「消費税が●%になった場合...」 書籍の「総額表示」に力技で対応した出版社が話題に→なぜ導入?代表に聞いた
書籍の価格について、消費税込の総額を表示することが2021年4月から義務化される見通しだ。
義務化となれば、例えば消費税変更前の出版物の価格表示を修正する必要が出てくるなど、多大なコストがかかる可能性があるとして、主に作家や編集者などからツイッターに不満の声が挙がっている。
そんな中、総額表示義務化にユニークな対策をした本があると、ツイッターで話題になっている。それが、こちらだ。
こちらは、広島市の出版社・リミアンドテッドから出版されている「もう一つの重罪 桶川ストーカー殺人事件『実行犯』告白手記」のブックカバーだ。
カバーの折り返し部分には、「消費税が上がった場合の定価」の文字が。その下には、消費税が11%から30%になったそれぞれの場合の金額がズラリと列挙されている。例えば、「11%になった場合:1110円」「25%になった場合:1250円」などだ。
そしてその下には、
「初版発行後に消費税率が変わったとしても、変更後の消費税率が上記のいずれかに該当すれば、書店などの店頭で消費税率の変更に伴う措置を講じずに本書を販売し続けても、初版発行時の法律上は問題がないと判断し、このような価格表示をしています。」
との説明書きがある。
さすがにここまで書いておけば、今後しばらくは消費税が変更されても対応できるだろうということか......。この価格表示にツイッターでは、
「1%毎に書いてくれる親切設計」
「税金下げる想定が一切ないの草」
「改装はさせない勢いなんですね」
といった声が寄せられている。
なぜ、こうしたカバーを導入したのだろうか。Jタウンネットは2020年12月4日、出版元のリミアンドテッドに詳しい話を聞いた。
自分で工夫できるところは工夫すべき
取材に応じた代表の片岡建さんは、今回こうした価格表示をした理由について、
「自分はもちろん、書店や取り次ぎの方々にも余計な手間をかけさせることになってしまうので、カバーやスリーブなどはずっと変えずに販売していきたいという思いがありました」
と話した。
話題になった価格表示をした本を出版するまでの経緯については、
「ちょうどこの本を製作している時に総額表示義務化の問題を知り、その対策として今回の表示形式を思いつきました。その後、財務省と消費者庁、内閣府の各担当部署に確認を取った上で、この価格表示を取り入れました」
と説明した。
総額表示義務化は出版社などにとっては確かに困る事態だが、「自分たちで工夫できるところまでは工夫していくべきだと思った」とのことだ。
また、ツイッターでの反響について片岡さんは、
「単純に嬉しいですし、この表示の意図をくみ取ってくれる人がいると知って、それも嬉しく思います」
とコメントしている。