冷めてもサクサクの衣は唯一無二! 宮城県仙台市の「天ぷらパン」
地域で愛されているパンを探して、全国各地をゆく「地域密着 愛されご当地パン」。今回は「天ぷらパン」という一風変わったパンがあると聞き、宮城県仙台市の「おいしいパン屋さん」にやってきました。
さまざまな菓子パンや惣菜パンを取り扱っている中で、この店が誇る看板商品が「天ぷらパン」。聞き慣れない名前ですが、海老やかぼちゃなどの天ぷらを挟みこんだパンなのでしょうか…。では、見てみましょう!
目の前に現れたのはこんがりきつね色の衣をまとった…パン!? 一見、厚揚げのようにも見えますが、中はどうなっているのでしょうか。
中から顔を出したのは、つぶあんを挟み込んだパンでした! 天ぷらパンとは、パンを天ぷらのように揚げたものだったんですね。ちなみに、味はあんの他にカレー、クリーム、チョコがありますが、一番人気が「あん」だそうです。気になるのはその味。早速、食べてみましょう。
衣は薄めでカラッと揚げられているのでサクサク。外皮は揚げたての天ぷらの衣を思わせる食感ですが、中のパンはしっとりもちっとしていて、その食感の違いが楽しめます。あんは甘さ控えめで、優しい甘さが口の中に広がります。
天ぷらパンの衣はサクッと軽く、揚げ物特有の油っぽい重さはありません。素朴な味わいなので、おやつ感覚でぱくぱく食べられました。
おいしいパン屋さんでは、必ず注文を受けてから天ぷらパンを揚げているそうです。店内にはカフェスペースもあるので、揚げたてをすぐに食べることができるのもうれしいところです。
もちろん持ち帰りもできますが、天ぷらパンのすごいところは、時間がたって冷めても、サクサク感が持続することです。天ぷらパンを作って25年以上になる加藤さんにその秘密を教えていただきました。
「天ぷらパンは衣が命」と言う加藤さん。どのような工程で作られるのでしょうか?
加藤さん「天ぷらパンの衣には、小麦粉やでん粉などをミックスした一般的な天ぷら粉は使いません。国産の小麦粉が持つうまみを生かすために、水を加える他はシンプルな調合にすることで、通常の天ぷら粉ではなかなかできない『時間がたってもサクッとしたおいしい衣』を作れるんです。調合する材料については…企業秘密です」
また、揚げ方にもコツがあるそうです。
加藤さん「油の温度が170℃より低いとサクッとした食感にはなりません。反対にそれより高いと衣が固くなったり焦げたりしてしまうんですよね。試行錯誤を重ねた上で、おいしい衣を作るためのちょうど良い温度にたどり着きました。また、天ぷらパンを食べても重く感じないのは、揚げ油にクッキーやかりんとうなどのお菓子を揚げるときによく使われる『米油』を使っているからなんです。米油は通常の油とは異なり、油臭さやコテコテした油っぽさがないんですよ」
なるほど、衣に使う材料や揚げるときの油と温度にこだわることで、いつまでもサクサク感が楽しめる天ぷらパンができあがるんですね。