C&W、2022年下期の日本物流施設のレポートを発行 福岡は4大都市圏で最も開発ポテンシャルが高い
グローバル不動産総合サービス会社のクッシュマン・アンド・ウェイクフィールド(グローバル本社:米国イリノイ州シカゴ、日本本社:千代田区永田町、C&W)は、日本の物流市況について最新のレポートを発表致しました。
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アウトルック
●空室率は低位安定:地方都市における先進的物流施設ストックは未だ不十分であり、新規供給に合わせて潜在需要が喚起されていく状況が継続する見通し。東京圏においては、競争力に欠ける周辺地域で、自動化需要などによる拠点集約などから局所的には緩やかな空室率の上昇を見込む。
●賃料はほぼ横ばい:地方都市における平均賃料水準は、先進的物流施設ストックの開設に合わせて底上げされていく状況が当面は継続する見通し。都心部においては都市型物流施設の価格支配力は強まっているものの、その他エリアの既存物件については物流コスト増で苦戦するテナントに対して価格転嫁が難しい状況を見込む。
●金利上昇局面でもキャップレートは低位安定:今後1年間は金利の調整局面、10年国債利回りはコロナ前のマイナス27bpsから2月末はプラス50bpsまで上昇、年末までには75-90bps までの更なる上昇を見込む。銀行の融資姿勢厳格化などから、売買高の減少が見込まれるものの、オフィス対比での物流施設スプレッドは今後も縮小していく見通し。
需要
物流の総需要は、ほぼ横ばいで推移の見通し
欧米の景気後退から世界経済の成長率は2023年度に2%割れを見込んだ減速が見込まれるものの、日本の実質GDP期待成長率は、2023年度は+1.1%、2024年度+1.2%と安定した成長を維持する見通し。2019年以降で物流コストインフレの影響をみると、陸上貨物価格1 は年平均成長率は約0.7%と企業向けサービス価格指数の伸び同1.0%増を下回った。中小企業率が9割を超える物流業界においては国内での価格転嫁が不十分なままであることが示唆されている。一方、国際海運は同4.1%増、航空貨物が同17.9%増となったものの、前年同期比対比でみると、米国を中心とした過剰在庫の懸念から、国際貨物の価格上昇スピードも既にピークアウト。懸念されていたグローバルサプライチェーンの根詰まりは正常化に向かいつつあり、米国連邦準備銀行の同月次インデックスに基づけば、2023年2月末時点で過去20年平均値近くまで回復した。
総じてみると、消費者需要のリバウンドは力強さに欠けており、荷動きはフラット化に転じている。 2022年の年間貨物量の動向をみると、輸出2 は価格ベースでは円安を背景に2割近い増加となったものの、数量ベース3 ではほぼ変わらず。同様に輸入においても、数量にほぼ変動はなかったものの、原油価格などの高騰を受けて、価格ベースでは同4割弱の増加、2021年末以降の貿易赤字拡大につながった。オンライン関連のEC需要はやや失速、通期の企業業績予想4 も1-2%程度の増益にとどまる見通しであり、少なくとも2024年上半期までは物流量全体はほぼ横ばいで推移する見通し。
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供給
福岡の先進的物流施設ストック、エリアの拡大に乗じた開発余地は大きい
人口一人当たり先進的物流施設ストックでみると、四大都市圏で福岡圏の開発余地は最も大きい。LMTを先進的物流施設と仮定すると、そもそも福岡の人口一人当たりストックは、東京圏の3分の1にも満たず 、大阪圏の半分以下の水準に留まっている(下図参照)。また、都市型物流適地であっても、名古屋圏を2-3割下回る地価水準であることなどから、近年の開発が加速。福岡内陸エリアだけでもCBRE IM福岡(延床94,397平米)とDPL福岡久山(延床21,929平米)が竣工、既存ストックの約25.9%に相当する過去最大の供給となった。福岡圏全体でも、今後2年間で6棟、合計628,911平米の竣工が見込まれている(下図参照)。
こうした開発動向を勘案しても、人口一人当たりストックがようやく大阪圏と同じ水準まで増加するに過ぎないため、2019年来の空室率ゼロ水準で逼迫してきた供給不足の解消も見込みがたい。さらには、東京圏と同じ水準まで配送網が整備されていくことを前提とすれば、約1.5百万平米程度の供給不足と想定される。当面は大型開発物件であっても僅かな空室面積を残して竣工する程度にとどまる見通しであり、 エリアの平均賃料水準でみても、坪単価3千円半ばと、大阪圏の同4千円程度、東京圏の同4.5千円程度と対比すると、未だ割安な水準にとどまる。このため、今後の開発動向(巻末地図参照)を概観すると、都市アクセスに優れた博多港エリア、道路アクセスに優れた佐賀鳥栖インター周辺における開発案件も増加傾向にあり、南北方向のエリアの拡大に乗じた開発余地は依然として大きいといえるだろう。
その他エリアにおける主な竣工物件としては、JR貨物が三井不動産とパートナーシップを組んで開発したマルチテナント施設「東京レールゲート EAST」が東京貨物ターミナル駅構内に7月に竣工した。2020年3月竣工の「東京レールゲート WEST」に続いて完成した同施設は、鉄道、空港やコンテナターミナルに近接し、国内の鉄道網を利用している3社が入居し満床となっている。JR貨物は仙台、名古屋、大阪、福岡が今後の同様の開発の候補地になっているとし、モーダルシフトの一環として鉄道と他の輸送方法をつなぐ結節点の実現に意欲を見せている。
ほか、注目される開発動向としては、2021年4月の賃貸契約満了に伴い閉店したイオンモール名古屋みなと跡地に、三菱地所が先進型物流施設を建設すると発表した。ロジクロス名古屋みなとは延床面積約127,000平米の4階建てで2024年11月に竣工が予定されている。大消費地近隣でのまとまった土地が限られている中、求心力の衰えた商業施設が物流拠点へと置き換わる流れが続いている。最後に、都市別空室率の動きを概観すると、東京圏は価格支配力に劣る周辺地域で新規供給物件が空室面積を残して竣工したことなどから約5%程度、局所的な過剰供給懸念はくすぶるものの、概ね低位安定は維持されている。供給が限定的である大阪圏の空室率は約2%近辺、福岡圏の空室率はゼロ水準で低位安定している。
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主な移転動向
2022年下期の移転動向を総括すると、引き続きEC関連の消費財テナント需要が目立った。アマゾンジャパンは、横浜都築区や東京品川区などを含む都心向け国内配送ステーション (DC) を開設、2022年のDC開設は18拠点となり、新たに10県で翌日配送が可能となった。在庫保管型のフルフィルメントセンター (FC) も尼崎に続き、埼玉県上尾市などに開設し、商品保管容量は約100万立方フィートと前年比約10%増加。各拠点においては、自動化に伴うFCの大型化が着実に進展している。
主な投資市場動向
2022年下期の移転動向を総括すると、引き続きEC関連の消費財テナント需要が目立った。アマゾンジャパンは、横浜都築区や東京品川区などを含む都心向け国内配送ステーション (DC) を開設、2022年のDC開設は18拠点となり、新たに10県で翌日配送が可能となった。在庫保管型のフルフィルメントセンター (FC) も尼崎に続き、埼玉県上尾市などに開設し、商品保管容量は約100万立方フィートと前年比約10%増加。各拠点においては、自動化に伴うFCの大型化が着実に進展している。
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1企業向けサービス価格指数、日本銀行
2 経済産業省
3 財務省「貿易統計」
4 日銀短観
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クッシュマン・アンド・ウェイクフィールドについて
クッシュマン・アンド・ウェイクフィールド(C&W)はニューヨーク取引証券所に上場している世界有数の不動産サービス会社です。世界約60カ国、400拠点に52,000人の従業員を擁しています。売買仲介、鑑定評価、テナントレップ、リーシング、プロジェクト・マネジメントなどのコア・サービス全体で、2022年の売上高は101億ドルを記録しました。詳しくは、公式ホームページhttps://www.cushmanwakefield.com/ja-jp/japan にアクセスするか公式ツイッター @CushWake をフォロー下さい。