「満席の東横線で立ち上がり、足元にかがみこんできたお婆さん。そのまま無言で僕のスーツを...」(奈良県・60代男性)
シリーズ読者投稿~あの時、あなたに出会えなければ~ 投稿者:Rさん(奈良県・60代男性)
その日、Rさんは面接に向かうため、新品のスーツを着て電車に乗り込んだ。
すると、真後ろに座っていた見知らぬ年配の女性が突然、Rさんの足元にしゃがみこんで......。
<Rさんの体験談>
新卒者の就職活動のニュースを聞く度に恥ずかしく思い出す、45年以上前の話です。
当時、私は最初の会社面接のため、下ろしたてのスーツをきて、一人暮らしをしていた都内の下宿から東横線・中目黒経由で東銀座に向かっていました。
スーツの仕付け糸を...
車内は混みあってはいませんでしたが、空いている席はなかったのでつり革に掴まって立っていました。
すると、私の真後ろに座っていた年配の女性が、突然立ち上がって私の背中で何やらごそごそやり出したのです。
「えっ」
と思って振り返ると、彼女が何をしていたのかすぐに分かったので、何も言わずに向きなおりました。それからは、ただ元の姿勢で外の景色を見つめたままいました。
その年配の女性は、かがみ込んで私のスーツの仕付け糸を歯で切り離しほどいてくれたのです。
当時、田舎出の純情青年だった私は人前だった為にただただ恥ずかしく、振り返ってお礼を言うことができませんでした。
その女性は、「初めてスーツをきて面接行く」というその時の私の状況を全て察しておられたのだと思います。一言もおっしゃらず、黙って次の駅で下車されました。
声をかけて余計に恥ずかしい思いをさせたくないというご配慮からの行動か、もしかしたら同じぐらいの息子さんがいらしたからなのかもわかりません。
いまだにあの時のことを思うと、恥ずかしさでありがとうが言えなかったことを後悔しますが、ご親切と愛情と励ましに感謝申し上げます。ありがとうございました。
誰かに伝えたい「あの時はありがとう」、聞かせて!
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