スマホ時代に見直される「眼鏡の選び方」、度数だけでは解消できない目の負担とは
スマートフォンやPCを長時間使用する機会が増え、目の疲れや見え方の不調を訴える人が増えている。しかし、ライフスタイルに合わせたレンズ選びの重要性は広く認知されていない。眼鏡店の発信不足などが課題となるなか、度数だけでなく装着状態まで考慮する「オーダーレンズ」の普及が模索されている。 アイケアの現状と個別最適化への取り組みについて、大阪を中心に展開する眼鏡店「グラスファクトリー」の代表取締役・乾寛人氏に聞いた。
遠近のピント調節がもたらす目の酷使――なぜアイケア需要は必然的に高まるのか
現代社会において、PCやスマートフォンの常用による「目」の負担は、かつてないほど増大していると指摘されている。近距離を見続ける習慣はピント調整のために目の筋肉を使い続ける原因となり、眼精疲労を引き起こす。同氏によると、本来の目は遠くを見ることに順応しており、遠近での筋肉の使用量には大きな差があるという。こうした目の負担への関心を背景に、目薬やアイマスクなどのアイケア商品も身近な存在になっている。 こうした変化の一方で、個々の日常に最適化されたレンズを選ぶ大切さは広く伝わりきっていない。同氏は眼鏡店側の発信不足に一因があると指摘する。 ただし、消費者が眼精疲労を一時的な疲れと捉えがちである点や、情報提供を持続的に行うための仕組みづくりには依然として課題が残されている。
度数合わせから「装着パラメーター」の計算へ――従来の眼鏡選びとの対比

こうしたなか、改めて注目されているのが、装着状態まで考慮して設計するオーダーレンズである。一般的なレンズでも度数や瞳孔間距離などは反映されるが、オーダーレンズでは、実際の装着時の角度や目とレンズの距離など、より多くの測定値を設計に取り入れる。レンズ性能を発揮するには、目に対して正しい位置と角度で配置される必要がある。個人の顔幅や耳の高さなどの違いを考慮し、理想的な「角膜頂点間距離」「前傾角」「そり角」などを測定し、レンズ設計に反映する。過去の眼鏡市場はデザイン性が重視されたが、同社では、デザイン性だけでなく、見え方への不満や目の疲れを理由に来店する顧客が少なくないという。レンズテクノロジーの進化により市場ニーズとプロダクトが合致しつつあると見られる。 もっとも、高精度な測定や丁寧なフィッティングを広く提供していくためには、技術の平準化や専門スタッフの育成コストといった運用面のハードルが存在する。
日常生活のパフォーマンスに与える影響――両眼視機能から見直す「見え方」

視覚環境の改善は、個人の日常生活やビジネスのパフォーマンスに変化をもたらすとされる。同社の説明によれば、両眼視機能検査を基に作製された眼鏡の使用者からは、長時間の事務作業による目の疲れだけでなく、同社によると、作製した眼鏡の利用者からは、「長時間の事務作業で目が疲れにくくなった」「肩こりや頭痛が以前より気にならなくなった」といった声も寄せられているという。ただし、感じ方には個人差があり、症状が続く場合には眼科での診察が必要になる。また、深視力に関する見え方の改善を実感したとの声や、球技で距離感をつかみやすくなったという事例もあるという。球技においてボールの距離感を掴みやすくなったケース、プリズムレンズなどによって見え方の負担が軽くなったと感じる利用者もいるという。一方、物が二重に見えるなどの症状がある場合は、まず眼科で原因を確認する必要がある。 一方で、ユーザー自身が自らの目にかかっている負担に客観的に気づくことは難しく、店舗での対話を通じて初めて課題が顕在化するケースが多い。いかにして自覚症状のない層へアプローチするかという点が、今後の普及における構造的な論点となっている。
パーソナル化が進むフレーム設計――眼鏡業界が抱える「サイズ」と「構造」の課題
今後のアイウェアが目指すべき方向性として、個々の身体的特徴に応じたパーソナルな提案が挙げられる。同社ではフレームの最適化が必須であると位置づけている。現在流通している眼鏡の多くがワンサイズである点は市場の課題であり、個人の顔幅の個体差に対応するため、同社では1デザインで3サイズを展開するブランド『GLAFU』を展開している。将来的にはフルオーダーへと進化させる計画だ。 しかし、トレンドの移り変わりに対して柔軟に方向転換を図る上では、業界構造の課題も指摘される。アパレル業界のようなカテゴリー毎の認知や役割分担が眼鏡業界では十分に浸透していないという見方もあり、中小事業者が独自の価値を発信し、消費者が用途に応じて最適な選択を行える市場環境が構築できるか否か、今後の動向次第でその輪郭が見えてくることになりそうだ。

【取材協力】
グラスファクトリー
代表取締役 乾寛人
https://glassfactory-shop.jp/