「祖母のもとへ行けるなら...」旅先で死を考えていた19歳 彼女をこの世に繋ぎとめた「地元民の温かさ」
大切な家族が亡くなった。それは、母親に代わって自分を育ててくれたおばあちゃんだった。
ある日、Jタウンネット編集部に届いたメッセージには、そんな想像するだけで胸が痛むような過去がつづられていた。
北海道在住のYさん(仮名、30代女性)は、19歳のとき、育ててくれたおばあさんを亡くしてしまう。
自暴自棄になって青森の漁港へたどり着き、「私も祖母のもとへ行けるなら」という思いから死を意識するが......。
そんな彼女を、この世につなぎとめてくれた人が居た。
人間の強さとあたたかさを感じるエピソードを、皆さんにもご覧いただこう。
北海道を飛び出し、なけなしのお金で青森へ
私が19歳の頃、母親代わりに育ててくれた祖母が亡くなり、この先どうしていいのかもわからず自暴自棄になっていました。
なけなしの全財産を持ち、どうにでもなれと函館から青函フェリーに乗り青森へ行きました。
なんのあてもなく車中泊を繰り返していましたが、そのうち手持ちの財産は残りわずかに。仕事もなく、車のガソリンもほとんどない状況で、私も祖母のもとへ行けるならと漁港のそばに車を停めたまま、何をするでもなく時間が経つのをただ待っていました。
そんなとき、車の窓をノックしてきたおばあさんがいたのです。亡くなった祖母と同じくらいの背格好でした。
方言訛りの口調で 「何日もこんな所でなにをしているのか?」 と。
ただ泣きながら、いろんな話をしました......なぜそのおばあさんにいろいろと話したのかは自分でもよく分かりませんでしたが。
北海道から来たこと。祖母が亡くなったこと。今の状況やこれからのこと。おばあさんは優しく聞いてくれました。
そして私が一通り話したあとに、おばあさんは手提げ袋に入っていた大福を1つ差し出し 「アンタはまだまだ若い。 ここで挫けちゃダメ。 今がドン底と思うなら、ひと花咲かせてからでも遅くはない」 と言いました。また、
「アンタがひと花咲かすなら、私はその花を育てる土になりたいねー」
と、笑っていました。
「お腹が減っていると悪いことばかり考えるものだから...」
しばらく話しているうちにあたりが暗くなり、おばあさんが帰るとき、私は彼女と抱き合い「頑張ってみるね」と約束しました。
とはいえ、手持ちの現金はほぼ底を尽き、北海道へ帰る旅費も残っていません。青森のどこかで仕事を見つけなければと思いつつ、その晩はまた車中泊しました。
翌朝、目を覚ますと、車のサイドミラーに買い物袋がぶら下がっているのに気が付きました。
なんだろうと思い開けてみると、そこにはおにぎりが3つとみかんが2つ、茶色い封筒に現金5万円と手紙が入っていたのです。
手紙には、こう書いてありました。
「このお金で北海道に帰りなさい。命を落とそうと思わないこと。あなたはきっと強い子だから、どんなことも乗り越えられる力がある。自分の知ってる街で頑張りなさい。
お腹が減っていると悪いことばかり考えるものだからおにぎりたべなさいね」
名前も住所も書いてありません。急いであたりを探しても見つかりません。
絶対に昨日のおばあさんだと確信しているのに、どこにも見当たらず探す術もないのです。 たくさん泣きました。自分の祖母に言われたような気がしていました。
感謝の気持ちとあのおばあさんにもう一度会いたい気持ち、自分の祖母と重なるおばあさんに対しての気持ちでぐちゃぐちゃでした。
今の自分のことを教えてあげたい
今思えば、あの年齢で5万円は本当に大金だったと思います。
その後、おばあさんのお陰で北海道に戻り、紆余曲折ありましたが結婚、出産、離婚などをして、今ではシングルマザーで息子が1人います。
数年前に小さいながらも会社を設立し、細々とですがおばあさんとの約束どおり、少しづつ頑張っています。
何度かあのおばあさんを探そうと思い、青森へ行ったこともありますが、当時私がたどり着いた漁港へも行き着けず、おばあさんにも会えてないままです。
もし、どこかで会えるなら、あの時の小娘は今こうなりましたと知ってもらいたい。
あなたのおかげでここまで生きてこれたこと。来年、当時の私と同じ19歳になる、頼もしい息子がいること。あなたが居たから。あなたに救われたから。あなたと約束したから。
本当にありがとうと伝えたい。
私も誰かの力になれるように、誰かを救えるように。おばあさんとの約束を忘れず、頑張ってみます。
誰かに伝えたい「あの時はありがとう」、聞かせて!
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