心も体も「サザン愛」にどっぷり 鶴見「スキップビート」、マニア集う粋な店
マスターの美声も魅力だ
スキップビートはJRと京急が通る鶴見駅から徒歩15分。本町通商店街の中に店を構える。商店街がシャッターだらけになった20時からがスキップビートの本番。筆者が訪れたのが祝日の夜だったのもあり、店内はファンで大盛況だった。
飲み放題プランしかないため、事前に精算する。この時に顔合わせたのが、噂のマスターである山本英徳さん。スーツ姿にリーゼント、男らしいがっちりとした風貌。テディーボーイのようだが、筋金入りのサザンファンだ。
せっかくの大盛況だったので、彼へのインタビューより先に店の雰囲気を体感させてもらった。
まず目に入るのはファンが集まる店に相応しい、数々のサザングッズ。実はこれ、店の常連客の所有物で定期的に入れ替えられている。
タイアップ広告のポスターなど、ファンにとってはたまらない品々が並んでいる。これらをバックに客はそれぞれサザンや桑田佳祐さんの名曲を歌い上げていく。
さすがはファンが集まる店だけあって、本家のコンサートでも滅多に歌われない曲や全編英語の歌詞の楽曲などマニアックな楽曲が次々と予約に入る。しかし、メジャーなヒット曲だからと視線が冷たくなることはない。
例えば「東京VICTORY」といったヒットシングルでは歌い手そっちのけで客が振り付けを迷わず踊り、かけ声もあればシャウトする。最初は溶け込めるか不安であっても、ウエルカムに接してくれる人ばかりだ。
お祭り状態のカラオケの横でテーブル席に集まりお酒を交える若者のグループがいた。2019年の開催がアナウンスされているサザンのツアーについて演出の予想や日程などを語らい、期待に胸を膨らませている。別のグループは過去のコンサートの曲目について話し、笑い合っていた。とても筆者にはついていけない話題で、同意を求められても頷く一方だ。
言いたい放題やり放題、普段できないコアなワンナイトを思う存分に楽しんでいる。
この日訪れた人にインタビューを行った。質問は「この店の魅力とは」。
千葉県の20代会社員の男性は、
「色々な世代が集まるから、様々な世代のサザンの話が聞ける」
そして神奈川県の20代女性。彼女は開店時からの常連だといい、その上で、
「マスター」
と端的に回答してくれた。
その山本さんは客のリクエストに応じて自らが歌うこともある。この日はKUWATA BANDの「MERRY X'MAS IN SUMMER」を熱唱。重厚かつキレのある歌声で店内はこの一番の大騒ぎ。歌でも魅せる粋で優しいサービスだ。この日は桑田さんが提供した中村雅俊さんのヒット曲「恋人も濡れる街角」も歌唱。文字通り店内はマスターの思うまま。思わずチークダンスを踊ってしまいたくなる甘美な雰囲気に変えてしまった。
マイク置いた山本さんはカウンターから優しく慈愛に溢れた視線で客を見守っている。時折、客との談笑もしながら、宴は閉店まで続いた。