有楽町ガード下「食安商店」が閉店 自販機で酒を買う「サラリーマンの聖地」
オフィスビルが立ち並び、多くの会社員が行き交う東京・有楽町。そのガード下で60年以上にわたって経営していた、立ち飲み屋「食安商店」(千代田区有楽町)が2020年4月11日をもって閉店する。
店内には自販機が並び、自分で購入して中で飲むという独特のスタイル。閉店は4日ごろからツイッターで話題となり、惜しむ声が寄せられている。
「ここで飲む回数は少なかったけど木金の夜に通りがかると人が溢れているあの感じが大好きでした」
「食安商店の前通ったことしかないけどああいうところがずっと残って欲しいと思ってたよね...」
「サラリーマンさんの憩いの場所がなくなります」
昭和の雰囲気を色濃く残した外観だが、令和になった今でもビジネスマンを中心に利用者は一定数いた様子。一部では「サラリーマンの聖地」とも呼ばれていた。
日比谷駅の出口からも近く、グルメサイトの口コミには「飲み足しにちょうど良い」「人が多い」などど書き込まれている。けっして、客が少なかったわけではないようだ。
ではなぜ、食安商店は閉店してしまうのだろうか。
Jタウンネットは8日、食安商店を経営する「株式会社食安」の社長である男性と、共に店を切り盛りする母親の2人に話を聞いた。
「本当はもうちょっとやっていたかった」
食安商店は24時間営業で、現在は酒類の自販機が3台、ソフトドリンクは4台設置されている。新型コロナウイルスの影響で今はやっていないが、水・木・金曜の16~19時はおつまみも販売していた。
男性によれば、店は男性の祖父から3代にわたって引き継がれてきた。経営年数については、店の口座が1952年に開設されていることから68年くらい経っているのではないかとのことだ。
閉店理由を聞くと、男性は「立ち退きです」ときっぱり。店の建っている土地がJRから借りているものだという。
「本当はもうちょっとやっていたかったですね」
こう本音を漏らすのは男性の母親。閉店は19年から弁護士と相談し決定した。
男性は酒類を自販機で販売している理由も教えてくれた。もともとは普通の立ち飲み屋だったが、先代である男性の父が、当時やっていた別の事業が経営難になったことから会社の従業員を解雇。人を使わないでできる方法はないかということで、21年前に自販機スタイルに切り替えた。
最近の客足について聞いてみると、新型コロナウイルスの影響が出て減ってはいるものの在宅勤務でない人が足を運んでいるとのこと。千代田区が路上禁煙ということもあり、普段は愛煙家も多く来ていた。
男性の母親は、ツイッターで閉店を惜しむ声が上がっていることに「ありがたいです」と話しつつ、
「千代田区は本当にタバコを吸うところが少ないので、(閉店後は)どうされるのかな」
と愛煙家を案じていた。