浴槽が客席に...大正時代からあった銭湯が喫茶店に変身 レトロでカワイイお店が生まれた理由
もう使われていない空き倉庫を活用したり、古民家を改装したり、もともとはまったく別の用途で使われていた建物を改装して喫茶店にした、いわゆるリノベーションカフェ。
今回、香川県のとある町に、昭和レトロな香り漂うそんなカフェがあると、ツイッターで話題になっている。
何やらタイル張りの囲いのような物の中に木製のテーブルが置かれた席。
テーブルの上にはナプキンや照明スタンドも置かれ、たしかに喫茶店の客席といった雰囲気だが......この形、そこはかとなく見覚えがある。
実はこちら、もともとは銭湯だった場所を喫茶店に改装したお店なのだ。
テーブルが置かれているのも、よく見れば浴槽。リノベーションカフェにも色々あるが、銭湯から喫茶店とは、なかなかにギャップがあってユニークだ。
こちらの写真に対し、ツイッター上では、
「これは斬新ですね」
「めっちゃ行ってみたいです!」
「これはレトロ好きにはたまらないです」
といった声が寄せられている。
話題になっているのは、香川県在住のフォトグラファーの三谷ユカリ(@mitsuyuka_lp)さんが2021年6月3日に投稿した写真。Jタウンネット記者は10日、本人とカフェの店主に話を聞いた。
大正末期からあった銭湯を喫茶店に
三谷さんが21年4月17日に訪問したのは、香川県多度津町にある「藝術喫茶 清水温泉」。
銭湯を改装したカフェで、浴槽が客席になっていたり番台があったりと、昭和レトロな雰囲気を感じたという。
「もともと香川在住だったこともあり、何年か前からこちらのカフェの存在は知っていて気になっていました。そして、フォトグラファーとしての活動を始めたのをきっかけに、『清水温泉さんを撮りたい!』と思って、訪れるに至りました。
想像以上にレトロな世界が広がっており、そこだけ時代が違って感じられました。昭和レトロが好きな方に、特におすすめしたいです。
わたしはお店では豚の生姜焼き定食を食べたのですが、お料理もとても美味しいので、香川県に足を運ばれた際にはぜひ訪れてほしいお店ですね」(三谷さん)
Jタウンネット記者は10日、「藝術喫茶 清水温泉」にも取材した。
店主の日高明道さんによると、この場所は大正末期に創業し平成初期に廃業した銭湯だった。
全国的にも珍しい「レンガ煙突」のある銭湯だったそうだ。ちなみに、そのレンガ煙突は今でも残っている。
そして、廃業から約30年が経った18年5月26日。地元住民の協力や支援を受けつつ進めた約1年にわたる改装の末、「藝術喫茶 清水温泉」はオープンした。
どうしてかつての銭湯を、喫茶店に改装しようと思ったのだろうか。
記者の質問に、日高さんはお店がオープンするまでの経緯を語ってくれた。
「私の息子が岡山県立の大学に通っていた時にとても懇意にしていた人物が、ちょうど廃業していたこの銭湯のすぐ近くに住んでいたんです。
そして、その方に挨拶をしに多度津町を訪れた際に、この銭湯を見つけまして、『この歴史ある銭湯をこのままにしておくのはもったいない』と考え、喫茶店に改装して復活させよう、と思ったんです」(日高さん)
奈良県でギャラリーを開いていた日高さんは、自身の経験をいかし、建物をリノベーション。奈良のギャラリーは画家として活動している息子さんに任せ、同店の店長になった。
同店がツイッターで注目を集めたことについて、日高さんは「話題になってくれるのはありがたいです」とコメント。
同店では現在、老朽化が著しい建屋を存続させるためのクラウドファンディングも行っている。
銭湯をリノベーションした、ノスタルジックな雰囲気満載の「藝術喫茶 清水温泉」。
皆さんも一度、ゆっくりとお湯に浸かりに......ではなく、お茶をしに足を運んでみてはいかがだろうか。