日曜日の早朝にだけ現れる...? 怪しすぎる「千葉急行バス」の謎を追う
「幽霊バス」
「怪談じゃん」
「こんなの乗ったらゲゲゲの鬼太郎の世界...もとい、ビビビのねずみ男の世界に連れ去られちゃいそう」
2022年2月半ば、ツイッターユーザーのおだぎりさとし(@Odagiri_Satoshi)さんの投稿に対して、そんな物騒な反応が寄せられた。
おだぎりさんがツイートしたのは、廃墟やお化け屋敷の話題ではない。本来、怪しい点や恐怖を感じるはずのない、「バス停」の写真なのだ。
それがこちらである。
この紙は、千葉市若葉区にあるコミュニティバスの宮内山バス停の横に設置されているものだという。ラミネート加工されており、「八街駅ゆき」と行き先が書かれている。
これだけだとあまり違和感はないが、よく見るとバス停と称していながら園芸用の支柱に貼られており、なんとも雑。運行しているバスも毎週日曜の早朝5時台の1便だけ。
そして何より、右下に書かれた「千葉急行バス」という名称が謎を呼んでいる。
Googleや国税庁の法人番号公表サイトで検索しても「千葉急行バス」は引っかからない。さらにバス停の貼り紙には連絡先も書かれていないため、これが会社なのか何なのか、実態が全くわからないのだ。
一か所だけではなかった謎のバス停
1月14日におだぎりさんは宮内山バス停の写真を投稿していたが、2月半ばに新たな情報が明らかになった。
あるツイッターユーザーが、宮内山ではない別の千葉急行バスのバス停の存在を発見し、ツイートしたのだ。
投稿されたのは、「内小間子(うちおまご)」「西御門」「用草公民館(もちくさこうみんかん)」「希望ヶ丘入口」の4か所。やはり、八街駅に向かう日曜の5時台の路線だ。
いずれも宮内山より八街駅側で、どの貼り紙にもそのバス停より「前」の停留所情報は書かれていない。
宮内山も同様だと考えられるので、この「千葉急行バス」は運行経路も始発がどこなのかすらも一切わからないということなのだ。
ネット上でもおだぎりさんら、バス停の目撃者以外の話が見つからないバス会社(?)。あまりにも謎すぎるため、
「マニアが趣味で立てた架空バス停のような気もします」
「ただの路線バスごっこな気がする...」
「ガキのいたずら?」
との憶測の声も上がっていた。
千葉急行バスは存在しているのか
あまりにも情報が少なすぎる「千葉急行バス」は、実在するものなのか。Jタウンネット記者は、2月17日、国土交通省の関東運輸局旅客第一課を取材し、千葉急行バスに路線バスの許可が降りているのか確かめた。その回答が、こちらである。
「千葉急行バスという名前では、乗り合いの路線バスの許可は確認できません」(国土交通省・関東運輸局旅客第一課 担当者)
ツイッターで投稿されたバス停は、本来はいずれも市が運営するコミュニティバスの停留所である。そこで次に記者は、各自治体に「千葉急行バス」の存在を把握しているのか聞いた。
「西御門」がある佐倉市の都市部都市計画課はツイッターで話題になったことで初めて知り、「宮内山」「内小間子」がある千葉市の都市局都市部交通政策課では取材の時点で存在を認識していなかった。
しかし、「用草公民館」「希望ヶ丘入口」を通るふれあいバスを運行する八街市の企画政策課からは有力な情報が得られた。
「千葉急行バスは以前から知っています。去年くらいから用草公民館以外の他のバス停にも紙を貼られることが何回か続いていて、警察にも相談しました。警察からは貼った本人に注意指導をしたみたいです。紙を貼ったのはいたずらだと思われますね」(八街市企画政策課の担当者)
この話が事実なのか、八街市を管轄する佐倉警察署の副署長に話を聞いたところ、
「警察として千葉急行バスのことは把握しています。掲示をした者には話を聞いて、注意もしました」
という回答があった。
ただ、一体だれが、何のために作ったものなのか。そして、実際にバスは運行しているのかは記者にはわからないまま。
路線の存在を確かめるには、日曜の早朝に現地に行くしかなさそうだ......。