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伊豆の新名物"イズシカ"を使った「イズシカめんち定食」で環境保全!

at home VOX

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2017.03.22 11:26
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全国各地のウマい肉料理をお腹いっぱい食べ尽くしていく連載「満腹御礼 ご当地肉グルメの旅」。

今回やってきたのは静岡県静岡市清水区由比です。

駿河湾に面した由比は「桜えびの街」として全国的に有名です。それもそのはず、現在、国内産として販売されている桜えびは100%、由比を含む駿河湾産のものなのです。漁期は春と秋の年2回あり、よく晴れた日には浜辺で桜えびを干しているところを見ることができます。その様子は由比の風物詩で、浜辺一面ピンク色に染まる美しい風景を一目見ようと、遠方から訪れる人もたくさんいます。

由比港には桜えびのモニュメントも建っています。
由比港には桜えびのモニュメントも建っています。
港は漁の解禁をいまかいまかと待つ船であふれていました。
港は漁の解禁をいまかいまかと待つ船であふれていました。
由比駅前の通りのゲートサインもやっぱり桜えび。
由比駅前の通りのゲートサインもやっぱり桜えび。

しかし、今回はご当地肉グルメの旅、紹介するのは桜えびではありません。由比では「鹿肉」を使った珍しい定食があるのだとか。しかも、そのメニューは地元の環境保全にもつながっているそうです。一体どういうことなのか、その定食を提供している店「ごはん屋さくら」へ向かいます。

桜えびにちなみ、かわいい桜色のごはん屋さくら。
桜えびにちなみ、かわいい桜色のごはん屋さくら。

中へ入ると店主の伊藤忠雅さんが出迎えてくれました。こちらで食べられる鹿肉を使った定食とは、どんなものなのでしょう?

店内は小上がりもあり、家族で来てもゆったりと食事が楽しめるつくり。
店内は小上がりもあり、家族で来てもゆったりと食事が楽しめるつくり。

伊藤さん「当店では『イズシカめんち定食』を提供しています。平成27年にしずおか食セレクションに選ばれた『イズシカ』の肉を使ったメニューです」

イズシカとは、あまり馴染みがない食材ですね。

伊藤さん「イズシカとは『伊豆の鹿』。現在、伊豆だけではなく全国で鹿による農作物や自然への食害が深刻な問題になっています。猟師の減少に伴い、鹿が増えすぎたことなどが原因です。その増えすぎた鹿を減らすため、伊豆では管理捕獲が行われています。その鹿もただ捕獲するだけでなく、食用に加工・販売しようという取り組みが行われ、イズシカブランドの鹿肉の提供が伊豆で始まっています。鹿の食害に関して、全国ではまだまだ知られていません。それを広めるために手助けができればと思い、当店でもイズシカを使ったメニューの提供を始めました」

店主の伊藤忠雅さん。イズシカメニューの開発についてお話を聞きました。
店主の伊藤忠雅さん。イズシカメニューの開発についてお話を聞きました。

メニューの開発には、どんな経緯があったのでしょうか。

伊藤さん「『イズシカめんち』のメニュー開発は、静岡県立大学フードマネジメント研究室の市川陽子准教授が中心になって行われました。しかし、大学の皆さんは料理のプロではないので、当初のレシピはお店で出すには厳しいものでした。いちばん大事なのはやっぱり味だということで、メニュー開発に私が協力することになったんです」

鹿肉をおいしく調理するためには、試行錯誤があったそうです。

伊藤さん「一般にメンチカツで使われる豚肉や牛肉は脂分が多いので、大きく手を加えなくても、ジューシーな仕上がりになります。しかし鹿肉は脂分がほとんどなく、ほぼ赤身。同じ作り方をしても固くなってしまいます。それでも鹿肉を100%使うという部分にはこだわり、他の肉の脂身などを加えず玉ねぎでジューシーさを補いました」

鹿肉といえば、獣肉特有の臭いも気になります。

伊藤さん「鹿肉は伊豆市食肉加工センター『イズシカ問屋』から仕入れているもので、適正・安全に処理された新鮮なものですが、若干、獣肉独特の臭いは残ります。そこで、牛乳と伊豆名産のワサビを使うことで臭いを抑えました。特にワサビは、鹿の食害を最も受けている農産物の1つのため、メニュー開発のコンセプトにも適した食材でした」

では、「イズシカめんち定食」を実際にいただきましょう!

「イズシカめんち定食」1080円。
「イズシカめんち定食」1080円。

メインのおかずのお皿には、大きなメンチカツが2つに椎茸の含め煮、そして目を引くユニークな形をしたごぼう天が盛り付けられています。このごぼう天は「鹿の角」を模しています。

副菜と汁物には由比らしく、しっかり桜えびが使われていました。これは嬉しいですね!
副菜と汁物には由比らしく、しっかり桜えびが使われていました。これは嬉しいですね!
ユニークな形のごぼう天が二つ盛り付けられている。
ユニークな形のごぼう天が二つ盛り付けられている。

さっそくメインのメンチカツをいただいてみましょう。中がわかりやすいように半分に切ってもらいました。ぎっしりとお肉が詰まっている様子がわかります。

ハンバーグのように肉肉しく、かじりつきたくなる断面です。
ハンバーグのように肉肉しく、かじりつきたくなる断面です。

メンチカツは特製の「ワサビソース」をつけていただきます。中濃ソースやウスターソースではなく、醤油ベースのお店オリジナルのものに、ワサビを少し乗せます。

特製ソースには地元産の柑橘類の果汁も加えられています。
特製ソースには地元産の柑橘類の果汁も加えられています。

サクサクとした衣の食感の後に、しっかりした肉感を感じます。お話を聞いた後とはいえ、若干の獣臭さは覚悟していたのですが、獣肉独特の臭いは全くありません。確かに一般的な豚のメンチカツと比べると、ジュワーと肉汁を感じるわけではありませんが、パサパサ感は一切なく、噛めば旨味が口の中に広がっていきます!

特製ワサビソースがとてもさっぱりしているので、揚げ物なのにドンドン箸が進みますね。鹿肉は栄養価も高く、それでいてローカロリーとヘルシーな食材なので、揚げ物だからといって健康を心配することもありません!

実はメンチカツの中には、鹿肉と玉ねぎに加え、「椎茸」が入っています。これが独特の旨味の秘密。実は椎茸も、ワサビ同様に鹿の食害にあっている食材のひとつなのです。鹿を食べるだけでなく、ワサビと椎茸を添えることで、イズシカの食害についての真実をより具体的に伝えようとしています。このメンチカツがきっかけとなり、もっと全国の人に環境保全の輪が広がるといいですね。

付け合わせにも揚げた椎茸がついています。
付け合わせにも揚げた椎茸がついています。

伊藤さん「2016年11月には、伊豆市役所で『IZU SHIKA FES 2016』が開かれ、静岡県立大のブースで私も参加させていただきました。イズシカを多くの方に知っていただけるイベントには、今後も積極的に参加したいと考えています。そして、伊豆では鹿による食害が起きていると、まずは知っていただければと思っています」

「揚げたてのイズシカめんちと新鮮な桜えびを食べに、由比へお越しください」と伊藤さんご夫妻。
「揚げたてのイズシカめんちと新鮮な桜えびを食べに、由比へお越しください」と伊藤さんご夫妻。

東京からのアクセスもよく、自然にあふれた観光地・伊豆。温泉やおいしい魚介類ばかりが注目されていますが、そこでは自然が多い地域ならではの問題が起きています。食を通じて、多くの人が興味を持つことで、少しずつ問題解決につながっていくはずです。

由比では3月21日から桜えび漁が解禁になり、5月3日には毎年数万人が訪れる「桜えびまつり」も行われます。桜えびと一緒に、新名物の「イズシカめんち」もぜひ味わってみてください。

施設情報

●ごはん屋さくら

住所:静岡県静岡市清水区由比今宿1027-8

電話:054-376-0101

営業時間:平日11:00~16:00、土日祝10:30~19:30、火曜定休

http://www13.plala.or.jp/sakuraya110/

※記事中の情報・価格は取材当時のものです。

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