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ほぼ直角の斜面を神輿がすごいスピードで滑り落ちる! ●者も出る超危険な祭り「伊庭の坂下し」

織江賢治(おりえ・けんじ)

織江賢治(おりえ・けんじ)

2014.05.04 11:32
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みなさんは「危ない祭り」というと、何を思い浮かべるでしょうか。諏訪の御柱や岸和田のだんじりなどが有名ですが、今回ご紹介する「伊庭の坂下し」も、かなりのもの。

岩がむき出しの山の頂上から、垂直に近いような斜面を駆って500キロほどもある神輿を三基下ろすのです!

画像:すべて織江賢治が撮影
画像:すべて織江賢治が撮影

日にちは毎年5月4日。場所は滋賀県の東近江市能登川町の伊庭地区。最寄は彦根駅から琵琶湖線で4つめの能登川駅。到着したのは10時半前です。
ところが、改札の周辺案内図にはイラスト入りでしっかりと「伊庭の坂下し」と書いてあるものの、駅東口を出ると、それはそれは普通の町並み。

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屋台などは一切なく、そわそわした祭りの雰囲気もまったく感じられないのです。僕は2012年に取材したのですが、この日はおまけに小雨も降ってきました。

なにはともあれ事前にグーグルマップで確かめておいた能登川高校方向に"感覚"で行ってみることにしました。

途中、ライフワークとして撮っている「飛び出し注意」の看板をパチリ。これと「犬の糞禁止」の看板は地域差があって意外と面白いんですよ。

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担ぎ手の男たちは神社で安全祈願

能登川高校を過ぎたあたりで、ようやく「例祭のため通行禁止」の看板が見え、それを過ぎると真っ白な股引&鯉口の集団が見えてきました!

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ここが坂下しの舞台となる標高300メートルの八王子山の麓です。
山頂にある繖峰三神社から前日に運び込んだ三基の神輿を若者たちが数時間かけて三基の神輿を引き摺り下ろすもので、しかも800年以上も続くとのこと。
過去には●者も出てしまい、大変な事態になったこともあるそうで、かなりの危険を伴います。

麓の鳥居の横にはタイムスケジュールと、難所となる崖のMAP看板がありますので、それを参照にします。

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さて肝心のお祭りですが、12時からの「宮出し」に合わせ、11時20分ころになると男たちがお山に向かって一礼し、1人、また1人と山に登っていきます。

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それに続いて僕もいよいよ山頂へGO! 雨はあがったものの、斜面がメチャメチャ滑る! おまけにこの急斜面。こんなところを神輿が下るワケだから、どう考えてもヤバイでしょ!(笑)

ちなみに山の中腹からの景色がコレ。各難所には早くも観光客が陣取っていました。

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25分かけてヘロヘロになりながら山頂の広場に到着。すると、今まさに祭りが始まらんとする状況でした。

本堂にて関係者の礼拝が終わると、男衆には餅が振舞われます。その後、神主さんが改めて神輿および男衆をお祓いすると、それに応えるように男たちは"祭り歌"(?)を歌って荒ぶり、三基の神輿を揺すります。

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斜面が急すぎて勢いが止まらない!?

そしていよいよ! 三基の神輿は本堂を出ると列になり、第1の難所「僧衣の岩」へと向かいます。

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「やいの、せーの、そーれ!」
「やいの、せーの、そーれ!」
数センチずつ、足場をしっかり確かめながら慎重に。

ここで神輿をどのようにして下ろしていくかというと、そもそも神輿の担ぎ棒は「井」型ではなく、前後に伸びる二本タイプ。

神輿の前面には、神輿を前向きに両手で持ち上げる人と神輿と対面になり、神輿を支えつつ勢いを殺す人の2名のフロントマンがおり、神輿の両サイドには自身の背中で支えるサイドマンが1~2名ずつ。そして背面はロープでつながっており、他のみんながロープを引いて神輿の勢いを調節する......という感じ。

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やっぱり一番の花形がフロントマンで、特に神輿と対面になる担ぎ手は、神輿をどれくらい前に出すか、どの方向に進路をとるかを決める重要な役割。
「やいの、せーの、そーれ!」
と声を枯らして舵を取ります。

だから、もっと豪快にザザザザーっと滑り落ちると思ったら、そうでもない。担ぎ棒が岩につっかえることも多いため、少しずつ少しずつ......というのが最初の印象でした。

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第1の難所「僧衣の岩」

手に汗握る難所の連続!

ところが! 第2の難所「吹上岩」、そして第3の難所「屏風岩」ですよ! 双方とも岩が大きくせり出していており、いわゆる「垂直」に落ちる(落とす)パターン。

第2の難所「吹上岩」
第2の難所「吹上岩」
第3の難所「屏風岩」
第3の難所「屏風岩」

さらに第4の難所「本堂抜け」は、せり出した岩と急斜面の合わせ技! 岩を超えても、その先は30度ほどの斜面だから神輿の勢いが止まらない止まらない! 全員がかりで体を張って、滑り落ちる神輿を崖ギリッギリで止めてました。まさにド迫力! 実は僕も、滑って5メートルほど転げ落ちました。

第4の難所「本堂抜け」
第4の難所「本堂抜け」1枚目
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第4の難所「本堂抜け」2枚目

同じく第7難所「台懸岩」でも。

第7難所「台懸岩」
第7の難所「台懸岩」

そして最大の見せ場は第8の難所「二本松」。先ほど、登るときにお見せした場所ですが......これ、もう説明不要でしょ。こんなのさ、見るからにヤバイ(笑)。

第8の難所「二本松」
第8の難所「二本松」1枚目
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第8の難所「二本松」2枚目
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第8の難所「二本松」3枚目
「鳥居前」
「鳥居前」

二本松を越えると、あとは細々した難所を超え、最後の「鳥居前」へ。ここも傾斜はハンパないんですが、フィナーレということで、上から下まで勢い良く滑り落ちます。

こうして16時半すぎ。三基の神輿が無事鳥居をくぐると、坂下しは一応はお開き。

伊庭の祭りは一度は見やれ 
男肝つく坂下し
あれを見やんせ、あれ二本松
神輿おどらす谷のそこ

坂下しは噂にたがわぬ、大変見ごたえのあるお祭りでした。

最後に巫女さんに写真を撮らせていただきました。地元の中学生でしょうか。とってもかわいらしいですね。

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【伊庭の坂下し】
日時:毎年5月4日
時間:12時~(宮出し)
場所:滋賀県東近江市伊庭町(繖峰三神社)

今回の筆者:織江賢治(おりえ・けんじ)

1975年愛知県生まれ、茨城県在住。出版社勤務を経て現在フリーの編集者・ライターとして活動。雑誌やムックを中心に執筆や編集を行う。プライベートで全国の鉄道の駅とその周辺を歩く「駅鉄活動」をライフワークとし、それが高じて各地の祭りや風習、珍スポット探検なども行っている。今までに行った祭りは200以上。

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