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地域の課題をSDGsで解決? 北九州市で見つけた「未来の商店街」の姿とは

Jタウンネット編集部

Jタウンネット編集部

2020.03.30 12:00
提供元:北九州市
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「SDGs」。

国連が2015年に採択した国際社会共通の目標で、「Sustainable Development Goals」(持続可能な開発目標)の略だ。メディアで取り上げられることも多いので、この言葉を見た・聞いたことがあるという人は多いだろう。

しかし、それが具体的にどういう概念で、私達の日常生活にどう関係しているのか――そこまで説明できる人は、あまり多くはないかもしれない。実際、Jタウンネット編集部の若手部員たちにSDGsについて聞いてみると、

「なんとなくは分かるんですが、具体的に何か、と言われると...」
「すみません、本当に何のことか全然分からないです」

との意見が出た。

こうした声が表すように、正直なところ、現時点では国内でのSDGsへの関心はそこまで高くない。19年に行われた複数のアンケート調査でも、その認知度は高くても2~3割程度にとどまっている。

そうした現状がある一方で、SDGsへの理解や意識が日本全国でも飛び抜けて浸透している商店街がある。

九州の玄関口・小倉駅から歩いて数分。日本最古のアーケード街として知られる「魚町銀天街」(福岡県北九州市)だ。

魚町銀天街のアーケードには「SDGs」の横断幕が
魚町銀天街のアーケードには「SDGs」の横断幕が

魚町銀天街は18年8月、日本初の「SDGs商店街」となることを宣言。SDGsが掲げる目標を達成するため、地域住民と協力しながら様々な取り組みを進めてきた。その活動が評価され、19年12月には「第3回ジャパンSDGsアワード」で内閣総理大臣賞を受賞している。

そんな「SDGs商店街」とは、いったいどんな場所なのか。 その全貌を探るため、Jタウンネット記者は北九州市へと向かった。

そもそも...SDGsって何?

魚町銀天街の取り組みを紹介する前に、まずはSDGsについて簡単に説明しておこう。

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「誰一人取り残さない」をスローガンとするSDGsでは、格差や環境などの問題について17の目標を掲げている(上の図表)。それぞれの目標には、より具体的なターゲットも設定されていて、その数は全部で169にものぼる。

つまりSDGsとは、これらの目標を個人や企業、行政がそれぞれの立場から達成していくことで、持続可能な社会を実現しようという取り組みだ。国連に加盟している193か国が共通で目指すもので、2030年を目標達成の期限としている。

こうやって説明すると、世界的に大きなプロジェクトで、私達の生活とは縁が遠いような印象も受けてしまうが――はたして、北九州市にある「SDGs商店街」ではどんな取り組みが行われているのだろうか。

実際に魚町銀天街を歩きながら、その様子を探ってみた。

「SDGs in UOMACHI」。商店街には、SDGsを表現したアートがあった
「SDGs in UOMACHI」。商店街には、SDGsを表現したアートがあった

利用客の意識も高まっている?

まず訪れたのは、魚町銀天街の中にある「ビッコロ三番街」。ここは、老朽化していて取り壊す予定だったビルをリノベーションした空間に生まれた複合商業施設だ。そこで見つけたのが、輸入食品を扱う「D.G shop」。

店頭には「フードロス0」宣言が
店頭には「フードロス0」宣言が

この店では、品質的にはまったく問題ないのに、賞味期限が短くなったなどの理由で破棄されてしまう食品を引き取り、割引価格で販売している。フードロス削減につながるこうした取り組みは、SDGsの17が掲げた目標に当てはまる。

実際、D.G shopがこうしたセール販売を始めたのは、魚町銀天街が「SDGs商店街」を宣言した3か月後のこと(18年11月)。もともとフードロスなどの問題に関心があったという店のオーナーに、商店街の取り組みについて話を聞くと、

「フードロスに繋がるセール販売を始めてから、売上も大きく増えました。マイバッグを持参するお客さんも増えてきている印象で、意識の高まりを感じています。商店街の取り組みとも、関係しているかもしれません」

と話していた。

ビッコロ三番街には、規格外の野菜を格安で販売する店も。これもフードロス削減になる
ビッコロ三番街には、規格外の野菜を格安で販売する店も。これもフードロス削減になる

「ゴミを減らすのは当たり前」

続いて脚を運んだのは、スタンドカフェ「Parts Of Life(パーツオブライフ)」。この店では、大きく2つのSDGs関連の取り組みを行っているという。

その1つが、金属とガラスのストローを導入したこと。何度も洗って繰り返し使えるので、廃棄物の削減につながる。いま流行の紙ストローよりも遥かにエコだ。なぜ導入したのか、店主の吉松優太さんに聞くと、

「そこまで深い意味はないんですよ。ただ、大手のコーヒーチェーンなどが導入している紙ストローを見ると、『結局、紙も捨てるのに...』とは思いますね。正直、SDGsもあんまり意識したことがないですが、ゴミを減らすのは当たり前にやることみたいな認識です」

と笑う。

吉松さんが手に持っているのが、再利用可能なストローだ
吉松さんが手に持っているのが、再利用可能なストローだ

このカフェが行っているもう1つの取り組みは、近くのベーカリーで売れ残った商品を、店内で格安で販売していること。そうした割引販売でもパンが売れ残った場合は、客に無料で配布しているという。

まさにフードロス削減につながる取り組みなのだが、

「言われるまで、フードロスを減らす取り組みだとは気がつきませんでした。こっちには一切利益がないんですけど、パン目当てでお客さんが増えればなあと考えていただけなんです」(吉松さん)

あくまで、自分のやりたいことをやっているだけだと強調するのだ。

カフェのテーブルを1つ潰して並ぶパン。地元産の小麦を使った商品だという
カフェのテーブルを1つ潰して並ぶパン。地元産の小麦を使った商品だという

トイレの貸し出しもSDGs?

もう1つ、魚町銀天街の中にある店舗を紹介させてほしい。創業1860年の老舗日本茶店「辻利茶舗」だ。

この店では、以前から商店街を利用する人にトイレを貸し出している。

「だから何...?」と思うかもしれないが、実はこれもSDGsに関わりがある。「安全な水とトイレを世界中に」という目標達成につながる取り組みなのだ。

トイレ貸し出しがSDGsなんて...ちょっと意外?
トイレ貸し出しがSDGsなんて...ちょっと意外?

そのほか、辻利茶舗では、出涸らしの茶葉にかける専用ポン酢「お茶ぽん」を販売している。店の担当者は

「以前から販売をしているものですが、これもSDGsらしいんですよ。SDGs商店街が始まるまで、本当に意識してなかったんですが...」

と話すが、もちろんこれもフードロスを減らすことができる商品だ。

本来は捨てる茶葉をおいしく食べられる
本来は捨てる茶葉をおいしく食べられる

――ここまで、いくつかの店を取材してきて分かったことがある。

まず、SDGsは想像よりもずっと身近なものだということ。そして、SDGsの目標達成につながる取り組みに携わる商店街の人たちが、

「特別なことではなく、やって当たり前のこと」

という認識を持っていることだ。

こうした考え方をしているなんて、実際に商店街の人たちに会って話を聞くまでは、はっきり言って想像すらしていなかった。

「SDGs商店街」が生まれた理由

ところで、魚町銀天街はどういうきっかけで「SDGs商店街」になったのだろうか。

その疑問について探るため、魚町銀天街をSDGs商店街に変えた「仕掛け人」として知られる女性に話を聞いた。商店街の中にある「北九州ESD協議会」でコーディネーターを務めていた森川妙さんだ。

SDGs商店街の「仕掛け人」森川さん
SDGs商店街の「仕掛け人」森川さん

ESDとは「持続可能な開発のための教育(Education for Sustainable Development)」のこと。それを北九州市で推進するため、森川さんは17年夏から魚町銀天街の中にある事務局で活動していた。

そんな彼女が「SDGs×商店街」というアイデアをひらめいたのは、コーディネーター就任から約1年後のこと。仕事のため事務局に向かう途中、たまたま目に留まった魚町銀天街のエコルーフがきっかけだったという。

「エコルーフを見つけた瞬間、すぐ商店街の理事長に話を聞きに行ったんです。もう、仕事に行ってる途中だってことも忘れてしまって(笑い)

そこで、ソーラー発電でアーケードの電気をまかなっていることや、子育ての支援やホームレスの自立支援をしていることなど、商店街が色々な活動していることを理事長から教えてもらって...。すぐ『理事長!それはSDGsですよ!』となりました。

そういった活動を知って、魚町銀天街にはそういうマインドというか、SDGsにも前向きな土壌があるんだと嬉しくなって。それで、商店街の理事会にも協力してもらって、『SDGs商店街』を宣言する運びとなったんです」(森川さん)
魚町銀天街のシンボルともいえるエコルーフ。太陽光発電パネルが見える
魚町銀天街のシンボルともいえるエコルーフ。太陽光発電パネルが見える

森川さんがエコルーフの存在に気付いたのは18年6月のこと。その翌月にはSDGsをゲーム感覚で学べるイベントを商店街で実施。そして8月、魚町銀天街は「SDGs商店街」になることを宣言する。

魚町銀天街が内閣総理大臣賞を受賞するのは、その一年半後のことだ。

「SDGsは無意味」と言っていた人が...

とはいえ、商店街の人たちの反応は、最初は芳しくなかったという。「いい取り組みだねっていうのはみんな分かってくれるんですが、『それって世界の課題だよね』とか『横文字で難しい』といった声が多かったんです」(森川さん)。

そういった他人事のようなリアクションが、セミナーやイベントなどの活動を続ける中で徐々に変わっていったという。例えば、「SDGsなんてやって何の意味がなるんだ」と否定的だった人が、気づけば周りにSDGsの魅力を伝える立場になっていた、などだ。

そうした変化については、商店街の理事を務める松永優子さんも、次のように話す。

「目に見えるような大きな変化とは別に、商店街の皆さんの意識が少しずつ変わっていったことは実感しています。最初はシャイというか、みなさん色々と取り組みをやっているんだけど、それをアピールしようとしなかったというか...(笑い)」

実際、森川さんや松永さんらが働きかけることで、SDGsのロゴをデザインした看板を店頭に置いてくれる店も増えてきたという。

「やっぱり、魚町銀天街で(SDGsの)認知度は高くなっていると思います。とくに、ほかの地域に行って話をすると、意識の違いに驚くことがあります。そうしたときに、うちの商店街ではSDGsが浸透しているんだなあと、改めて思いますね」
森川さん(左)と松永さん(右)。2人で協力してプロジェクトを進めることも多い
森川さん(左)と松永さん(右)。2人で協力してプロジェクトを進めることも多い

魚町銀天街の人々の意識の変化について、森川さんがとくに感動したエピソードがあるという。

「最初は、こちらから一方的に提案することがほとんどでした。でもある時、商店街の人たち自発的に意見が出たんですよ。ラグビーのウェールズ代表を応援する懸垂幕(※)について、W杯が終わったら破棄になってしまうんじゃないか。それはもったいないという声です」

(※)19年のラグビーW杯で、北九州市はウェールズ代表の事前キャンプ地となっていた。その縁から、魚町銀天街にもウェールズ代表を応援する懸垂幕がW杯の期間中に飾られた。

「それをきっかけに、W杯が終わったらどうしようかという議論が進んで、最終的には懸垂幕を再利用してエコバッグを作ろうと決まりました。このとき、私1人じゃなくて、魚町銀天街のみんなで一緒に歩いているんだと実感しました。本当の『SDGs商店街』になってきたって」

魚町銀天街をモデルケースに

SDGs商店街の取り組みを始めて、魚町銀天街は何が変わったのか。

森川さんと松永さんに聞くと、人通りなど活気が増えたという印象はあまりないという。ただ、旅行会社から「社会科見学や修学旅行の場所にしたい」という提案があったり、これまではなかった外部とのつながりが増えたりしているそうだ。

これまでに紹介したほかにも、商店街にはSDGs関連の掲示がいくつもあった
これまでに紹介したほかにも、商店街にはSDGs関連の掲示がいくつもあった

それとは別に、2人が挙げたのは、商店街の人たちの「意識の変化」だ。

確かに、これまで取材してきた魚町銀天街の人達は、SDGsを身近なものとして捉えている印象が強かった。そうした姿について、森川さんは「そこが一番大事なところなんですよ」として、次のように話す。

「皆さんが当たり前だと思ってやっていることを、『それもSDGsなんだよ』だと気づいてもらうこと。実は、日本でのSDGs普及で最大のハードルがそこなんです。世界の課題を『自分ごと』として捉えられないというか。

でも、魚町銀天街ではSDGsが身近なことだと気づいている人が増えています。要するに、一番難しいところがクリアできているんです。さらに言えば、SDGsを『自分ごと』としたうえで、地元の皆さんから自発的なアイデアが出てくる段階まで来ています。

そういった魚町銀天街の姿は、ほかの地域にとっても素晴らしいモデルケースになると思います」

<企画編集:Jタウンネット>

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