これが現代の「学食」だ! 九州・沖縄フェア開催中の早稲田大学を取材してきた
お手頃価格でボリュームたっぷりのご飯が食べられるキャンパスの学食は、食欲旺盛な大学生にとっては一種の命綱だ。
最近はコンビニめしの台頭も著しいけれど、できたてホヤホヤを食べるならやっぱり食堂が一番。
早稲田大学(東京都新宿区)の生協の食堂は、2015年5月19日から30日まで、九州・沖縄のご当地グルメを特別メニューとして提供している。
料理は、チキン南蛮(税込302円)、ゴーヤチャンプル(同162円)、明太子コロッケ(同108円)、タコライス(同410円)、熊本ラーメン(同410円)の5種類で、相場よりも値段は安い。
4月中旬、同大学構内を歩いていた筆者は、「九州・沖縄フェア」の予告看板を目撃する。後日生協に取材を申し入れたところ、快く取材に応じてくれた。
学生のヘルシー志向に対応
早大の生協食堂は、「大隈ガーデンハウス」こと25号館の中にある。席は2階が400席で、3階が230席。大隈庭園の緑を眺めながらゆったり食事することができる。
筆者が通っていた大学の食堂は、部室のないサークルがテーブルを占拠し、1人では利用しづらい雰囲気があった。しかし1990年に完成したガーデンハウスにその要素は一切ない。25年経った施設とは思えないほどピカピカ。バンカラのイメージとは真逆だった。
筆者は一番人気のタコライスとゴーヤチャンプルを注文した。
最近の学生の健康意識は高い。女子はおろか男子の一部にもダイエットが広まっているという。
そのためメニュー表示にはカロリーやアレルギー物質情報、3群点数、塩分量が明記されている。さらに「学食どっとコープ」には食材の原産地も載っている。
チーズの量が抑え目な分、ピリ辛ソースと肉の旨味、なにより白米のおいしさが引き立つ。並みの外食チェーンでは味わえない美味に驚いた。
バランスの良さが光る一品で、ほどよい満腹感だ。学生は午後の授業に集中できそう。
ゴーヤチャンプルのゴーヤは、みかんの2倍のビタミンCが含まれている。紫外線の強いこの時期、美肌が気になる人にお勧めの料理。
様々なバリエーションのあるゴーヤチャンプルだが、一つ一つの具材がはっきりしている。玉子とハムが存在感を出していて、ゴーヤの苦みは最低限残っている程度。万人受けするヘルシー料理といったところ。
東日本の大学の生協が共同開催
早稲田大学生活協同組合の末益さんによると、1990年代から毎年、ご当地メニューのフェアを実施しているという。
「大学生協東京事業連合(関東甲信越一都九県の協同仕入組織)で開催していますので、ほぼ同時期に各大学生協の食堂で同じフェアを実施しています」
この時期に九州・沖縄の料理を取り上げるのは、暑くなり始める5月が合っていることと、食材の調達を考慮してのこと。ただし今後も同じ時期になるとは限らないという。
このほか『東海うまいものまつり』、『東北応援フェア』、『北海道フェア』なども行っていて、毎年協議の上決めている。
ところで、大学生協の食堂はパートの女性が調理している。ご当地メニューだけに誰が作っているのか気になるところだが、いつもと同じ人が担当している。
「食堂に料理人といわれる従業員はいません。簡便な調理方法でできるようマニュアルもあり、そのレベルまでの加工度を上げた食材開発をしています」
この点は一般の外食チェーンも恐らく変わらない。美味しい料理を早く、安く、安全に提供するために、日々改善が進められている。
そのかいあってか、フェアの期間中はいつもより利用客が増えるそうだ。
イマドキ学生の食事情は如何に?
食は時代の変化が如実に反映される。学食を通じて若者の食生活の変化を感じることがあるか、末益さんに尋ねた。
「当然のことながら、私が学生時代を送っていた1970年代とは大きく変わっています。当時の食事処は『食堂』がメインで1日10数回転していました。また1980年代のバブル崩壊前はホールアメニティやメニューもワンランク上が求められていました」
「長期不況になり、学生の仕送りも減少するなか、価格面でシビアな時代になっています。一方、コンビニの台頭や大学の授業も時間いっぱいするようになったことで、教室で食べることが食のスタイルとして定着しました」
早稲田キャンパス内にはパンショップが5カ所、セブン-イレブンとファミリーマートがそれぞれ1店舗ある。たまのパン&コンビニ弁当も悪くはないが、若いうちはしっかり栄養をとっておきたいもの。学食の果たす役割はいつの時代も重い。
「生協は組合員組織であるため、学生組合員の意見を取り入れていることが強みです。また地域住民の方々や見学やオープンキャンパスの来訪者も自由にご利用は可能です。看板メニューの大隈定食は3階で食べられますが、これを目当てに来られる方もいらっしゃいます」
大隈ガーデンハウスの営業時間は、2階が10時30分~14時で、3階が11時15分~19時50分(土曜日は15時15分)。筆者は平日のお昼前にここで食事をとったが、一般人でも気軽に利用できる雰囲気だった。
2階はご飯とおかず・汁物の組み合わせ、カレー、ドン、プレート、ビュッフェ、サラダバー、3階はグリル、パスタ、麺、丼の専門コーナーとなっている。スイーツやソフトドンクもある。
広い芝生と池のある大隈庭園は、和洋折衷式の庭園として評価が高く、まさに都会のオアシス。東京の真ん中で健康な食事をしつつ、マイナスイオンで気分をリフレッシュしたい人にお勧めしたいスポットだ。