年間56万トンのアパレル廃棄と女性の副業ニーズをつなぐ、「Re:che」が挑む循環型ビジネスの持続性
企業が抱える余剰在庫や廃棄商品の問題が深刻化する一方、生活者の副業・在宅ワークへの関心も拡大している。こうした双方の課題に対し、企業の余剰商品を仕入れ、個人による在宅物販を通じて再流通させるビジネスモデルを構築しているのが株式会社Meroneである。本記事では、同社が運営する在宅型サステナ物販スクール「Re:che(リッシュ)」の事業モデルを紹介し、循環経済(サーキュラーエコノミー)の広がりと、個人が担う副業市場の可能性を探る。
「年間56万トン」のアパレル廃棄と女性の収入課題――分断された議論をつなぐ構造的論点
環境省の調査データによれば、国内のアパレル供給量は年間約82万トンにのぼり、そのうち約56万トンが廃棄されている。業界内では、年間約28億点の生産に対し約14億点が余剰在庫化しているとの指摘もある。また、食品業界でも年間約464万トンの食品ロスが発生し、約4兆円の経済損失が生じているとの推計がある。
これらの中には、品質に問題がなくても、需要予測と販売実績のずれや保管コスト、ブランド管理上の理由などから、正規ルートでの販売が難しく、処分される商品も少なくない。
一方、個人の就労環境では、2025年の調査で正社員の副業実施率が11.0%と過去最高を記録し、企業の副業容認率も64.3%に達している。しかし、同社の森川代表は、在宅ワークでスキルを習得しても、安定的に案件を獲得するクライアントワークには高いハードルがあると指摘する。初心者向けとされる物販領域でも、個人では仕入れが不安定になりやすく、価格競争に巻き込まれやすいという。
森川氏は、企業が抱える処分予定の在庫と、安定した仕入れ先を確保できない個人の課題を結びつけるプレイヤーが不足し、それぞれが別の問題として議論されている現状に危機感を示している。
もっとも、こうした仕組みが取り扱える商品の量や種類には限りがあり、作業量のばらつきや商品ジャンルの偏りといった課題もある。事業モデルとしての汎用性については、今後も検証が必要だ。
受講生2,600名による再流通網の優位性――提携スキームと市場の不確実性への対応

「Re:che」のモデルは、企業の過剰在庫や廃棄品を「卸」として仕入れ、受講生が在宅でリユース販売するものである。これにより、個人転売における仕入れの不安定さと価格競争という課題の解消を図っている。
特筆すべきは、株式会社ブックオフコーポレーションとの国内唯一の提携により、安定的な仕入れルートを確保している点である。企業側も、正規チャネルを毀損せずに在庫を循環できる利点がある。2026年6月現在、受講生は約2,600名に達し、その多くが子育て中の女性である。また、ABCashやSHElikes、シングルマザー支援協会などの外部機関と提携し、各サービス卒業層の流入導線も構築されている。
環境省が掲げる、サーキュラーエコノミー市場を2030年に80兆円超へ拡大する目標に対し、同社はこの潮流に合致するビジネスを展開している。無期限のサポートや専門家への相談体制を整備し、個人の自立支援を強化している。
ただし、リユース市場はプラットフォームの規約やトレンドに左右されやすく、特定の再販チャネルへの依存が長期的な収益基盤として機能するかについては、市場の不確実性を考慮する必要がある。
廃棄コスト削減と女性の自立の両立――現場の反響と運用の課題

受講生からは、専業主婦期間や離職を経て「自らの力で収入を得た」という自信回復の報告が多く寄せられている。例えば、教育費への不安から入会した2児の母親が、開始3ヶ月で月数万円の利益を安定させ、家族関係に肯定的な変化が生じた事例などがある。
企業側にとっても、廃棄処分していた在庫を社会貢献と利益を両立させる新しい物販バイヤー「Re:seller(リセラー)」に卸すことで 、廃棄コスト削減と環境負荷軽減を同時に実現できたとの反響がある。商品が本来の用途で消費者に届くことへの肯定的な意見も多いと森川氏は述べ、物販スキル以上に「経済的自立の選択肢を持つこと」の重要性を強調している。
一方で、これらの成果は現時点での好意的な関係に依存しており、すべての受講生が均等に利益を得られるわけではない点や、在庫の質・量の変動リスクといった運用の限界も依然として存在する。
領域拡大と今後の展望――生活者が自立を選択するためのポイント
今後の展望として同社は、取引企業を食品や化粧品等へ拡大すること、EC事業や独自ブランド展開に繋がる高度なビジネススキルの支援を強化すること、そしてこの再販モデルの社会的認知を高めることの3点を掲げている。
森川氏は、キャリアに悩む方へ、不用品の出品といった小さな成功体験から始めることを勧めている。同社は今後もサポート体制の拡充を推進する方針だ。
企業の余剰在庫と、在宅で収入を得たい人を結びつける同社のモデルには、廃棄問題と就労支援を同時に進める可能性がある。一方、アパレル以外の領域で安定した仕入れ体制を構築できるか、受講生が継続的に収益を得られる環境を整えられるかが、今後の事業拡大を左右することになる。

【取材協力】
株式会社Merone
代表取締役 森川 公美子
在宅型サステナ物販スクール「Re:che(リッシュ)」
https://merone.jp/reche-lp