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適切な管理を行うことで、太陽光発電所に 「半自然生態系」が成立する可能性を提示

記事配信日: 2026/10/06 14:00   提供元:共同通信PRワイヤー
適切な管理を行うことで、太陽光発電所に― 森林景観における植生の遷移を利用した自然共生型太陽光発電所の可能性 ―

 1.ポイント

1.ポイント

■森林に囲まれ、コンクリート等で地表面を覆っていない大規模太陽光発電所で、自然な植生回復の可能性を検証しました。

■太陽光パネル下では、森林縁辺部に類似した植物群落が自然に成立していました。

■パネル下における植物種数や多様性は周辺の草地と同程度であり、生物多様性の低下や外来種の繁茂は確認されませんでした。

■森林景観内では、太陽光発電所を導入する際に、コンクリート等で地表面を覆わなければ、パネル下も地域の生物多様性に貢献する可能性が示されました。

 

2.概要

 再生可能エネルギーの導入拡大は脱炭素社会の実現に不可欠ですが、大規模太陽光発電施設(メガソーラー)の建設による生物多様性への悪影響が課題となっています。これに対し、発電と生態系保全の両立を目指す「エコボルタイクス(Ecovoltaics)注1」に対する注目が急速に高まっています。しかし、温暖湿潤かつ急峻な地形を有するモンスーンアジアにおいて、この考え方が適用できるかについて十分な検討はなされていませんでした。東京都立大学大学院都市環境科学研究科の中谷美晴博士後期課程学生、野田顕特任研究員(研究当時)、大澤剛士准教授の研究グループは、パシフィコ・エナジー株式会社の協力を得て、岐阜県郡上市に立地する森林に囲まれており、草刈りによってパネル下に植生が維持されている大規模太陽光発電所「美並メガソーラー発電所」を対象に、パネル下、パネル間に成立する植生を調査しました。その結果、太陽光パネル下には林縁に見られる植物群落に類似した植生が自然に成立し、林縁と同程度の種多様性が維持されていることが明らかになりました。また、林縁から距離がある施設中央部においても林縁に多く見られる植物種が確認され、林縁からの種子供給は施設全体に及んでいることが示唆されました。これらの結果は、森林景観に立地する太陽光発電所では、パネル下をコンクリート等で覆わず、草刈り等によって植生を維持しておくことで、地域の生物多様性に貢献できる可能性があることを示唆します。本研究成果は、9月30日付けで、Elsevier発行の国際誌『Journal of Environmental Management』に掲載されました。本研究は、JST SPRING(東京都立大学)および内閣府総合科学技術・イノベーション会議 戦略的イノベーション創造プログラム(SIP)第3期「スマートインフラマネジメントシステムの構築」の支援を受けて実施されました。

 

3.研究の背景

 世界的な脱炭素化の進展に伴い、再生可能エネルギーの導入が広がっています。特に太陽光発電設備の導入は世界中で急速に拡大しています。しかし、太陽光発電は火力発電などに比べて単位面積あたりの発電量が低く、大規模な用地を必要とするため、その導入が生物多様性の喪失をもたらす可能性が課題となっています。特に日本では多くの太陽光発電施設が森林や半自然草地、湿地といった自然環境が豊かな地域に建設されており、導入に伴う生物多様性の喪失に対する懸念は社会問題になりつつあります。こうした課題に対し、近年は発電と良好な生態系の保全の両立を目指す「Ecovoltaics」(エコボルタイクス)という考え方に対する注目が急激に高まっています。これまでエコボルタイクスの研究は欧米を中心に実施されており、発電所に播種や植栽を行うなど、いわば環境の創出を目指すものが主流となっていました。一方、日本を含むモンスーンアジアでは、森林、農地、草地が入り組んだ里山を典型とする「モザイク景観」が広く見られます。さらに温暖湿潤な環境にあることから、一般に植生の遷移注2も早く進みます。このような環境では、周辺からの種子供給や送粉者の行き来が期待されるため、発電設備を導入した後も、コンクリート等で地表面を固めず、植物が生育できる条件を維持しておけば、人為的な介入を最小限に抑え、遷移に任せた生態系の再生が可能であると考えられます。そこで本研究では、森林景観内に立地し、地表面をコンクリート等で固めずに植生が維持されている太陽光発電所において、どのような植生が成立しているのかを調査しました。

【画像:https://kyodonewsprwire.jp/img/202610057286-O3-VzaaVr4K】

図1.森林景観におけるエコボルタイクスのイメージ。(生成AIを利用して作成)

 

4.研究の詳細

 研究対象は岐阜県郡上市にある約169haの大規模太陽光発電所「美並メガソーラー発電所」です。この施設は森林に囲まれており、地表面をコンクリート等で覆わずに発電設備が導入されています。2019年の運転開始後は播種や除草剤散布を行わず、年2回の草刈りのみで植生が管理されていました。

【画像:https://kyodonewsprwire.jp/img/202610057286-O4-DsEY0ANW】 【画像:https://kyodonewsprwire.jp/img/202610057286-O5-L2ghD42V】

図2.(a)調査地の写真 (b)調査地周辺の航空写真(発電所建設前)と調査エリア

 

研究グループは、パネル下(森林側)、パネル下(草地側)、パネル間、草地、森林縁辺部の5つの環境で植生調査を実施し、植物種数、多様度、群集構造を比較しました。その結果、確認された植物は54科211種に達しました。また、植物種数や多様度には調査条件間で統計的に有意な違いは認められませんでした。一方で種組成は大きく異なり、パネル下の植生は草地よりも森林縁辺部に近い特徴を示しました。特に、パネル下ではシダ植物など森林環境を好む種が多く見られました。これはパネルが日射を遮ることで森林内部に近い環境が形成され、森林由来の植物の定着を促したためと考えられます。さらに施設中央部でも森林由来種が確認され、複雑な施設形状によって森林からの種子散布が施設全体に及んでいることが示唆されました。

【画像:https://kyodonewsprwire.jp/img/202610057286-O6-5Id5zLdk】

図3.環境ごとの植生構造。パネル下は草地よりも林縁に近い構造を示した。

 

5.研究の意義と波及効果

 本研究は、太陽光発電所が単なる発電施設に留まらず、生物多様性保全に貢献する半自然生態系としても機能しうることを示した点に意義があります。これまでの欧米型エコボルタイクスでは播種や植栽などの積極的な導入管理が重視されてきましたが、本研究は、モンスーンアジアにおけるモザイク景観内では、積極的な植物の導入を行わなくても、周辺の森林からの自然な種子供給によって自然的な植生が成立し、草刈りによる管理のみで地域の生物多様性が維持できる可能性を示しました。日本を含むモンスーンアジアでは、森林に近接した中小規模の太陽光発電所が既に多数存在します。このような地域では、地表面をコンクリート等で覆わず、自然に成立する植生を草刈り等によって維持・管理することで、低コストで再生可能エネルギー導入と生物多様性の保全を両立できる可能性があります。本研究では、こういった積極的な植物の導入を行わない自然共生型太陽光発電所を、「受動的エコボルタイクス(Passive Ecovoltaics)」として提案しています。今後は適用可能な立地条件や他の生物群への影響を評価し、再生可能エネルギーと自然保全の両立に向けた実践的な指針を構築していくことを目指します。

 

6.用語解説

(注1)エコボルタイクス(Ecovoltaics)

発電効率だけでなく、生態系サービスや生物多様性保全を同時に実現することを目指した太陽光発電の考え方。

(注2)遷移(Succession)
攪乱後の土地において、周辺から侵入した生物によって植生が自然に変化していく過程

 

7.論文情報

掲載誌:Journal of Environmental Management

タイトル:Passive Ecovoltaics: Solar power plants as semi-natural ecosystems via spontaneous succession in forest landscapes

著者: Miharu Nakatani, Akira Noda, Takeshi Osawa

DOI: 10.1016/j.jenvman.2026.131014

URL:https://www.sciencedirect.com/science/article/pii/S0301479726024746

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