遅延のせいでピリピリする路線バスに響く「無線連絡」 他のバスからの報告に車内の空気が一変し...
シリーズ読者投稿~あの時、あなたに出会えなければ~ 投稿者:Kさん(京都府・40代男性)
Kさんはかつて京都・宇治市で路線バスの運転士をしていた。その日は道が混雑していて、彼が運転していたバスには遅れが出てしまっていたという。
「いつになったら着くんやろ?」――乗客からはそんな声もあがるなど車内がピリつく中、Kさんの元にある無線連絡が入ってきたことで、空気は一変する。
<Kさんの体験談>
以前、京都の宇治市でバスの運転士をしていた時の事です。ある平日の15時ごろ、私の運転していた中型バスは渋滞に巻き込まれていました。
普段この時間帯はスムーズに運行出来るのですが、この日は車の台数が多く、どの停留所にも遅れて到着する状況でした。
他のバスから無線が入り...
このまま運行していると終点に到着する頃には30分以上の遅延になると思いました。
バスには10人程度のお客様が乗車されていたので「本日、渋滞のため運行に遅れが出ています。ご迷惑お掛け到ますが、安全に目的地にお送り致しますのでよろしくお願いいたします」とアナウンスしたのですが......お客様からは「どうなってるの?」「いつになったら着くんやろ?」などと声が上がって、車内はピリピリしていました。
私にアナウンス力があればお客様をピリピリさせる事も無かったのでは......。そう思っていた時に他の路線のバスから営業所に無線連絡が入りました。
他の路線バス:〇〇系統から〇〇営業所!!
営業所:こちら営業所、〇〇系統どうしましたか?
他の路線バス:運行終了後の車内点検で忘れ物を発見いたしました
他の路線バスで忘れ物が見つかったという報告でした。無線は続きます。
営業所:了解いたしました。ちなみに忘れ物は何でしょうか?
他の路線バス:え~、ナメコの缶詰め2個です
営業所:ナメコの缶詰めですか?
他の路線バス:そうです、ナメコの缶詰です2個です
他の路線バスで見つかったナメコの缶詰2個について、営業所は拾得物として持ち帰るように指示を出したのですが、このやり取りは私が運転するバスのお客様にも聞こえていて......。
無線連絡で車内が「ほんわか」
「ナメコの缶詰やって、誰が忘れたんやろ」
「ナメコで何の料理するんだろうね」
お客さんたちが無線を聞いて、そんな会話を始めたのです。ナメコの缶詰のおかげで車内はほんわかした空気になりました。
そして終点につく前、私は再び車内アナウンスをしました。「本日は渋滞により到着が遅くなりご迷惑をおかけいたしまして申し訳ありませんでした」という謝罪に、こう付け加えたんです。
「お降りの際はお忘れ物の無いようにお気を付け下さい。特にナメコの缶詰はお気を付け下さい」
すると、「誰も持ってないわ」とツッコまれ、複数のお客様に笑われてしまいました。
渋滞で30分以上の遅延になってしまったのにナメコの缶詰に救われた思い出であります。
誰かに伝えたい「あの時はありがとう」、聞かせて!
名前も知らない、どこにいるかもわからない......。そんな、あの時自分を助けてくれた・親切にしてくれた人に伝えたい「ありがとう」を心の中に秘めている、という人もいるだろう。
Jタウンネットでは読者の皆様の「『ありがとう』と伝えたいエピソード」を募集している。
読者投稿フォームもしくは公式ツイッター(@jtown_net)のダイレクトメッセージ、メール(toko@j-town.net)から、具体的な内容(どんな風に親切にしてもらったのか、どんなことで助かったのかなど、500文字程度~)、体験の時期・場所、あなたの住んでいる都道府県、年齢(20代、30代など大まかで結構です)、性別を明記してお送りください。秘密は厳守いたします。
(※本コラムでは、プライバシー配慮などのため、いただいた体験談を編集して掲載しています。あらかじめご了承ください)