ハマの風俗街...癒しを求め集う客 アットホームな大衆中華、曙町「錦珍樓」
一般に「風俗街」と呼ばれる街に住み、働く人々は、その土地でどんな食事をしているのだろうか。前回は日本屈指のソープランド街として知られる東京・吉原を調査し、出前を中心に利用される「焼肉 晃(てる)」を紹介した。
今回は少し足を延ばして、横浜・曙町を訪れた。

吉原とは一線を画す独特の空気感をもった曙町では、どんなグルメが親しまれているのか。
ご飯が進む絶品炒めもの
曙町はかなり独特の区画で、国道16号線を沿いに縦に細長い地域だ。2018年12月8日、この16号線を車で走った記者は、艶やかな光が少し目に入ったところで駐車場に入った。
ここはソープランドではなく、ファッションヘルスが多い地域。1店が1つの建物を所有している訳ではないので、吉原と比べれば少し狭さを感じる。しかし、1つの建物に複数のファッションヘルスが同居しているため、単純に店舗数だけで考えれば引けを取らない。
こうした風俗店が乱立するすぐ近くには、イセザキモールがある。「街の並木に潮風吹けば」なんて歌手・青江三奈さんの「伊勢佐木町ブルース」が脳内で鳴り響く街だ。

あの歌のようにダークブルーな雰囲気が漂うのは、変わった位置関係がそうさせているのかもしれない。
目と鼻の先にあるファッショヘルスからリサーチしていく。前回とは異なって因縁を付けられる、怒鳴られるなど物騒な気配は控えめで、
「ごめんね~ 暇そうだけど仕事中なんで」
「Jタウン? 俺もそこで書いてたよ。同業なら悪いけどごめんね」
「遊んでくれたら教えるよ。一発どう?」
といった具合。断られるにしても、どこか気分が良い茶目っ気あふれるフレーズだ。
それじゃダメじゃん春風亭昇太です。これではここに来た意味がない。前回の吉原同様に格安店の類ならいけるかもとまた根拠のないことを考えてある風俗店に入った。
フロントに4人の中年のボーイさんがいて、聞くとチェーン店も含めて5店舗を挙げてもらった。最初からここへ来ればよかった。
吉原では基本的に出前しかないとのことだったが、ここでは逆に出前は使わず直接店舗に出向くとのこと。近くにイセザキモールがあるおかげか、ある1件の中華料理屋に目が留まった。
再び商店街に戻り、その店に向かうと香ばしさが漂ってくる。

今回訪れたのは、横浜市営地下鉄ブルーライン阪東橋駅にも近い「錦珍樓(キンチンロウ)」だ。土曜日の20時前後とあってお客さんも多かったが、運よく待たずに入れた。
中華料理のファミリーレストランのような雰囲気で、4人席のほかにもカウンターもいくつかある。家庭的な雰囲気が印象的だ。
今回は定食の中から、「じゃがいもと豚肉の炒めもの」をチョイスした。

薄く切られたじゃがいもと人参。そしてピーマンと豚肉が入った一品だ。少しだけ辛みが舌を刺すが、濃厚な塩味も相まって箸が止まらない。

中々火の通らないじゃがいもだが、薄く切られているため柔らかく、タレがしみている。
ザーサイの酸味も手伝って飽きる間もなく食べきった。

卵スープのようだが、口に入れると豆腐の硬く落ち着いた味が口を駆け抜ける。油で少し重くなった感覚を柔らかく解きほぐしてくれた。
ビールを楽しむ中年男性や家族団らんを楽しむ家族。客層は様々だが、店内は笑顔に包まれている。
そして気を遣う仕事で疲れた風俗店のボーイさんも同様にここで癒しを求め、明日への意欲を高めているのかもしれない。
21時30分過ぎ。軽くあしらわれたファッションヘルスの店の眩しいライトを横目に次の場所へと移動した。
(Jタウンネット編集部 大山雄也)