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池袋が、緑とカフェの都市に変貌を始めた

Jタウンネット編集部

Jタウンネット編集部

2015.05.08 13:00
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2015年は、池袋が転機を迎えた年として後世に長く語り継がれるかもしれない。

東洋一のノッポビルとして名をはせた池袋のサンシャイン60(東京都豊島区)。海抜高269.8メートルの展望台からは東京が一望でき、1978年の開業以来、累計で約4000万人が来場した。
周囲に高い建物が少ないことから眺望に恵まれているが、リニューアル改装のためこの5月6日をもって休館した。

来年春に営業が再開されるとはいえ、池袋の名所が利用できなくなることに一抹の寂しさを覚える人もいたのではないか。

49階建てのビルに区役所が入る

翌7日、池袋に新しいランドマークが誕生した。サンシャイン60から南に約400メートル離れた場所に、地上49階建て・高さ189メートルの「としまエコミューゼタウン」がオープンしたのだ。

としまエコミューゼタウン

としまエコミューゼタウン(写真は全て編集部撮影)

1階の一部と3~9階に区役所が入り、上の階は432戸の分譲マンションとなっている。耐震性を備え、100年以上の長寿命建築として設計された。総事業費約430億円のうち、区の負担は約120億円。

財政状況の厳しい豊島区がどうやって費用を捻出したのか。旧庁舎と隣の豊島公会堂に定期借地権を設定し、民間に貸し出すことによってまかなった。財政支出はほぼゼロで済む計算だ。

1961年竣工の旧庁舎。23区内で最も古かった。

1961年竣工の旧庁舎。23区内で最も古かった。

オープン初日、Jタウンネット編集部は新庁舎を見学した。
新施設を見学に来た人と、連休明けのあわただしさが入り混じる。新施設の配置に若干戸惑う職員も見かけた。それでもスペースの広さがゆとりをもたらしている。

圧巻はなんといっても中央のアトリウム。1階から9階までの吹き抜け空間。スマホのカメラ機能で撮影を試みたが全部収まり切らない。

1階から上階を見上げる。

1階から上階を見上げる。
9階から1階を見下ろす。

9階から1階を見下ろす。

エレベーターホールには専用エレベーターが7基稼働し、4階まではエスカレーターも利用できる。積み残しが生じる場面は見かけなかった。

ビルのコンセプトは「高い樹木」。木の葉が庁舎を覆う。

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「豊島の森」と名付けられた10階の庭園は、約1000平方メートルの広さだ。常緑樹・落葉樹・紅葉類がそれぞれ植えられ、森や小川が再現されている。

10階の「豊島の森」

10階の「豊島の森」。
こちらもビルの10階。

こちらもビルの10階。
10階のエレベーターホールにある「ふくろう」のコレクション。

10階のエレベーターホールにある「ふくろう」のコレクション。

眺めは申し分なく、デートスポットとしても使えそうだ。

10階から見た新宿の高層ビル群。

10階から見た新宿の高層ビル群。

植物は8・6・4階にも植えられていて、「グリーンテラス」として外階段でつながっている。つまり10階から4階までビル内に入ることなく周回できるというわけだ。階段を下りるときは少々スリルがあるが。

植物名と産地を示すプレートも設置されている。

植物名と産地を示すプレートも設置されている。
10階から下階につながる階段。

10階から下階につながる階段。
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下りる途中でガラス越しに議場も見えた。
豊島区は日本一人口密度の高い市区町村で毎年2万人程度が転入出する。地域に対する関心が薄い人も中にはいるだろう。区政を身近に感じてもらうため、こうした工夫を凝らしたことに目を見張る。

カメラのレンズを押し当てたため、白い縁が生じている。

スマホのカメラのレンズを押し当てたため、白い縁が生じている。

4階まで下りてビル内に戻る。ここは福祉総合フロアとなっていて、子育てや高齢者・障碍者福祉、生活支援、区民相談などに応じる。

子供向けソファーもあった。

子供向けソファーもある。

「子育てインフォメーション」は、東池袋に本社を置く無印良品が内装を手がけた。専門のスタッフが妊娠・出産から子育てまでの相談に対応する。

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3階から9階までの庁舎内通路は展示空間「回廊ミュージアム」となっていて、区の文化や歴史遺産、美術工芸品、子供たちの作品などを紹介している。

1・2階には商業スペースも設けられ、ファミリーマートやココカラファイン、E-PRONTOが入る。

開庁前のE-PRONTO。オープンカフェ席が設けられている。

開庁前のE-PRONTO。オープン席が設けられている。

池袋改造計画は始まったばかり

新庁舎周辺を歩くと、池袋全体が生まれ変わりつつあることがよく分かる。

ビルの目の前は道路整備の真っ最中だ。2019年の完成後は明治通りのバイパス線となる。

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現在の明治通りは池袋駅東口のすぐ目の前を通っている。バイパス完成後、駅前の交通量はほぼ半減すると試算されている。

池袋駅~東池袋駅の未来図(編集部作成)

池袋駅~東池袋駅の未来図(編集部作成)

先述の通り、旧区庁舎と豊島公会堂は民間に貸し出して商業施設を建設する。目の前に中池袋公園や区民センター、アニメイト池袋本店などがあり、ちょっとした賑わいの場となっている。

さる5月2日、人気男性声優の梶裕貴さん、KENNさんが池袋署の1日署長を務めた。ここでパレードが行われ、大変な人だかりとなった。

また6日は区民センターで女性コスプレイヤーによるコレクション(衣装)交換会も催された。中池袋公園はコスプレ撮影が一部OKとなっていて、違和感はほとんどない。

豊島区民センター

豊島区民センター。
中池袋公園

中池袋公園。
左が豊島公会堂で、その奥が区民センター。右が中池袋公園。

左が豊島公会堂で、その奥が区民センター。右が中池袋公園。

区の資料によると、豊島公会堂跡地に建設されるホールの規模は1200名程度。オペラ、バレエ、ミュージカル、伝統芸能、コンサートなどの舞台芸術に対応できる機能を備える計画だ。区民センターも併せて改築される。

オープンカフェの似合う街になるか

5月1日からはグリーン大通りでオープンカフェ実験もスタートした。6日午後の時点で利用者の姿はまばらだったが、一流企業が軒を並べるオフィス街で雰囲気は悪くない。

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池袋は決して緑の多い街ではない。しかし新市庁舎の壁面を緑で覆ったり、西武池袋本店の屋上に庭園を作ったりと、都市の中に緑をつくる意欲が高い(参照:池袋だけに!? 西武池袋本店の屋上に「池」ができました)。

東武鉄道が4月に新部署を設けた

東口と比べると古い雑居ビルが目立つ西口も、三菱地所が加わって再開発計画が動き出している(参照:あの「池袋ウエストゲートパーク」こと西口公園が消滅の危機、理由は?)。

少々話は脱線するが、新庁舎のある場所は昭和初期、東武グループの創設者・根津嘉一郎が所有する通称「根津山」の林だった。
その東武鉄道は、今年4月1日の組織改正で「池袋開発プロジェクト」なる部署を新設した。トップに専務取締役が就任している。

東京スカイツリーと東武アーバンパークライン(野田線)の次は、いよいよ池袋再開発に着手すると見られる。

池袋が本来持っていた自然を時代に合った形で再生しつつ、より魅力ある都市にすることができるか。大規模プロジェクトが進む品川や湾岸部、渋谷の影に隠れがちだが、将来が楽しみなエリアの1つだ。

新庁舎入口から見たサンシャイン60方面の景色。

新庁舎入口から見たサンシャイン60方面の景色。
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