善するため2005年に開業したのが「つくばエクスプレス」(略称「TX」)。さらにJR常磐線は長編成化し、朝夕のラッシュもだいぶ改善されている。
TX同様、常磐線の混雑がピークに達していた時期に計画されながら、いまだ工事が着手されない路線がある。それは東京メトロ半蔵門線の松戸までの延伸と同有楽町線の豊洲~野田市までの延伸だ。
30年前から計画自体はあるものの...
東京圏の鉄道整備は「運輸政策審議会」の答申にのっとって進められる。現在は2000年1月に発表された18号の計画が進行中だが、2015年で期限を迎える。つまり2016年から新しい計画がスタートするというわけだ。この答申の上位に組み込まれる路線は国のバックアップを受けて整備が推進される。そのため各自治体からは、「路線の新設を!」「複々線化を!」といった声がひっきりなしだ。
有楽町線の野田市延伸に話を戻すと、豊洲~東陽町~住吉~四ツ木~亀有に至る新線計画が1985年発表の7号答申に盛り込まれた。18号答申では亀有からの延伸先を野田とした上で、「2015年までに整備着手することが適当である路線」と位置付けている。
しかし、民営化した東京メトロはこれ以上の新路線建設に否定的で、ご存じのとおり、先の2路線は工事着手に至っていない。
有楽町線は無理っぽいからTXで!?
収まらないのが、野田市だ。東京に直結する列車が通っていないから、若い人が東京に出て行ってしまう――と地方都市のような悩みを抱える野田市は、東京に直接つながる路線がどうしても欲しい。そこでぶち上げたのが、「東京直結鉄道構想」だ。
有楽町線延伸計画と言いつつも、まずは有楽町線ではなくTXと接続することを優先している。野田市からTXと接続する八潮駅までを建設し、ついでにTXへ直通運転も――これが構想の概要だ。TXは東京駅延伸構想も進んでいて、実現すれば利便性はさらに高まる。豊洲は発展している街だけれども、東京駅まで1本で行ける魅力は大きい。
埼玉県草加市・越谷市・八潮市・吉川市・松伏町、千葉県野田市、茨城県坂東市・常総市・下妻市・八千代町の10自治体は、「地下鉄8号線建設促進並びに誘致期成同盟会」を結成し、国に働きかけを行っている。ちなみに地下鉄8号線とは有楽町線のこと。第1段階は八潮~野田市(地図の茶色の実線部分)で着工し、第2段階で野田市から先の整備を(薄茶色の実線部分)――というのがその主張。TXの最大株主が茨城県なので、茨城県の自治体も巻き込んだというのはうがちすぎか。
計画路線沿線自治体は「同床異夢」!?
2014年5月7日、東京・霞が関の国交省を訪れた東京都足立区・葛飾区、埼玉県八潮市・松伏町、千葉県野田市の5自治体の首長は、太田昭宏国交相に豊洲~野田市間の延伸を実現する要望書を手渡した。
東京都東部は南北を走る路線が限られており、有楽町線延伸は地元にとっても悲願。次の答申ではぜひ優先路線に......と各自治体は働きかけを強めているが、上記のTXとの接続構想からもわかるように、東京(茶色の破線部分)と埼玉・千葉(茶色の実線部分)では同床異夢に見えて仕方がない。
先に書いたとおり東京メトロにその気がなく、やるなら第三セクター方式になるのだろう。沿線自治体は東京直結鉄道を整備した場合、建設費を30~40年で償還可能と算盤をはじく。野田市はすでに、東武アーバンパークラインの連続立体交差事業の一部を負担しているのだが......。ちなみにそのアーバンパークラインは、アーバンパークライン→スカイツリーライン(伊勢崎線)経由での東京直通電車を走らすと明言している。