「新幹線のホームで、僕の顔をジロジロ見てくる見知らぬ老女。やがて傍まで近づいてきて『お兄さん...』」(岩手県・50代男性)
シリーズ読者投稿~忘れられない「あの人」と~ 投稿者:Eさん(岩手県・50代男性)
その日、駅のホームで帰りの新幹線を待っていたEさんは遠くから自分を見つめる視線に気づいた。それは見知らぬおばあさんのもので、Eさんは自分や身の回りに何か異変があるのかと確認したが、おかしなものは見当たらない。
しかしおばあさんは彼のすぐ隣までやってくると、思い切ったように声をかけてきたという。
<Eさんの体験談>
今から30年以上前、出張で仙台に行った帰り、ホームにあるベンチに座って新幹線を待っていた時のことです。
70代ぐらいのおばあちゃんが少し離れたところから、私のことをジロジロと見ていました。
彼女はそのうち私の隣にすっと座ってきて、時々下から私の顔を見上げてくるのです。
「私があと50年若かったら...」
「顔に何か付いているのかなぁ」と思った私は顔を触ってみたり、身の回りを確認してみたりしましたが、特におかしなところはありません。
そしてしばらくすると、おばあちゃんは思い切ったように私に話しかけてきました。
「お兄さん、亡くなった私の主人の若い頃にそっくりで、つい見てしまいました。私があと50年若かったら......と思ってしまいました」
私は「こんなことを素直に言葉にするおばあちゃんがいるんだ」とびっくりしましたが、「そうだったんですか。すごくカッコいいご主人だったんですね」と冗談で返しました。そして続けて
「私があと50年、歳をとっておばあちゃんに会っていたら、おばあちゃんを好きになっていたと思います」
と言うと、おばあちゃんは笑いながら少しだけ涙ぐんでいました。
彼女のことを思い出す時は、今でも...
もっと彼女の話を聞いてみたいと思ったのですが、そこに私の乗る新幹線が到着。おばあちゃんとは「元気でね」と言って別れました。
でも、後になって思ったんです。新幹線を1本遅らせてもおばあちゃんともう少しお話すれば良かった、と。
今でも彼女を思い出すときは、一人の女性として思い出します。
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