「おしゃべり好きな近所のおじさんには、ある過去がありました」

2015年2月17日 07:00

岡山県に暮らす湯本幸喜さん(仮名・64)は、近所でも評判のおしゃべり好きだ。

「今日もいい天気じゃね~」

定年退職して数年。日課は1日2回の犬の散歩。近所の人を見かけると、ニコニコしながら歩み寄ってくる。子どもから年配の人まで、誰彼問わず捕まえるので、近所では「おしゃべりの湯本さん」で通っている。

話題はいつもたわいもない。天気の話だったり、大切にしている犬の話だったり、退職以来ハマっているという料理の話だったり......。特に天気の話は十八番だ。なんでも元々はパイロットだったそうで、その経験に基づく湯本さんの予報は、テレビより当たるという人もいる。

湯本さんのおしゃべりは、悪口や変な噂とは無縁だ。自慢やお説教もない。それにこっちが時間をちょっとでも気にする風を見せると、すぐに話を切り上げてくれる。いわゆる「罪のない」おしゃべりで、周囲に湯本さんのことを悪くいう人はいない。

画像はイメージです(Hitchsterさん撮影、Flickrより)
Walking the Dog

ある日の町内会の集まり。ご近所さんたちの話題が、たまたまその場にいなかった湯本さんに及んだ。「あの人のおしゃべりにも困ったもんだ」と言いつつ、みんな笑っていたのだが、最近越してきた住人が、ふと口を開いた。

「ところで湯本さんの話には、奥さんが出てこないんですけど......独身なんですか?」 一同の顔が曇った。しばらくの沈黙があって、一番年配の町内会長が、「実はね......」。

湯本さんには、30年来連れ添ってきた奥さんがいた。子どもはいなかったが、湯本さんは奥さんをとても大切にしていて、周囲には仲のいい夫婦と思われていた。

ところが仕事柄、湯本さんは家を空ける日が多い。その間に、奥さんは別の男と「デキて」しまった。そしてある日、湯本さんが家に帰ってみると、中はもぬけの殻。めぼしいものは皆持っていかれ、置手紙だけが残っていた。それが、ちょうど10年ほど前の話なのだという。

件の住人が帰宅して、自分の妻にこの話を伝えたところ、彼女はまるで自分のことのように怒ったそうだ。

「ありえないでしょ? あんなにやさしい湯本さんにそんなこと......絶対、許せない!」 湯本さんを捨てた奥さんへの反感は、むしろ同性ほど強いらしい。ご近所の他の家庭でもそうなのだという。「まあ、男と女のことだし......2人の間に何があったのかは、わからないよ」と彼女をなだめつつ、彼は1人の家で犬を世話し、料理に励む、無言の湯本さんの姿を想像した。

※本コラムの内容は、ユーザーから寄せられた実際の体験談を元に再構成したものです。登場する人名・地名などは、プライバシー保護などのため一部改変している場合があります。
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