相続は「手続き」だけでは終わらない 遺族に向き合う司法書士の新たな役割
超高齢化や家族の関係性の変化を背景に、相続制度の法改正が相次ぎ、相続を取り巻く環境は複雑化している。専門家は新しい制度への対応にとどまらず、家族を亡くした相談者の心理的な負担への配慮が必要となる場面に直面することもある。本記事では、グリーフケア(ご遺族への心理的な支援)の視点を取り入れて相続支援に取り組む司法書士・平野克典氏に、現在までの歩みとこれからの士業に求められる役割について話を聞いた。
法的手続きだけでは解決できない遺族の不安
司法書士の平野克典氏は、自動車メーカーと県庁勤務を経て、2014年に39歳で司法書士の資格を取得した。開業後、多くの相続相談に対応するなかで、ご遺族が抱える悲しみや不安の大きさを実感したという。
その経験から、法的な手続きだけでは十分ではなく、ご遺族の心に寄り添う支援も必要だと考えるようになった。2022年に一般社団法人日本相続あんしん協会を設立し、2023年には遺族支援を行う「日本グリーフ専門士協会」と提携した。自身もグリーフ専門士の資格を取得し、必要に応じて無償のご遺族のオンライン交流会を紹介するなど、相談者の気持ちに配慮した支援を行っている。
「相続の手続きは法律だけで完結するものではありません。ご遺族の気持ちに寄り添いながら支援することも大切だと考えています」と話す。
専門家同士の連携が複雑な相続を支える
近年は法改正が相次ぎ、複雑な相続手続きが必要となるケースも増えている。一人の専門家だけでは対応が難しく、税務や法律などの複数の専門知識を要する場面も少なくない。
同事務所では、日本相続あんしん協会のネットワークを活用し、税理士や弁護士などの他士業と連携して相続手続きを支援している。一つの分野に力を注ぐことで専門性を高めるとともに、必要に応じて他士業と協力することが、相談者にとってより良い支援につながると考えている。
一方、各士業との連携を円滑に進めるためには、それぞれの士業の専門分野や役割を明確にしながら協力していくことも重要だという。
AI時代だからこそ求められる「人に寄り添う支援」

司法書士会の委員として各地域での高齢者の法的支援の講演活動に携わりながら、2021年には著書『相続のお守り』を出版するなど、相続に関する情報発信にも取り組んできた。
近年は生成AIの普及により、相続に関する知識や手続きの情報は、以前より簡単に得られるようになった。しかし、実際の相談では「安心して相談できるか」「親身に話を聞いてもらえるか」が、依然として大切だと感じているという。
グリーフケアで学んだ「相手の話に耳を傾け、その人の歩みに寄り添う姿勢」は、相続支援にも通じる考え方だという。専門的な知識や経験を活かすだけでなく、ご相談者に寄り添いながら支援する姿勢の重要性は、これからの士業の役割を考えるうえで一つの視点となりそうだ。

【取材協力】
司法書士平野克典事務所
https://souzoku-omamori.com
代表司法書士 平野克典
一般社団法人日本相続あんしん協会
https://a-souzoku.org
代表理事 平野克典