「空港への行き方を聞いてきた『田舎から出てきた風』のおじさん。そっけなくして、別の車両に乗ってたら...」(東京都・50代女性)
シリーズ読者投稿~忘れられない「あの人」と~ 投稿者:Iさん(東京都・50代女性)
その日、Iさんは東京から福岡に帰省するため、羽田空港に向かっていた。
すると空港行きのモノレールの切符売り場で、「田舎から出てきた風」のおじさんに声をかけられ......。
<Iさんの体験談>
25年ほど前、当時東京で働いていた私は、福岡に帰省するため羽田空港に向かっていました。
そして浜松町のモノレール乗り場の切符売り場で、右往左往する40代くらいのおじさんに遭遇しました。
おじさんは大荷物で、見るからに田舎から出て来られた感じ。困った様子で路線図を何度も確認し、券売機の前で途方に暮れていました。
そっけなくしてしまった「私」に...
「すみません、羽田空港に行くにはどれを買えばいいですか?」
おじさんは、隣で切符を買う私に尋ねてきました。
今だったら懇切丁寧に教えてあげたと思うのですが、まだ20代だった私はそっけなく「これです」とだけ教えて、そのままモノレールへ。そんな私におじさんは丁寧にお礼を言ってくれました。
私は足早にホームに向かったのですが、結局おじさんと同じモノレールに乗る事に。
隣の車両でしたが、座った位置からとりあえず無事にモノレールに乗ってほっとした風のおじさんが見えて、私もほっとしました。
その後、しばらくウトウトしていた私ですが、ふと気づいて何気なく隣車両に目をやると「羽田駅」(現在の天空橋駅)で下車しているおじさんの姿が目に入りました。
北海道・厚岸からきたおじさん
「おじさん、違う! 羽田駅じゃなくて羽田空港駅まで行くんだ~!」私は飛び起きて、咄嗟に車両のドアから顔だけ出して
「おじさん!! ここじゃないです! 羽田空港はまだ先! 乗って!」
とホームに向かって叫んでいました。
もちろん事情を何も知らない周りの乗客は、突然飛び起きて叫んだ私にびっくり。ホームのおじさんもびっくりしていましたが、モノレールに再び飛び乗りました。
モノレールが混んでいたので、お互いそのまま隣の車両に乗ったまま羽田空港まで行きました。周りの注目の的になりましたが、私は開き直って素知らぬ顔してまた座席に戻りました。
やがて、羽田空港駅で下車してから、おじさんは私のところに飛んできました。
「ありがとう! ありがとう。私は厚岸のものなんですが、何かお礼に送りたいので連絡先を教えてください」
そう言ってくれたのですが、20代のうら若き娘だった私は中年おじさんに連絡先を教えるのをためらいました。また周囲からの視線が気恥ずかしかったのもあって、またしてもそっけなく「結構ですので」と断り、そのまま足早に去ってしまいました。おじさんはちょっと寂しそうに私の方をずっとみていました。
それから25年以上経った今でも、思い出します。おじさんが無事に厚岸に帰れたか気になり、そっけなくしてしまったことを後悔していでもとっさに叫ぶことの出来た、若かった自分を誇らしく思う気持ちもあり、今でも子ども達に語って聞かせたりしています。
あの人の好さそうなおじさんの笑顔が今でも思い出されます。あの時「都会の人は冷たい」って思われたか、それとも「都会の人も優しかった」と思ってくれたか、どっちかなぁ。
今でも忘れられない人はいますか?
Jタウンネットでは読者の皆さんの「忘れられないあの人」との思い出を募集している。
読者投稿フォームもしくは公式ツイッター(@jtown_net)のダイレクトメッセージ、メール(toko[@]j-town.net、[@]を@に変更)から、具体的な内容(どんな風に親切にしてもらったのか、どんなことで助かったのかなど、500文字程度~)、体験の時期・場所、あなたの住んでいる都道府県、年齢(20代、30代など大まかで結構です)、性別を明記してお送りください。秘密は厳守いたします。
(※本コラムでは、プライバシー配慮などのため、いただいた体験談を編集して掲載しています。あらかじめご了承ください)