スープの上に広がるは、烈しく黄色いフワフワたまご 「萬珍軒玉子とじラーメン」で触れる名古屋めしの魅力
マニアと味わう「ご当地カップ麺」の世界
第七十八回 ファミマ限定「萬珍軒 玉子とじラーメン」
文・写真:オサーン
カップ麺ブロガーのオサーンです。
「ご当地カップ麺」連載の第七十八回目の今回は、ファミリーマート限定で発売されている、サンヨー食品の「萬珍軒 玉子とじラーメン」をレビューします。
食が豊かな名古屋にあって、ソウルフードのひとつとして知られる名物ラーメンのカップ麺です。
名古屋めしのひとつ「萬珍軒」の「玉子とじラーメン」
味噌カツやモーニングなどでよく知られるように、名古屋は食がとても豊かな街。東京と大阪の間にあってまるで独立国のよう。「名古屋めし」と形容されるひとクセもふたクセもある食文化が形成されています。
曲者揃いの名古屋出身の芸能人がそんな「名古屋めし」を紹介する様子は、もはやテレビなどではおなじみの光景となっています。
麺類に絞っても、「味噌煮込みうどん」や「きしめん」、「スガキヤ」といった昔からあるものから、すっかり全国区になった「台湾ラーメン」や「台湾まぜそば」、そして最近では「あんかけスパゲッティ」や「鉄板ナポリタン」など、押しもクセの強さもかなりのもの。
今回紹介する「玉子とじラーメン」は、全国的な知名度はそれらに及ばないかもしれませんが、「名古屋めし」の中でも地元民に愛される名古屋のソウルフードのひとつとして知られています。
「玉子とじラーメン」の元祖である「萬珍軒」は、名古屋にある1968年創業のラーメン店。
ノーマルの「玉子とじラーメン」の他に、「玉子とじ担々麺」や「天津麺」などバリエーションがあり、自家製ラー油への強いこだわりから「餃子」も人気とのことです。
麺の上、一面に広がる黄色
カップには一面に広がるかきたまとねぎが入っていて色鮮やかですが、それほどボリュームがあるわけではなさそう。別添袋も「仕上げの小袋」1袋のみです。
お店の「玉子とじラーメン」はたっぷり玉子が入っている上、チャーシューやねぎ、焼海苔が入っています。
なので、今回のちょっと貧弱に見えるかやくの量でお店の再現ができるのかはちょっと不安です。
しかし湯戻し後にフタを開けると、水分を含んで膨らんだかきたまが表面をビッシリ覆っており、文句なく「玉子とじラーメン」と言える見た目。
ピカチュウの電撃ばりの鮮烈な黄色を見せつけられ、不安は杞憂に終わりました。
具はかきたまとねぎしか入っておらず、お店のラーメンでは入っているチャーシューや焼海苔などはないのですが、色鮮やかさはお店のラーメン以上。
こんなに黄色いのは、我妻善逸かサッカーブラジル代表くらいでしょう。
油でアツアツの醤油味スープ
かきたまがたっぷり入った醤油味のスープに合わせられているのは、細めの油揚げ麺。
スープのベースは豚骨や鶏ガラで、お店では名古屋コーチンが使われているとのこと。
カップ麺で名古屋コーチンが使われているわけではなさそうですが、鶏ガラ&かきたまの親子共演を果たしており、親子丼ならぬ親子麺の様相を呈しています。
醤油味にはキレがありますが、鶏ガラの旨みやかきたまの甘みと対比になっており、塩気が刺さらずにマイルドなスープでした。
スープには豚脂や鶏油など油脂がたくさん浮いており、こってり感強め。ほんのり感じる鶏油の風味が、スープの甘さを増幅しています。
また、表面に油膜を作ることでスープの温度が下がりにくくなっており、アツアツのスープを楽しめるとともに、出来立て、調理仕立てのような臨場感がありました。
玉子の甘みとアツアツな油脂の組み合わせは後を引く不思議な魅力があり、中毒性のあるジャンキーな味わいです。
コシの強い麺とふわふわ玉子の対比が面白い
油揚げ麺は細めで、コシが強め。
細麺は太い麺に比べるとスープやかきたまと絡みやすく、麺と玉子がよく絡むことで、玉子とじ感がしっかり出ています。
ふわふわの玉子とコシの強い麺が対称的で、やわらかさとかたさが共存する他にあまりない独特な食感が印象的でした。
玉子自体の魅力はもちろんですが、玉子の甘みやふわふわと、醤油のキレや麺のコシが引き立て合い、アツアツな油との組み合わせも独特。
他にない味と食感を楽しめる一杯でした。
かきたまがスープに残る問題発生!
さて、ふわふわかきたまはとても魅力的ですが、ひとつ問題が生じます。
カップ麺愛好家の中には、塩分過多にならないためにスープを残す方が多いと思いますが、それをやるにはスープにかきたまがあまりにたくさん残ってしまうのです。
最初は箸ですくってちびちび食べてみたものの、そのうち「いーっ!」となってしまい、結局全部飲み干してしまいました。
筆者のような貧乏性の方は大いに注意が必要です。
「名古屋めし」の文化に手軽に触れられる一杯
「名古屋めし」のお店の中には、味噌カツの「矢場とん」や台湾まぜそばの「麺屋はなび」のように東京に支店があるものもありますが、全国的に展開しているものばかりではないので、今回のように本場の味、文化に触れられる商品は貴重です。
「萬珍軒 玉子とじラーメン」は、ふわふわで甘いかきたまと、醤油味のスープ、アツアツの油、そしてコシの強い麺の組み合わせは独特の世界観があり、とても楽しめる一杯でした。
カップ麺でもこれだけ魅力的な一杯が、実際のお店だとどんな味なのかも気になるところ。
カップ麺をきっかけに、春の陽気に誘われてかきたまのようにふわふわとお店に行ってみるのも良いかもしれませんね。