前も後ろもスケスケ... 渋谷の「透明トイレ」が話題に→本当に外から見えない?現地でさっそく試してみた
「公園のトイレ」に対して、あなたはどんなイメージを持っているだろうか。暗い、汚い、怖い...。「できるだけ使いたくない」という人も少なくないだろう。
しかし2020年8月5日、そんなイメージを覆すようなトイレが東京・渋谷区内の公園に登場。ツイッターで話題を呼んでいる。
カラフルで透明感ある壁面。向こう側の通りまで透けて見える。中がはっきり見えるので安心と言えば安心なのだが...。用を足したら通報されてしまわないだろうか。
だが心配は無用。実はこのトイレ、鍵をかけると壁が不透明になり、中が見えなくなるという。そんな仕掛けがあるのなら、ぜひ体験してみたい。
Jタウンネット記者は、このトイレが設置されている代々木深町小公園と、はるのおがわコミュニティパークに向かった。
鍵をかけると...
まずやってきたのは代々木深町小公園。トイレは5日にお披露目されたばかりということもあって、目立った汚れはない。まるでアート作品のようだ。
こちらのトイレは向かって左端(オレンジ)が多目的、真ん中(赤)が女性用、右端(紫)が男性用。正面・後ろ・横、どの方向から見ても中が透けて見えるため、人が入っていれば一発で分かる。
そしてトイレ横と扉には、「ガラスは鍵をかけると不透明になります。必ず施錠してください」といった説明が掲示されている。
実際に真ん中の女性トイレに入ってみた筆者。鍵をかけるまでは正面、後ろと外の様子が丸見えなため、やはり少々落ち着かない。
しかし、鍵をかけると壁は一瞬で不透明になった。これなら普通のトイレと変わらない。むしろ隣のトイレとの間にある壁が一面鏡張りで、自分のあまり見たくない姿が映されていることの方が気になった。
その一方で、機能面は公園のトイレとは思えないほど充実している。トイレはウォシュレットが付き、女性用トイレは手洗い場と、それとは別にもう一つ洗い場がある。また隣の多目的トイレにはオムツ交換台やベビーチェアが、男性用トイレには男性用小便器と洋式トイレが設置されている。鍵さえかければ何も怖いことはないのだ。
こうなると気になるのは「外からは本当に見えないのか」、この1点に尽きる。実際に中から施錠した様子がこちらだ。
男性用トイレが施錠されているが、隣の女性用と比較してみていかがだろうか。中には人が入っているが、それすら分からないようになっている。多少の動く影は確認できるが、何をしているかまでは分からない。普通に使用する分には問題ないだろう。
歩いて5分ほどの場所にある、はるのおがわコミュニティパークにも行ってみた。こちらのトイレも先ほどと同じ造りだがカラーが違う。水色(多目的)、緑(女性用)、青(男性用)と新緑になじむ色合いだ。
筆者が訪れた時は、いずれのトイレも使用されている様子はなかった。ただ、写真を撮っていく人は数名おり、注目を集めていることはたしかだ。
なぜ透明に?担当者に聞いた
これらのトイレは、日本財団が実施しているプロジェクト「THE TOKYO TOILET」の一環で設置された。プロジェクトには複数のクリエイターが参画。性別、年齢、障害を問わず、誰もが快適に使用できるトイレを2021年夏までに17か所に設置する予定だという。
そして8月5日には3か所のトイレが使用可能に。そのうち2か所が今回ご紹介した透明トイレだ。
透明トイレは建築家の坂茂氏がデザインを手がけた。日本財団の公式サイトによると、このデザインの目的は「中が綺麗(クリーン)かどうか、中に誰も隠れていないかどうか」という2つの心配を解消することだ。
日本財団の広報担当者に、施錠すると壁が不透明になる仕組みを聞くと、
「鍵がかかっていない状態では外壁は通電しており透明なままを保ちますが、鍵がかかると電気が切れ不透明に変化します」
とのこと。もともとは不透明な外壁ということだ。
鍵をかけているにもかかわらず、何らかの理由で壁が透明になってしまう可能性はあるのか。念のため確認してみると、
「そのような可能性は想定しておりません」
と回答した。
オープン前からツイッターなどで注目を集めていたこちらのトイレ。夜になるとトイレ内は照明が付き、さらに美しさを増す。担当者はこのトイレが話題になったことについて、
「反響の大きさに驚きました。せっかくご関心を持て下さった皆さまに、ぜひこのプロジェクトの目的や、意図を正しくお伝えできればと思っています」
としている。