好きをレベルアップする

2020年10月 8日 12:06

野球に学ぶ「これからの生き方」
~世界大会三連覇・少年野球監督が語る野球の魅力と底力~

 NPO法人「ベースボールスピリッツ」理事長で、少年野球チーム「宝塚ボーイズ」監督の奥村幸治さん。
 かつてはイチローのバッティングピッチャーを務め「イチローの恋人」といわれ、少年野球チーム結成後は、現在ニューヨーク・ヤンキースで活躍する田中将大の才能を見いだし、キャッチャーからピッチャーへ転向させたほか、世界少年野球大会(カル・リプケン杯)では日本チームを3連覇に導いた指導者です。

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奥村幸治著『野球に学ぶ「これからの生き方」』(扶桑社新書)には、
人間力を高めるヒントがいっぱいです。
ここでは数回に分けて本書のエッセンスを抜粋して紹介しています。
連載5回目のテーマは「好きをレベルアップする」

プロ野球「47年会」大好きな野球を次の世代に伝える場

「47年会」は昭和四七年生まれのプロ野球関係者が集う親睦会で、当時西武ライオンズにいた高木浩之選手と木村拓也選手、稲葉篤紀選手が中心になってはじめたものです。高木、木村、稲葉の三人があるとき「この席に今度、オク(奥村)を呼ぼうよ」ということになったのですが、昭和四七年生まれには、ほかにも西武、中日ドラゴンズで活躍した和田一浩選手、西武の西口文也投手などスター選手がたくさんいて、そんなところに顔を出すのはおそれ多いと最初はお断りを入れました。
 しかし「いや、そうじゃないんだよ。いま、活躍しているものも、いつまで続けられるかわからない。現役を引退するときがやってくる。これからも野球の世界でずっと生きていけるとはかぎらない。でも、皆、野球の世界しか知らないんだから、お前のような人間、少年野球の指導者として、野球以外の世界と接点のある人間の話が聞きたいんだよ」と説得され、そういうことならばと引き受けたものです。木村拓也が会長、事務担当が私となり、木村亡きあとも、事務を守っています。

 当初は、皆でゴルフをして温泉に浸かって、食事をしながら好きな野球談議をする会だったのですが、もう少し、さらに有意義なことをしようということになり、この「47年会」で「少年野球教室」を開催することにしました。いまでも一五人前後が指導者やスタッフとして参加をしています。
 少しオーバーないい方をすれば、同世代の野球人が、自分たちが大好きな野球を自分たちで語り合う場からスタートした「47年会」が、その大好きな野球を次の世代に伝える場に、そして世代を超えて皆が大好きな野球を共有できる場になっているともいえるでしょう。

 ある日、「47年会」のメンバーと「どうしてプロの選手になれたのか」という話になったことがあります。「結局は野球が好きだということに尽きるね。小さいころから野球が好きだという点では誰にも負けなかった」ということで皆が一致しました。もちろん、好きというだけではプロ野球選手にはなれません。十分条件ではないけれど、しかし「好き」という気持ちが原動力になります。私もプロでは活躍できなかったけれど、野球を嫌いになったことはありません。父の熱血指導を受ける私を見て、四歳上の姉がかわいそうと感じてくれたこともあったようで、また、着るものにもあまり構わなかった私を見て中学生のときには「あんた、そんなだっさい服を着てたら笑われるで」と誕生日に服をプレゼントしてくれたこともありましたが、やめたい、嫌だと思ったことは一度もなく、好きな野球一筋でここまで来ました。

惚れ込んでこそ一流

「好きこそものの上手なれ」とか「惚れ込んでこそ一流」という言葉がありますが、ほんとうにその通りだと思います。人を好きになったら、その相手のことを知ろうとします。好きになればなるほど、より知りたくなります。好きになって惚れ抜いて、いっしょになるということです。熱くなって誰よりも努力するから結果が出るのです。もちろん、最終的には縁があるかないかということにもなりますが、好きになるという経験は苦くもあるけれど、人生を豊かにするものです。

 仕事もそうでしょう。

 これはねじを製作している日東精工の人財本にあったエピソードですが、同社ではいろいろな種類のねじをつくっていて、初めての取引先にはいろいろなねじをケースに詰めてもっていくのですが、そのサンプルをつくる女性社員が営業担当に手渡すときは「この子たちをよろしくお願いいたします」と送り出すそうです。単価でいえば一本一円もしないものですが、この社員にとっては、まさに宝石がいっぱいつまった宝箱なのです。それだけ自分たちがつくったモノに、愛をもっているということでしょう。
「自分の仕事が好きです」と胸を張れるのは素晴らしいです。

熱中する、夢中になれる、そういう「X」に出合えるのは素敵なこと 

徹底的に好きになるという関連で「拭く」と「磨く」の話が出たこともあります。似ている言葉ですが、花瓶などを布でサッとこすってホコリを取るのが拭く、ピカピカに光るまでなんどもこするのが「磨く」です。タンスでも靴でも拭くだけでは光らないけれど、磨けば光っていきます。好きのレベルをアップするということは、「拭く」ではなく「磨く」ことに通じます。とことん、徹底する、夢中になることで輝いていけるということです。

 いまは働き方改革、ワークライフバランスといわれるようになり、仕事一筋は古い時代の遺物になりつつありますが、基本は働き方の質ですね。どんなに短くても、いやいやする仕事はストレスになりますし身にもつきませんが、やりがい、おもしろいと感じていれば時間なんて苦になりません。もちろん健康が第一ですし、自分がそうだからといってそれを人に強いることもダメ、自分しか見えなくなって(盲目的になって)自分の思いだけをおしつけるのも、もってのほかです。

 しかし、決められた枠のなかだけで収めない、収まらないことがあってもいいのではないかと思います。日が暮れて暗くなるのも気がつかないくらい没頭する、熱中する、夢中になる......そういうもの、「X」に出合えるのは素敵なことだと思います。そして、それが自分にとっては野球でした。これからも野球を好きであり続けたいと思っていますし、野球が好きな人、子どもたちが、ずっと野球を好きと思い続けられる環境をつくっていきたいと思っています。

第1回 「白スパひとつ!」に少年野球監督の目が点

第2回  田中将大に逆転勝ちが多い、その理由

第3回「田舎では満足なチームはつくれない!」はほんとうか?

第4回 チャンスはつかむもの? チャンスはつくるもの

第5回 好きをレベルアップする!

第6回 常に準備しておく

第7回 SDGsと野球

あれこれ ワードスプリング

大手出版社、老舗出版社、一部上場企業、世界遺産の神社仏閣、地方自治体などと連携してユニークな書籍を編集したり、発行したり……、あるいはこれまでにないオリジナリティあふれるイベントやキャンペーンを多数企画し、話題を提供し続けています。
株式会社ワードスプリング:https://www.wordspring.co/
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