「尻こすり坂」に体育座りをして、尻をこすりつけてみた
「尻こすり坂」と聞いて、どのような坂か想像がつくだろうか。
尻こすり坂があるのは、神奈川県横浜市西区の西戸部町~藤棚町間と、横須賀市の久里浜~野比尻間周辺の2か所。このうち、横須賀市にある標識を撮影した写真が、2018年8月下旬ごろにツイッター上で人々の関心を引き寄せた。
横浜市と横須賀市の2つ
「尻こすり坂」の由来について、横浜市西区のサイトによると次のように説明されている。
「野毛と西谷を結ぶ水道道は、坂の多いヨコハマの中でも屈指の急坂をいくつか越えなければならない。なにしろ勾配が急なので、車をひく人たちがお尻で制動しなければならなかった」
つまり、お尻で押さないといけないほど急な坂だったという。ここで示されている「水道道」とは、横浜市西区にある尻こすり坂の正式名称だ。
どれほど険しい坂道なのか......。以前、Jタウンネットで「千代田区に5つある『幽霊坂』をめぐってきた」で実際に行ってみた記者。今回も上記の2か所を求め歩いてきた。まずはツイッターで話題を呼んだ久里浜の方からお伝えしたい。
長いが、険しい上り坂は車道にはなかった
京急久里浜駅(横須賀市)を東方面へ歩くこと5分。久里浜交差点に差し掛かる。ここから野比駅入口交差点までのおよそ3キロの道のりに、以下のような尻こすり坂の標識が点在し、尻こすり坂が続いていることがわかる。
国道134号線を、三浦海岸(三浦市)がある南西方面へ一直線。神明中学校(横須賀市)までは平坦な道が続き、歩道橋を通過したあたりから、上り坂は始まった。
尻をこするほど険しい坂とはどの程度なのか......と想像力を巡らせていた記者。だが全体的に、「長いがそこまで傾斜はない」というのが正直な感想であった。
道中で見かけた標識によると、標高は最高で45.2メートル(野比4丁目3番1号付近)。見つけた尻こすり坂の記念碑には、
「裏手の山を登ると牛頭観音の碑が建っているところがあり、当時の山道らしいふみ固められた跡がある。ここから下を見るといかに急坂であったかが想像できる」
との記述がある。山道には行かなかったが、入り口から垣間見えた坂は確かに険しい。山を切り開く以前は尻で押さないと荷車を運べなかったのだろう、と思いを馳せた。
「壁か?」
横浜市の尻こすり坂があるのは、野毛山排水池から相鉄線・西横浜駅(横浜市西区)などがある、相模原市方面へ北西へと延びる道だ。
京急線・日ノ出町駅(西区)を西へ10分ほど歩くと、野毛山動物園(横浜市西区)がある。同動物園を右手に見た時、写真のような下り坂は尻こすり坂の一部分だ。
上記写真の坂を少し下ったところには、次のように由来が記述されている案内板が立っている。
「野毛山に近いこのあたりの坂は、あまりの急な勾配に荷車を引く人達がお尻で車を押さえながら下っていたことからいつしか『尻こすり坂』と呼ばれるようになった」
最大斜度は階段が併設されている区間で13度あまりだという。
案内板を通過すると、上り坂が。
「壁か?」。
思わず1人で苦笑しそうになるほどの傾斜面が待ち構えていた。
坂を見ていると自動車が下ってきた。ブレーキペダルを踏んだり離したりを繰り返しているのだろう、下る自動車は一様に慎重だった。
一方、上る自動車はアクセルブレーキを踏み付ける。
「ブオォォォー」。
加速のエンジン音が耳に響いた。
案内板には最大13度という記述があったが、坂の頂上付近にあった標識には17度と表示されていた。
さて登り切った...と思いきや、これだけで終わらない。この後、もう1つ上り坂が。 下り坂に入り、八百屋やコインランドリーを通過すると、
再び「ヤツ」が姿を現した。
またか....と思いながらも上りきると、なんと「峠の茶屋」と書かれた飲食店の看板が。店主は狙ってこの名前を付けたのだろうか...。
店を通過し、下り坂へ。藤棚町交差点に行きあたったところで、奥を見てみるとこれ以上坂はなさそうだと判断し、来た道へと踵を返した。
横浜駅から京急久里浜駅までは、40分ほど。近いか遠いか判断するのは読者の方々に任せるが、ハシゴしてみたいと思う方は是非。上記2か所の移動、写真撮影、メモ記入するなどで4時間ほどかかったが、興味のある方は訪れてみてはいかがだろう。