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瀬戸内海の「猫の楽園」青島...たった16人の住民の本音は?

Jタウンネット編集部

Jタウンネット編集部

2015.08.17 17:00
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住民よりも動物の方が多いことが観光地化のきっかけになったスポットは全国各地にある。
100匹以上の猫が住みつき、猫神社まである田代島(宮城県石巻市)や、700匹以上のうさぎが生息する大久野島(広島県竹原市)は広く知られている(参照:大久野島のうさぎに会いに行く前に、「知っておきたい大切なこと」)。ただ、住民が求めたわけでもない観光地化には問題も多いようで。

青島の猫たち(暇・カキコさん撮影、Wikimedia Commonsより)
青島の猫たち(暇・カキコさん撮影、Wikimedia Commonsより)

テレビが取り上げ、YouTubeは126万回再生

愛媛県大洲市の青島も「猫島」として有名だ。同市長浜港の北約13キロの伊予灘にあり、島の周囲は4.2キロ、住民は16人しかいないが、猫は百数十匹もいる。

猫の楽園としてテレビのニュースに度々取り上げられ、YouTubeの動画の中には再生回数126万回を超えたものもある。

Japan's Cat Island - Incredible!(YouTubeより)

ただ、島への渡航手段は1日2便の旅客船「あおしま」(旅客34、乗員3)しかなく、欠航になることも少なくない。島に民宿、商店、自動販売機はなく、市の観光協会の公式サイトにもこれといった情報は載っていない。
にもかかわらず、休日になれば猫目当てに大勢の人が訪れ、外国人の姿もあるという。

にわかに活気づいている青島だが、心から「歓迎する」島民は少いようだ。

大洲市は、2015年7月下旬~8月上旬に、島民でつくる「青島猫を見守る会」と共同で全島民アンケートを実施し、8月12日にその結果を公表した。13日の愛媛新聞オンラインがその内容を報じている。

約8割の13人が「ネコが多すぎる」とし、避妊・去勢手術が必要と回答した。来訪者を「歓迎する」は1人しかなく、「迷惑」と「わからない」が各7人だった。
「困っていること」の自由記述では、「ネコ目当てに観光客やメディアが集まる」「観光客のマナーが悪い」「昔のような静かな島で暮らしたい」などの意見があった一方、「観光客にほどよく来ていただくことは賛成」「一応歓迎するが、勝手に写真を撮る方はやめてもらいたい」などの声もあったという。

猫ブームの陰で少数派の人間にしわ寄せ

青島の猫ブームは住民が売り出したわけではなく、インターネットで人気に火がついた。 来訪者の多くは観光地化されてない点にも青島に魅力を感じているようだ。今のところそれを静かに受け入れている島民だが、観光客がもたらす問題は無視できなくなっている。

2013年に国土交通省がまとめた「青島~長浜航路改善計画」によると、島の生活インフラはすべて、この航路に頼らざるを得ない。生活用水・飲料水、ゴミ、郵便・宅配物、買い物に出かける島民――すべて「あおしま」が運搬している。
海運会社は2013年9月期の時点で大幅な経常赤字だったので、航路を維持するためには、島外の利用者の増加は歓迎すべきことだろうが、高齢者の多い島民の乗船が観光客によって後回しになるようでは本末転倒だろう。

可愛さのあまり猫にエサを与えすぎたり、猫を追いかけて住民のプライバシーゾーンに侵入してしまったりなど、島者の起こす問題が多くなっている。

また、猫の増えすぎは島民の大半が問題視している。近親交配を防ぐ観点からも、猫に避妊手術を施すことが最良の対策だ。しかし市の予算にも限りがある。伝え聞いた動物愛護者・団体の支援の輪が広がり、エサや薬といった支援物資が島に届いているという。

7月30日の愛媛新聞によると、市の市民生活課は「アンケートを尊重しつつ対応を検討したい。」と述べている。行き過ぎた猫ブームが生活や行政を振り回している一コマといえそうだが、猫に罪はないのはいうまでもない。

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