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あの時はありがとう
旅先いい話

「赤ちゃんが生まれそうなのに、病院に行く手段がない。冬の明け方、雪もどんどん積もっていって...」(東京都・60代女性)

大久保 歩

大久保 歩

2021.09.30 06:00
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雪の中、1人で公衆電話から病院に...

40年も前、私たちが若い夫婦で生活に余裕がなかった頃の話です。

アパートには風呂も電話もなく、食べるために一生懸命働いていました。そんなときに、妊娠。1月の寒い日の明け方に産気づき、降り始めた雪の中、病院に連絡するために、1人で近所の公衆電話へと向かいました。

寒さと初めての出産に、身体がブルブルと震えます。

一度家に帰り、主人を起こして、夜が明けはじめた街でタクシーを待ちました。

しかし、タクシーどころか車さえいっこうに通りません。積もり始めた雪に足を取られながら途方に暮れ......。

そのとき、1台のタクシーが急に目の前に現れました。ただ、そのタクシーは「回送」表示だったのです......。

夜明けに、回送表示のタクシーが(画像はイメージ)
「産まれるんだろ、乗んなよ!」

運転手さんの声が、少し開けられた窓から聞こえました。

きっと帰るところだったのだと思いますが、そのまま病院まで送ってくださり、降りるときには「この雪だからみゆきちゃんかな?」と、笑いながら言ってくれました。

まだ若い、ハンサムな運転手さんでした。

あのときは、いいえ、その後も生活に余裕がなく、あの人を探してお礼をすることもできませんでした。

生まれたのは男の子だったので「みゆきちゃん」にはなりませんでしたが、元気に育ち、今では5人のパパになっています。

人生の中で、一番と言える感謝の思い出。

雪が降るとあの日が浮かびます。ありがとうございました。

誰かに伝えたい「あの時はありがとう」、聞かせて!

名前も知らない、どこにいるかもわからない......。そんな、あの時自分を助けてくれた・親切にしてくれた人に伝えたい「ありがとう」を心の中に秘めている、という人もいるだろう。

そこでJタウンネットでは読者の皆様の「『ありがとう』と伝えたいエピソード」を募集したい。

読者投稿フォームもしくは公式ツイッター(@jtown_net)のダイレクトメッセージ、メール(toko@j-town.net)から、エピソードを体験した時期・場所、具体的な内容(どんな風に親切にしてもらったのか、どんなことで助かったのかなど、500文字程度~)、あなたの住んでいる都道府県、年齢(20代、30代など大まかで結構です)、性別、職業を明記してお送りください。秘密は厳守いたします。

(※なお本コラムでは、プライバシー配慮などのため、いただいた体験談の一部を改変している場合があります。あらかじめご了承ください)

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