北九州市役所の人について行ったら、5000円で「小倉の夜」を満喫できました
楽しい夜には、厳しい朝がつきものだ――。
冒頭から、お見苦しい画像で申し訳ない。これは朝5時34分、JタウンネットK編集長が、福岡県北九州市内のホテルで行った「自撮り」だ。
写真はボケボケ、髪はくりんくりん。むくんだ顔で目を細め、まったく「インスタ映え」の対極にある――。そう、Kは小倉の夜を楽しんだ後、ホテルで熟睡。トイレに行くとき、おもむろに寝ぼけ眼で、これを撮影したのだ。(なお、撮ったことも記憶していない)
ここまで飲んだのには、理由がある。北九州には思わず酒が進む、飲んでいて楽しくなるお店がたくさんあるからだ。
豪快な玉ネギサラダに舌鼓
時計の針を元に戻して、夕方16時すぎ。小倉は初めてのK編集長、きょうは北九州市役所のIさん(広報課)とAさん(地方創生推進室)、男性2人にアテンドしてもらう予定だ。
一行は旦過(たんが)市場で買った「カナッペ」をパクつきながら、1軒目の「平尾酒店」へ向かっていた。カナッペは、魚の練り物をパンで包んで揚げたもの。このコショウ風味は、舌とノドを完全に「ビールモード」に変えてくれる。
まず訪れたのは、平尾酒店。酒屋さんの店内で飲める、いわゆる「角打ち(かくうち)」の名店だ。このスタイルを「角打ち」と呼ぶようになったのは、現在の北九州市内が発祥とされる。八幡製鉄所など三交代勤務の労働者が、仕事後に軽く一杯飲めるため、市内各地で広まった。
上品な女将さん(ユカリさん)に迎えられ、冷蔵庫の瓶ビールに手を伸ばした。こちらのお店は、昨秋放送の福岡ローカル番組「福岡人志、」(福岡放送)で、ダウンタウンの松本人志さんが訪れたといい、店内には撮影時の写真が掲げられていた。
ここの名物が、ソーセージ玉ネギサラダ(200円)。魚肉ソーセージとツナの上に、大量のオニオンスライスを盛り、その上からマヨネーズと酢、そして一味唐辛子をこれでもかと振りかける。女将さんの豪快な盛り付けを見て、「どれだけ濃い味になるんだ?」と身構えたが、酸味も、油分も、辛味も、ちょうどいい。
もうすぐ18時、そろそろ次の店へ行こう。瓶ビールと冷やっこを各自1つずつ、サラダをわけあって、ひとりあたり500円台だった。
約400年前、小倉でワインが作られていた?
2軒目は「Ken's Wine(ケンズワイン)」。その名の通り、ワインを楽しめる角打ちだ。実は、小倉周辺には「日本最古のワイン生産地説」がある。江戸時代初期、当時の小倉藩主・細川忠利が生産を命じたとの古文書が近年見つかり、研究が進められているのだ。
この店のマスター、小川研次さんは「小倉藩葡萄酒研究会」の一員として、当時の製法を再現したワインづくりに向けて奮闘している。小川さんのお話に耳を傾けつつ、約400年前に思いを馳せる。当時はヤマブドウで作っていたようだが、この日はブドウの赤ワインで乾杯した。各自1杯500円ずつ。
興味深い話は、すぐ時間を忘れてしまう。そろそろ次に行かなきゃ。
小倉の味「ぬか炊き」をつまみに
19時ちょっと前。3軒目の「酒房 武蔵」に入った。このあたりから、徐々に記憶が無くなっている。「鰯のぬか炊き」をつまみに、Aさんと2人で語り合う。乾杯はビールだったが、たしかその後、焼酎のお湯割りにした気がする。
ぬか炊きは、お店によって「じんだ煮」とも呼ばれる小倉名物だ。骨もそのまま残っているが、じっくり煮込まれているので、ホクホクの食感だ。生姜と一緒に、ちょっと食べてはビールをゴクリ。青魚だが、ぬかの効果か、まったく臭みはない。つまみも良いけど、〆のお茶漬けにしてもウマそうだ。
それにしても、お酒の力は不思議だ。最初は「ほぼ初対面の市職員、しかも年上の人と、何時間も飲むなんて......」なんて及び腰だったのだが、杯を重ねるごとに、より語り合いたくなる。出身地から互いの業界まで、ありとあらゆる話題で盛りあがる。
これまで2軒は角打ちだったが、ここは大衆酒場といった趣だ。そろそろ酔いが回ってきて、味の記憶は薄れているが、タコの刺身やポテサラもウマかった(気がする)。1人あたり1800円ちょっと。
「ドキュメント72時間」に出てきたビールサーバー
4軒目は「白頭山」駅前店。20時10分に入店した。ここは、NHKの人気番組「ドキュメント72時間」でも登場したお店で、「100円ビール」が名物。なんと24時間営業だ。
サーバーにグラスをセットして、100円を投入すると、「のどごし樽生」が注ぎこまれる。何回かおかわりしたが、コイン式なので領収書は残っておらず、どれだけ飲んだかは覚えていない。明確に覚えているのは、メニューを眺めて、「ぼく、センマイ刺し大好きなんですよ!」と宣言したことくらいだ。
こちらが「セン刺し」(700円)。向こうに写っているのは、お通しのカクテキ(と思われる)だ。このラインアップからわかるように、もともとは焼肉屋さん。軟骨のから揚げに加えて、ホルモン系の焼き物も注文してみた。
実はAさん、北九州市ではなく、福岡県築上郡の出身だというが、言葉の端々から「北九州への思い入れ」を感じた(どんな話をしたか、よく覚えてないけど)。いつしか呼ばれ方も「Kさん」から「Kちゃん」に変わり、今度は東京で飲もうと約束しあう。
21時49分、白頭山を出る。1人あたり1200円(100円ビールは計算し忘れました、ごめんなさい)。 取材はここまでだったが、「Kちゃん、もう一軒行こう!」「はい、ぜひとも!」。夜はまだまだ、これからだ。ふたりは小倉の街へ消えて行った。
そして、その数時間後――。
これだけハシゴ酒して、4000円台。地元(東京)の居酒屋で飲んだら、1軒ですぐ行ってしまう額だ。しかも、何を食べても美味しい。角打ちは小倉だけじゃなく、門司や折尾など市内各地にある。もっと、北九州の酒場を知りたい。また絶対に来るぞ、と心に誓ったのだった......。Iさん、Aさん、ありがとうございました!<企画編集:Jタウンネット>