ふんどし男のケツにウホッ! 千葉・匝瑳市「冷水ぶっかけ裸祭り」
全国の「奇祭」をご紹介するこの連載、2回目は千葉県匝瑳(そうさ)市で1月12日に行われた「小高のはだか参り」をご紹介します。
こちら、名前の通りはだか祭りなのですが、ただのはだか祭りじゃございません。身も凍る夜の山間で、ふんどし姿の男たちが「わっしょいわっしょい」騒ぎながら冷水を頭からかぶる。とても正気の沙汰とは思えません。
暗闇に裸の男衆がぞろぞろ
場所は千葉県匝瑳市の香取市寄りにある小高地区。駅でいうと総武本線の八日市場駅が最寄りなんですが、なにぶん祭りは22時半からなので、この時間はバスがありません。見学する場合は車で行くのがオススメです。ただし会場周辺は「本当に祭りなんかやってるの?」というくらい真っ暗! 僕は昨年に続き2回目ですが、街灯がほとんどなくて、初めての方はかなり不安になるはずです。
そんな真っ暗闇の中、畑の横に車を停めて会場である妙長寺へとな道を進んでいくと、電信柱の下に水がなみなみと入っているプールを発見! その横には桶もスタンバイ。ここが会場となる妙長寺の入り口で、いわゆる「ぶっかけ場」となるところです。
鳥居をくぐると境内では焚き火が行われ、味噌汁がぐっつぐつに沸騰。味噌汁はもちろん主催者や参加者のためのものですが、僕らのような見学者に振舞ってくれることもあります。
一方、開放されたお堂の中では大人たちが真剣なまなざしで祭囃子をしておりましたが、そのまわりを子供たちが元気よく追いかけっこ。いいですねぇ、こういうの(笑)。
祭りを中止したら疫病が流行した!
さて、このお祭りの由来についてですが、世話役である石井公男さんと石井重雄さんにお話を伺ったところ、無病息災を祈願して400年くらい前から行われているもので、冷水は神前で身を清めるために浴びるのだそうです。
明治時代に徴兵などで男手が足りなくなり祭りを中止せざるを得なかった時期があったそうですが、その際は疫病が流行り、大変な被害を受けたそうです。そこで再び祭りを開いたところ、疫病はピタっととまり、以降は毎年欠かさず行っているそう。
祭りは女性の参加は厳禁ですが、昔はそれぞれの玄関先でさらしを巻いた女性が祭りに合わせて「個人的に」行水する姿も見られたようです。
そんなこんなで30分ほどまったりタイム。すでに世話役の方の何人かが赤ら顔になっていましたが、ここからが本番です。
22時近くになると、いい場所で写真を撮ろうとぶっかけ場のまわりに見学者が集まり始め、寒~いなか固唾を飲んでそのときを待ちます。
そしていよいよ22時半! 「エッサ! ホイサ!」「エッサ! ホイサ!」の掛け声とともにふんどし姿の男衆が登場!! そしてぶっかけ場の前でおしくらまんじゅうを組み、ひたすら荒ぶる!
そうして2~3分ほど高ぶった後、リーダーらしき男性の合図でそれぞれが桶を手に冷水を汲み......。「せーのぉーっ!」の掛け声でザバー!!!
ザバー。
あっちでもこっちでもぶっかけザバー!! 男たちは荒ぶりながら何度も何度も桶を取り、カメラの前で大サービス。それにしてもこのクソ寒い中、全裸で冷水を浴びるなんて、どんだけマゾなんでしょう(笑)。いや、僕も真冬の別の裸祭りに出たことがあるので、人のことは言えないんですけどね。
周囲は男たちの熱気でもうもうと湯気が立ち始めます。間近で撮ってるこちらは靴に水が染み込んできて、エライコッチャ状態。それにしてもプリッとしたたくましい男のケツを見ると、「ウホッ!」っていう声が出るのはなぜなんでしょうか。僕にそっちの気はないですけど。
裸体の男たちが手をつないで合唱
こうして10分ほど冷水を浴びると、ふんどし姿の男たちは再びおしくらまんじゅうをし、それから各々300メートルほど離れた場所にある八坂神社に向かってダッシュで参拝。それを追ってダッシュで走り撮影する僕。途中、疲れて歩いてしまう方もいました(笑)。
狭~い本殿は30人ほどの男たちでギュウギュウ! そんなおしくらまんじゅう状態で、男たちは周囲を3回周って祈願をします。
そして帰りは全員で手を繋いで「ヒーヒーガンガン!」と合唱しながら再びぶっかけ場へ。先ほどの石井重雄さんによると、これは雁の群れを表現しているのだそうです。でもなんで手を繋いで帰るのでしょうか。聞き忘れてしまった......。
それにしてもみなさん心臓に相当負担がかかっているはずなのに、どの顔もなぜか笑顔で清々しい表情。そんな男たちが手を繋いでいるのを見ると、「ウホッ!」っていう声が出るのはなぜなんでしょうか。僕にそっちの気はないはずなんですけど。
ぶっかけ場に戻ってきたところで再びザバー。ザバー。ザバー。
そして「エッサ! ホイサ!」の掛け声とともに3度おしくらまんじゅう。
最後に世話役の方から餅を投げられる(献餅の一種かな?)んですが、この時ばかりはガチで取り合い奪い合い! 運よく餅を手にした男性が、今年の福男というわけですが、さっきまで手を繋いでいたのに、皆さんこの日最高潮の荒ぶり方でした(笑)。
こうして祭りは40分ほどで終了。あれだけあった水が、これだけしかなくなってしまいました。
地元民以外も参加OK
ちなみにこの祭り、男性であれば誰でも参加は自由だそうです。よって参加者は自分の車の前で早々と着替え(笑)。聞けば毎年参加しており、会津柳津の七日堂参りなどほかの裸祭りにも参加しているそうです。
次回は秋田県の「なまはげ柴灯祭り」をお届けします。
【小高のはだか参り】
日時:毎年1月第2週
時間:22時半~23時すぎ
場所:千葉県匝瑳市小高333 妙長寺

今回の筆者:織江賢治(おりえ・けんじ)
1975年愛知県生まれ、茨城県在住。出版社勤務を経て現在フリーの編集者・ライターとして活動。雑誌やムックを中心に執筆や編集を行う。プライベートで全国の鉄道の駅とその周辺を歩く「駅鉄活動」をライフワークとし、それが高じて各地の祭りや風習、珍スポット探検なども行っている。今までに行った祭りは200以上。【バックナンバー】
[第1回]新郎を雪上に投げ飛ばす! 新潟の奇祭「むこ投げ・すみぬり」