「水で冷やすカップ麺」の先駆け!? ジャンキーさが堪らない「大黒 冷しシリーズ」の季節が今年もやってきた
マニアと味わう「ご当地カップ麺」の世界
第八十四回 大黒食品工業の夏限定「冷しシリーズ」3種
文・写真:オサーン
カップ麺ブロガーのオサーンです。
「ご当地カップ麺」連載の第八十四回目となる今回は、群馬県のインスタント麺メーカー・大黒食品工業が毎年春夏限定で発売している名物カップ麺「冷しシリーズ」の「冷したぬきそば」「冷したぬきうどん」「冷し中華 醤油だれ」の3品をレビューします。
長年販売され続けている夏の定番商品です。
群馬に「大国食品工業」あり!
実は北関東の3県には、ひとクセある即席麺メーカーが多くあるのをご存知でしょうか。
東から、茨城県には、ニュータッチや凄麺の「ヤマダイ」や、主に激安スーパーで幅を利かせる「麺のスナオシ」。
栃木県には、駄菓子系の「東京拉麺」で知られる「新栄食品」。
そして群馬県には、あの「ペヤング」の「まるか食品」。
大手ではありませんが、いずれもおなじみのメーカーばかりですよね。
そして、今回レビューする「大黒食品工業」。群馬県南部・玉村町に本社を置き、自社ブランドの他にスーパーなど向けにOEM製造も手掛けています。
大黒食品工業の「冷しシリーズ」は、毎年春夏シーズン限定で発売される名物商品で、スーパーやドラッグストアなどでかなり安価で売られています。
冷水で冷やして食べるカップ麺は、今でこそ「どん兵衛」や「赤いきつねと緑のたぬき」といった有名ブランドからも販売されていますが、大黒食品工業の「冷しシリーズ」はその先駆け的存在と言えるでしょう。
以前は「冷し中華 ごまだれ」や「冷し担担麺」といった商品も出ていましたが、現在は今回レビューする「冷したぬきそば」「冷したぬきうどん」「冷し中華 醤油だれ」の3商品に落ち着いています。
ちなみに秋冬シーズンには、越後製菓の「杵つき餅」を使用した「もちシリーズ」のうどんとラーメンに切り替わります。こちらも定番商品としてスーパーでよく見かける商品ですよね。
「冷しシリーズ」3品の内容物
3品とも内容物はめんつゆ(スープ)とかやくの2袋で、それぞれ、そば、うどん、ラーメンの油揚げ麺が入っています。
定価は税別198円ですが、スーパーへ行けば100円程度で売られている安価な商品なので、内容物もそれなりにチープなのは致し方ないところ。
「冷したぬきそば」と「冷したぬきうどん」については、袋2つがまったく同じもので、麺が違うだけの双子のような感じ。
同じものを使用することで製造コストを下げており、安価販売につなげているようです。何でも値上げの昨今、こういう努力はありがたいですね。
「冷し中華」にも袋が2つ入っていますが、よく見ると「かやく」の袋の中にもう1つ「からし」の袋が入っていることがわかります。
一緒に入っている黄色いのりたまのようなものに擬態しているので、間違って袋ごと口に入れてしまわないようにご注意ください。
「冷しシリーズ」の作り方
作り方の書かれたフタは3商品共通のものとなっており、こちらにもコストを抑える努力が窺えますね。
冷しシリーズは、一般的なカップ焼そばと同じようにまずはお湯を入れて冷しそば・冷し中華は3分、冷しうどんは5分待ってから湯切りをし、その後に冷水を入れて捨てることによって麺を冷します。
経験上、1回の冷水では冷たくすることはできません。2回以上冷水を入れて捨てるのを繰り返し、できれば3回やるとお湯の熱が概ね消えてくれます。
油で揚げた麺を冷水で冷やすので、脂が凝固して白い塊になります。
部屋が温かいとそれでも大したことはないのですが、寒い季節だったり、エアコンでキンキンにした部屋だったりすると、混ぜているそばからどんどん油が固まっていきます。
あまり気分の良いものではありませんが、冷やして食べる以上どうしようもない部分です。
また、麺を十分に冷やしてから、つゆ(スープ)と麺を混ぜ合わせていきますが、冷えて締められた麺は水分を吸わなくなります。
残った水が多いとつゆ(スープ)が薄くなってしまうので、水切りはいつもよりしっかり行いましょう。
ジャンキーな甘いつゆ!「冷したぬきそば」
さて、ようやく実食です。まずは「大黒 冷したぬきそば」。
「冷したぬきそば」は「どん兵衛」や「赤いきつねと緑のたぬき」からも出ていたことのある定番メニュー。おそば屋さんに行ってもほぼ必ずありますよね。
大黒食品工業の「冷しシリーズ」の中でも看板商品的な位置づけで、毎年発売されるたびに、そのジャンキーな味わいが話題にのぼる人気商品です。
かつおだしを効かせた濃口醤油のつゆに、細めでコシが強めな油揚げ麺のそばと、揚げ玉、ごま、ネギの入った具が合わせられています。
濃口醤油の風味に加え、甘みが強くつけられており、そばの風味と揚げ玉やごまの香ばしさと合わさって、甘濃さが後を引くジャンキーな味わい。揚げ玉とごまがかなり良い仕事をしています。
最近では他社からも「冷したぬきそば」が出ていますが、ジャンキーさにかけては他の追随を許しません。
おすすめの食べ方は、麺の湯戻しを早めに切り上げて硬めで食べること。
甘濃いつゆと揚げ玉やごまの風味に加え、そばに軽いスナック感が残ることで、よりジャンクな冷しそばになります。
パッケージは爽やかですが、実際はジャンキーすぎてそれほど爽やかではありません。もちろん、いい意味で。
冷したぬきそばの双子!「冷したぬきうどん」
続いては、「大黒 冷したぬきうどん」。
他社の冷し系カップ麺は、そばは「たぬきそば」、うどんは「きつねうどん」が多いですが、この商品は「たぬきそば」とパーツを共通化した「たぬきうどん」。
ちなみに、「たぬき」といえば全国的には揚げ玉や天かすが乗ったものを指すことが多いのに対し、関西ではお揚げが乗っているもののことを「たぬき」ということが多いそう。また、京都の「たぬきうどん」はあんかけで、きざんだお揚げと九条ネギが入っています。
今回の「冷したぬきうどん」は、揚げ玉のほうです。
「冷したぬきそば」と同じつゆとかやくを使用するため、当然味も似通ったものになりますが、麺が風味の強いそばからうどんに代わるだけで、ずいぶん味の印象が異なります。
そばの香りがない分、醤油香る甘いつゆや、揚げ玉・ごまの風味がストレートに伝わります。しかし、なぜか「冷したぬきそば」ほどジャンキーではありません。
つゆや具だけではなく、そばの香りや硬めの食感が「冷したぬきそば」のジャンキーさに大きく寄与していることがわかります。
無難においしい一杯ではありますが、麺がうどんとして取り立てておいしいというわけでもないので、そばが食べられる方には「冷したぬきそば」をおすすめしたいです。
酸味×甘み×スナック感が病みつき?「冷し中華 醤油だれ」
3つめは、「大黒 冷し中華 醤油だれ」。カップ麺で「冷し中華」は非常に珍しいですよね。
とはいえ、最近はヤマダイの「凄麺」シリーズからノンフライ麺を使った本格的な商品も登場しています。「冷したぬき」や「冷しきつね」が大手メーカーから出始めているので、「冷し中華」のカップ麺もいずれ店頭を賑わすかもしれません。
酸味と甘みが際立つ醤油味のスープに、中細で縮れのついた油揚げ麺と、のリたまふりかけのような具、そしてからしが合わせられています。
リンゴ酢やはちみつも使っているということで酸味と甘みがかなり強く、特に酸味は荒々しいレベル。それに加え、油揚げ麺のスナック風味も他の2種に比べてかなり目立っています。
酸味、甘み、油揚げ麺の奏でる味わいをジャンクというのか、不協和音というのか――人によって評価が変わってきそうです。
そしてこの少量入ったからしですが、少量だからといってナメてはいけません。
お店や家庭の冷し中華だと、からしを溶かせるスープやたれがありますが、この商品はスープが少量なので溶かす場所がありません。
そのため、麺の上にのせてちょっとずつ麺と一緒に食べていくわけですが、当たりどころが悪いと猛烈にむせるし、脳天に衝撃が走ります。
つかんだ麺が意図せずにからしにつながっていることもあり、不意打ちのからし攻撃を食らうこともあります。
かなり辛いのでご注意ください。
長年続く理由がよくわかる商品
今回は、カップ麺界の春夏の風物詩・大黒食品工業の「冷しシリーズ」3品を食べ比べてみました。
いずれも爽やかなパッケージとは裏腹に、ジャンクな味わい。安価なのでチープさはありますが、長年続いている理由がよくわかります。
特にジャンキーな「冷したぬきそば」がおすすめです!