まるで「神マスク」...神事で配られた謎の紙に注目 その正体は?京都・八坂神社に聞いた
京都市東山区の八坂神社は2020年4月8日、新型コロナウイルスの早期終息を願って、特別神事「祇園御霊会」を行った。疫病退散を祈ったことが起源とされる祇園祭にちなんだ神事だ。
この神事で使用された紙製の覆いが、「神マスク」「かっこいい」といまツイッターで話題になっている。それがこちらだ。
なんだか達筆で文字が記されているが、いったい何と書かれているのか? またどんな意味があるのだろう?
Jタウンネット編集部は八坂神社に取材した。
「蘇民将来子孫也」の意味は?
13日の取材に応じた八坂神社の担当者によると、この覆い紙は、奉書と呼ばれるコウゾで作った上質の和紙だという。書かれている文字は、「蘇民将来子孫也」。どういう意味なのか?
「八坂神社御祭神である『素戔嗚尊(スサノヲノミコト)』には、こんな伝承があります。スサノヲノミコトが旅の途中、兄の蘇民将来と弟の巨旦(こたん)将来に一夜の宿を頼んだそうです。弟の巨旦は裕福であるにもかかわらず断ったが、貧しい兄・蘇民は、粟で作った食事で粗末ながら手厚くもてなしたとのことです。
蘇民将来の真心を喜ばれたスサノヲノミコトは、疫病流行の際『蘇民将来子孫也』と書かれた護符を持つ者は、疫病より免れることができると約束されました。その故事にちなんで、『蘇民将来子孫也』の文字が護符に記されるようになったのです」
「蘇民将来子孫也」と書かれた奉書のマスクは、お参りをする人が自分の息を、神様やお供え物にかけないようにするためで、感染防止の効果があるわけではないということだ。
明治、大正期に感染症がまん延した時にも、八坂神社が「祇園御霊会」の神事を実施した記録があるという。
明治期は1877年の「コレラ」、大正期は1918年の「スペイン風邪」のときだ。「スペイン風邪」は1918年から1921年にかけて3回に分けて流行し、当時の日本の人口5500万人に対して、約2380万人が感染したとされている。
疫病が流行すると、八坂神社の出番となるようだ。
ツイッターには、こんな投稿もあった。
昨日八坂神社でご祈祷をお願いしていただきました。その際にマスクの上から覆ってください。と渡されました。ご祈祷斎了の後に御守りとしてお持ち帰りください。とのことでした。 pic.twitter.com/vzIvjshxlS
— 武藤詳大 (@shintohmono) 2020年4月10日
「蘇民将来子孫也」は八坂神社では大切なキーワードで、頒布されている多くの厄除けグッズなどにも記されているようだ。
新型コロナウイルスが心配な人は、八坂神社で疫病退散を祈願して、「蘇民将来子孫也」と書かれたお守りを手にすると、少しは安心できるかもしれない。しかし参拝するのに、「密集」「密接」「密閉」は避けていただきたいが......。