「タニタ食堂」も苦戦...東北人の「濃い味」好きって本当? 秋田発のラーメン屋で確かめてみた
塩分控えめ、野菜中心の「身体にやさしい」メニューで人気の「タニタ食堂」。近年の健康食ブームの火付け役として知られ、今でも東京・丸の内の店舗は行列ができるほどの盛況ぶりだ。
しかし、2014年12月に秋田市内でオープンしたばかりの「あきたタニタ食堂」は思ったように客足が伸びず、苦戦を強いられている。
その原因は、秋田県民の「濃い味好き」にあるという――。
年間の塩分摂取量は明らかに東北が高い
秋田をはじめとした東北地方では、伝統的に「濃い味・塩分多め」の食事を好む人が多い。そのため、あきたタニタ食堂のメニューは「味が薄い」と、地元の年配客などから指摘があったそうだ。
厚生労働省が2012年に実施した「国民健康・栄養調査」の結果を見ても、関東北部から東北地方にかけては軒並み食塩の平均摂取量が多い。全国で最も食塩の摂取量が多いのは岩手県で一日平均12グラム。最下位の沖縄(8.65グラム)と比べると、年間で1.2キロもの差になる。秋田県は11.25グラムで、全国で5番目に多い数字となっている。
実は、そんな東北人の「濃い味」嗜好を象徴するようなラーメン店が存在する。それは、秋田県発祥の「末廣ラーメン本舗」だ。タニタ食堂とは正反対の、塩分たっぷりのスープが特徴で、一部では「秋田市民のソウルフード」とも呼ばれる。
東北を中心にチェーン展開を行う同店だが、東京・高田馬場にも分店を構えている。秋田県民の「濃い味好き」の実態を舌でも確かめてみようと、Jタウンネット編集部はさっそく現地へ向かった。
「秋田市民のソウルフード」末廣ラーメンは真っ黒なスープ
高田馬場駅から歩いて5分ほど、学生で賑わう早稲田通りの一角にその店舗はある。レトロな外観が特徴で、のれん脇の看板には「栄養満点・滋養強壮」の文字が躍る。さっそく店内に入り、定番の「中華そば」(700円)と、ハーフサイズの「ヤキメシ(黄身のせ)」(360円)を注文した。
カウンターに座ると、調味料卓の近くに大量のネギがあるのに気づく。このネギは盛り放題で、ラーメンの上に山盛りして食べるのが「末廣流」らしい。となりの客の様子をうかがうと、ちょっと驚くほど大量のネギを投入していた。
待つこと数分、ついに「秋田市民のソウルフード」ともいえる中華そばがやってきた。以下の画像のように、真っ黒なスープと大量の豚バラ肉が目を引く。さっそく一口スープを飲んでみると、確かに味は濃い。
けれども、ただ「しょっぱい」わけではなく、濃厚な豚のダシが醤油ベースのタレに合わさっており、「パンチが効いたウマさ」といった印象だ。
麺はストレートな細麺だが、濃厚なスープに浸ったためか醤油色に変色している。ツルツルっとした麺に、シャキシャキのネギが絡まり、味だけでなく食感も楽しい。使い放題のネギは魅力満点で、濃厚なスープに絡めて食べると、もはやそれだけで一品のおつまみとして通用しそうなおいしさに。
ちなみに、サイドメニューとして注文したヤキメシも、ビックリするほど茶色い。黄金に輝く黄身を混ぜると、半熟状に。醤油の焦げた風味も特徴的な、他に例のないタイプの焼飯だろう。
ただし、この「末廣ラーメン本舗」のルーツは、実は京都の屋台「新福菜館」にある。京都で修業を積んだ先代の店主が、秋田に新しい店を構えるにあたって「東北人の味覚に合うように」味を改良したという。秋田県民の「濃い味好き」に合わせた進化を、タニタ食堂はどう見るか。今後が気になるところだ。