「田舎暮らし」に憧れる全人類に教えたい あなたの夢、鳥取・湯梨浜町ならきっと叶います
鳥取県中央部に位置し、日本海に面した湯梨浜(ゆりはま)という町をご存知だろうか。
「鳥取県=砂丘、スタバ」
と浅知恵は絞り出せたものの、関東出身のI記者の辞書に「湯梨浜町」は登録されていなかった。
羽合町・東郷町・泊村が04年10月に合併し誕生した湯梨浜町。人口わずか1万6550人(2015年国勢調査)の小さな町だが、なんでも2015年から18年の4年間で、移住者を700人以上増やしているという。
いったい、なぜだろうか――。
そんな疑問を抱いていた記者に、うってつけの話が舞い込んだ。湯梨浜町で行われる移住体験ツアーに参加できるというのだ。19年11月8日、9日に実施された「ゆりはま巡りツアー~生涯活躍のまち~」である。
実際に湯梨浜への移住を考えている参加者と共に現地をめぐりながら、小さなこの町が移住先として人気を集める理由を探ってきた。
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鳥取砂丘コナン空港を出発し、道中で因幡の兎で有名な白兎海岸や神社を横目に海岸線をバスにゆられること約30分。
「ようこそ湯梨浜町へ!!」
とツアー参加者を迎えてくれたのは、湯梨浜町みらい創造室の谷岡雅也係長だ。
昼過ぎに到着した記者の腹はペコペコ。地元の人が集まる「多世代交流センターゆるりん館」(18年11月オープン)で、参加者とともにひとまず腹を満たすことに。
へ、ヘルシーだな...。聞くと、健康機器メーカー「タニタ」のグループ会社「タニタヘルスリンク」の監修を受けたメニューだという。
野菜中心のシンプルな定食。しかしブロッコリーやニンジン、カボチャから素材の味がする。毎日ドレッシングをダラダラかけている記者の生活とはかけ離れている。これで1食500キロカロリー程度なのだから驚きだ。あっという間に完食。
湯梨浜町はタニタヘルスリンクと提携していて、ゆるりん館など複数の施設で、同社が監修したメニューが食べられるという。
普段からゆるりん館をよく利用するというおばあちゃんは、
「ここ(ゆるりん館)に来ると、友達が集まっているし、マルシェ(館内スーパー)もあるから助かっています」
と話す。さらに施設外には足湯も併設され、憩いの場として機能しているようだ。
「今までは地域で交流できる場所がなかったんです。おじいちゃんやおばあちゃんのみならず、中高生も学校が終わった後に、勉強をしたり、おしゃべりしたり...。みなさん自由に楽しく過ごしています」
と話すのは、ゆるりん館を運営する会社「湯梨浜まちづくり」の社員で移住コーディネーターの齋尾美幸さんだ。湯梨浜まちづくりは併設している「総合相談センターどれみ」(18年4月オープン)も運営しており、観光・仕事・健康・移住の相談窓口を受け持っているという。
移住を考えている人の相談を実際に受けもつ齋尾さん。
「湯地浜町の暮らしぶりについて聞いてみたいです」 「空き家、住宅情報を聞きたいです」 「移住後の仕事について知りたいです」
など、移住希望の相談は絶えないという。
「仕事に関しては、一番近い県立ハローワークが倉吉市(県中部の中心地)にありますので、月に1回、県立ハローワークの職員に来ていただき、個別に相談していただいています。みなさん、湯梨浜町のゆったりとした雰囲気や自然の魅力を感じられていると思いますよ」
移住希望者にはヒアリングを行い、湯梨浜町の物件や買い物環境、病院やこども園の様子を一緒に同行しながら確認するという。
このツアーに参加した子連れの男性は、
「海外暮らしが長く、子どもに故郷をつくってあげたいんです」
と参加理由を話す。湯地浜町には、地元食材の他、子育て制度も充実し、認定こども園・保育園は8か所ある。小・中・高等学校は5か所。安心して子育てや仕事に打ち込むことができるのだ。
続いて向かったのは、地元の農園での農業体験ボランティアだ。
なぜ湯梨浜町にIターンを決めたの?
「地元の人や移住してきた人に助けられました」
と話すのは湯梨浜町に移住して15年目の樋口農園代表の樋口浩司さんだ。
現在48歳の樋口さんは、33歳の時に東京都から湯梨浜町にIターンしたという。就職氷河期だった当時を思い出しながら話を進める。
「親戚が鳥取市や(湯梨浜)町内にもいます。親の親戚のつながりで、湯梨浜に来て15年が経ちます。 以前務めていた会社がなくなって、『骨休めに』という気持ちで来ました。最初の1年位はハーブや野菜を作り、そうしていたら農協や役場の人から農業をしてみませんかと誘いがありました。ぶっちゃけて言うと、何も考えずに『じゃあしてみようかな』って」
と笑いながら話す樋口さんは、周囲の人の手助けともに、農家という選択を取ったのだ。
そんな樋口さんは、メロンも栽培しているという。右下の写真は販売しているメロンアイスだ。メロンそのものの作り方は、農家の人から教わり、ビニールハウスの補修の仕方も同時に教えてもらったという。移住して、職を見つけ、日々を満喫している樋口さん。湯梨浜町で何よりも好きなのは、自然だと話す。
「もともと海や山が好きでした。八王子(東京都)にいたときは3~4時間かけて海を見に行ったり山を登ったりしていたのが、(湯梨浜町に住んでいると)10~15分でいけますし、山も1時間以内で行けるので楽しいです。泊エリアの海でシュノーケリングもします。でも実は温泉があることが1番。(仕事を)続けられるのは温泉があるからです。夏は暑くなったら不動滝や今滝へ涼みに行くことができますし!」
仕事も私生活も順風満帆の樋口さん。湯梨浜町の人の温かさも感じているという。
「もともと湯梨浜に来たときに、岡山や広島から移住して来た人や関東から来る人も多く、馴染みやすかったです。自然や田舎が好きな人にはおすすめです。繁華街を求めるようでしたら...。人よりキジなどの動物のほうが多いですよ(笑)」
と冗談めかした樋口さんの表情は明るかった。
「グラウンド・ゴルフ」発祥の地で一汗!
樋口さんも言うように、湯梨浜町は自然が溢れている。そのなかでも日本海に面し、魚釣りやマリンスポーツも楽しまれている泊エリアで「グラウンド・ゴルフ」を行った。
ルールは簡単で専用のクラブとカラフルなボールを、ホールポストと呼ばれる輪の中に入れるだけ。
プレイした「潮風の丘とまり」は、国際大会も開かれ、岬コース・アウトコース・インコースの各8ホール3面用意されている。そのうちの岬コースで潮風に吹かれながら参加者とともに一汗かいた。
またツアーでは、フジテレビのドラマ「西遊記」のロケ地としても使用された巨大中国庭園「燕趙園」や 安産の神として崇敬されている「倭文(しとり)神社」へ参拝もした。
文化が混ざる地としての一面も併せ持つ湯梨浜町。倭文神社のツアーガイドを務めた田渕喜之さんも大阪府で小学校の教員を務めた後にIターンをした人物だ。
アクティビティや湯梨浜町の文化や観光を沢山味わった後は、ツアー参加者と一緒に夜ご飯だ。東郷湖に面し、一望することができる国民宿舎第一号の宿「水明荘」で食事の席を囲んだ。
「ゆりはま暮らしお試し住宅」とは
食事で湯梨浜町の魅力を味わった後は、ひとまず寝るだけ...。しかし記者は参加者が泊まる旅館とは別の施設が案内された。
その施設がこちらである。
こちらは、「ゆりはま暮らしお試し住宅」として、移住希望者向けに用意されている「まつざき屋」である。
一階建ての1LDK。広々とした空間で夜を過ごすことができた。冷暖房設備でテレビや冷蔵庫、オーブンレンジに炊飯器まで完備。おまけに調理器具や食器も用意されているのだから、もう自宅気分だった。
お試し住宅は、町内にもう一軒「もりた屋」という2階建て10DKの戸建もある。どちらも最低3日から最長1か月利用可能で、料金は2泊3日で6090円(光熱・水道費は別途一日300円)と格安である。
住むもよし、食べるもよしの湯梨浜町。ツアーの最後には分譲住宅がひしめく「レークサイド・ヴィレッジゆりはま」を見学することに。
湯地浜を移住先にどうですか?
東郷湖のほとりにある旧ホテル跡地に戸建てや集合住宅、ショッピング商業施設が建設予定だ。名前は「レークサイド・ヴィレッジゆりはま」。役場まで約2.5キロメートル、近隣の学校や病院などが約4キロメートル圏内と、子育ても福祉も安心な環境である。
レークサイド・ヴィレッジは、湯梨浜町が掲げる「生涯活躍のまち(CCRC)」構想の一環として生まれたもの。ヴィレッジ内には福祉施設も建設される予定で、若者から年配層まで、広い世代の定住を促すコンセプトがあるという。
まだ土地しかないが、湯梨浜町みらい創造室の遠藤秀光室長曰く「土地整備は来年の1月頃完成予定。2月から順次家が建っていく」という。
遠藤室長も、
「魅力を沢山感じてもらって、やっぱり長く住んでもらうことが大事です」
と笑顔で述べた。
ツアーを振り返ると、ご飯を食べて、農業という仕事に触れ、住居で暮らしの体験をした。
関東と比べると驚くほどに人が少なく、のどかで静か。
「田舎暮らしにあこがれているんです。釣りやキャンプが好きで、住みたいところの兼ね合いで、移住するのであれば以前も旅行先で訪れていた場所かなって思っています。移住をしたら、そこで味わった魅力を私自身もSNSで発信していきたいです」
大阪府で仕事をする参加者の30代男性がツアー最後に述べた。どうやら満喫したようだ。
湯梨浜ってどこ?と聞かれたら、自信をもって、詳細を話すことが出来るようになったと思う。一度訪れ、見てみると、知ることは沢山ある。読者の中に、「移住」を考えている人がいたら是非どうだろうか。
<企画編集:Jタウンネット>