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埼玉名物「政財界人チャリティ歌謡祭」の舞台裏 生粋の埼玉県人が、念願の収録に参加してきた

Jタウンネット編集部

Jタウンネット編集部

2019.01.01 22:00
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埼玉県の名だたる政財界人が、その美声をテレビで披露する――。毎年恒例の「埼玉政財界人チャリティ歌謡祭」が2019年1月1日、テレビ埼玉(テレ玉)で放送された。

埼玉政財界人チャリティ歌謡祭のチケット
埼玉政財界人チャリティ歌謡祭のチケット

埼玉文化振興基金へのチャリティを目的に開催されるこのイベントは今年で28回目。埼玉ローカルの番組なのになぜか放送後、ツイッターを通じて全国的な話題になる。もっとも埼玉県民の筆者も毎年欠かさず視聴しているのだが、今年は一歩飛び出して番組収録に参加してみた。

プロのライブではありえない光景が

番組の収録が行われたのは放送の約1か月前の2018年11月24日、場所はデヴィッド・ボウイさんや山下達郎さん、桑田佳祐さんら著名なミュージシャンがコンサートを行った大宮ソニックシティ大ホールだ。

大宮ソニックシティホール外観
大宮ソニックシティホール外観

この日、15時からの開場であったが14時30分には観覧客でホール前はごった返していた。高齢者やスーツ姿のサラリーマンらしき男性が中心で中には法被を着ている者もいた。この観覧客の多くは出場者の「応援」のために駆けつけている。

サイリウムの使用やうちわでアイドル歌手顔負けの声援を送る姿はチャリティ歌謡祭には欠かせない存在だ。

出場者は必ずしも県の中心であるさいたま市の企業や自治体とは限らない。そのため県北からの応援のためにマイクロバスを貸し切ってこのホールに駆けつける姿も見られる。それもそのはず、出場者が関わる企業や自治体にとってはPRの絶好のチャンスだ。多くの人員を擁して応援を行えば存在感が増すことに繋がる。

ホールの案内掲示板
ホールの案内掲示板

今か今かと開場を待ちわびる人は屋内のフロアを飛び出して外にまで到達。入り口に作られる列もまるでグループサウンズ全盛期の人気ぶりを伝えるニュース映像のよう。思わず筆者も呆気に取られてしまった。

会場に入ると当日のプログラムが手渡され、埼玉文化振興基金への協力を呼びかける声が響き渡る。

募金活動の様子
募金活動の様子

ホワイエでは応援用の旗や看板の準備を行う団体も少なくない。

席に着くと、各団体がすぐ看板等を出せるように段取りが行われていた。そして15時30分、埼玉の年初めを飾る恒例行事が幕開けした。

魅力あふれるステージ

ここから先はテレ玉との約束で写真撮影はなし。文字だけのダイジェストでお伝えする。

開演に先立って、放送日のお知らせと1月1日の放送のためお正月モードでの観覧を呼び掛けられた。

スタートと共に登場したのは元NHKアナウンサーの堀尾正明さんとテレ玉アナウンサーの荒木優里さんだ。タイトルコールと演奏を担う岡宏&クリアトーンズ・オーケストラの紹介が行われ、トップバッターが登場する直前で一旦収録がストップした。

ここで瞬く間に準備が行われる。この間、堀尾さんによる軽妙なトークもあり、テレビマンの早業とアナウンサーの巧みな話術が合致して一切のスキがない。通常のスタジオではなく、大きなホールでの収録でこの手際の良さ。28回の歴史を感じさせる一幕だ。

この後も3組ごとを目安にカットが入れられた。これらがお正月には綺麗に編集されているのだから驚いてしまう。

トップバッターは東京ガス埼玉支社の阿久根謙司支社長が飾った。ステージ向かって右側にはお馴染みの応援チームも登壇し、サザンオールスターズ「東京VICTORY」が披露された。

本家サザンオールスターズに負けず劣らずフラッグパフォーマンスをバックに歌い上げた。社員だけでなく東京ガスのキャラクター「電パッチョ」も加えたにぎやかなステージ。歌い手以外の社員や自治体の職員らが行うこうしたパフォーマンスはチャリティ歌謡祭で最も重要な要素のひとつだ。

曲が終わるとステージ左のスペースに登壇者たちが寄せられる。ここで繰り広げられるトークも見どころだ。

「社員のAKBとジャニーズを集めました」

と阿久根支社長のジョークにすかさず堀尾さんがツッコミを入れる。鋭くも温かいツッコミは少々カタくなりがちな出場者をほぐし、視聴者も飽きさせないのだ。

このトークの間に次の準備が行われ。次の出場者は暗転しているメインステージ中央に待機。サイドステージも次の出場者の企業や自治体の関係者に変わる。

前の出場者は左でトークを行っているため、こうした準備の過程はカメラに入り込まないようにしている。

そして、トークが終わりステージ裏に前の出場者が戻る。番組と同じテンポで間髪を空けずに場面が進められる。こうして視点を変えると、ステージセットの配置まで考えられているのだ。テレ玉の本気ぶりがうかがえる。

この後も手際よくステージは進行していく。今回、休憩を除いても3時間を超える長丁場になる。そのため、応援する目当ての人になったら登場して、終わったら帰る。そんな人の姿もちらほらと見かけた。

3人目が終わって、一旦カットが入る。しかし、テレ玉の関係者の動きは機敏で、トイレ休憩の間もなくステージは再開する。

こうして4人目の戸田市の菅原文仁市長のパートへと入った。菅原市長は9歳から12歳まで児童で構成される市内のダンスサークルの子どもたちと登場。年齢層が少し高い会場のせいか、子どもが登場すると受けが良い。自分の自治体や企業でなくとも観覧に熱が入る。

子どもが登場するのは10人目の深谷市の小島進市長でも同様であったが、まだあどけない幼稚園児の頑張る姿に心打たれた大人たちが続出しているように見えた。

ここまでの組を観ていると応援とはいえ座りの姿勢が基本だとのことに気づく。後ろ人への配慮から生まれた風習なのだろうか。体の代わりにサイリウムを立たせて光でアピールした。

応援する人だけではない。テレビマンたちも同様で、ステージに目を奪われていると知らない間に近くにカメラマンが近くにいるのもザラだ。一人一人の気遣いは生で観覧するからこそわかる部分かもしれない。

15分の休憩を挟んで観覧客も関係者も全員でリフレッシュ。後半のパフォーマンスに備えた。

筆者の座席の前のブロックにいたのは12人目、川口市の奥ノ木信夫市長の応援団だ。その気合いはすごいもので、サイリウムを応援に訪れた観覧客に手渡し、市長の顔が印刷されたアイドル風うちわが用意されるほどだ。大声援を受けて奥ノ木市長は吉田拓郎さんの「人生を語らず」を歌いきった。

イベントは進行して14人目。川越観光でお馴染みのイーグルバスの谷島賢社長によるAKB48の「365日の飛行機」が披露された。実は開演前、イーグルバスの応援看板を撮影させてもらったため、看板がどのように使われるか気になっていた。

開演前に撮影したイーグルバスの看板の一部
開演前に撮影したイーグルバスの看板の一部

かなり大型の看板だったがこれはサイドステージ用。シンプルな看板はテレビでの映りも良さそうだ。

ここからは大物ぞろい、15人目はさいたま市の清水勇人市長。16人目は民間から最後の出演者となるのは唯一の28回フル出場。歌唱力はイベント随一と評判を呼ぶ、清水園の清水志摩子社長のカルメン「ハバネラ」。なんと劇団四季の俳優と共にパフォーマンスを行うレベルの高さ。

大宮ソニックシティではスケールが足りないと思ってしまうほどの圧倒的な声量と技。「プロを身代わりにしているのでは」と疑うのも無理はないほどの「絶唱」で拍手を浴びた。

ラスト17人目は清水園の着物を着用しているという上田清司知事による三橋美智也さんの「武田節」。選挙があるとチャリティ歌謡祭のトリとしてふさわしいかも県民は見るとのうわさが立つほど大切な場面。

上田知事は例年、チャリティ歌謡祭への並々ならぬ情熱を傾けるがあまりハプニングが起きていたが、今年は見事ノートラブルで終わりこの日一番の拍手喝采で迎えられた。

この後、山川豊さんが「アメリカ橋」など4曲を歌ったほか、基金の贈呈も行われた。最後はオールキャストで「一月一日」の合唱で幕を閉じた。

会場を出ると大型バスがホール横の通りにずらりと並ぶ光景が待ち受けていた。広い埼玉県、県内と言え県北など遠方からの出場者もいる。そうした人の応援のために用意されているようだ。

こうした喧騒もあり、始まる前から終わった後もお祭り騒ぎの空間だった。

海外からも問い合わせが

Jタウンネット編集部は収録終了から1か月後の12月27日、テレ玉の営業部営業局の担当者に書面を通じて取材を行った。

28回目を迎える埼玉政財界人チャリティ歌謡祭。28回の長きにわたり続く秘訣を聞いた。

「チャリティの趣旨に賛同して、参加出演いただいている各自治体の首長や財界の皆様のおかげです」

参加するすべての人の慈愛によって成り立つイベント。だからこそ、画面を通じてハートフルな雰囲気が伝わってくるのかもしれない。

とはいえ、チャリティの形は様々だ。そもそも何故、この番組が始まったのか。

「当時の当社社長に県内有力な財界の方たちから、こういった番組をやりたい!という要望があったのがきっかけです」

こうして28年の伝統を持つイベントになった。その中でも外せないのが、2~3年前から起こり始めたツイッターでの盛り上がりだ。ツイッターのトレンドでは上位に食い込み、海外からの反応もある。

「英語・フランス語のツイートもあるなか、アラビア文字のものもちらほら」

埼玉ローカルながら大きな注目を集めるイベント。テレ玉にとって一番大きなコンテンツなのかを聞くと、

「テレ玉にとって、年始を飾る重要なコンテンツです」

との回答だ。しかし、テレ玉だけではない。筆者のような埼玉県民にとっても大事な行事だ。

最後に時期相応な気もするが、次回への意気込みを聞くと、

「年明けより次回の準備を進めます!」

埼玉県の1年は埼玉政財界人チャリティ歌謡祭から始まる。そこには様々な人の協力と頑張りがあることを改めて実感した取材だった。

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