「誤って注文をされたに違いないと信じられるようになりました」 ユニークな支払い督促メールに反響→効果はあるの?送り主に聞いた
オリジナルグッズを販売できるオンラインサービス「SUZURI」から届いた「支払い督促メール」の文面が、ツイッターで注目を集めている。
こちらは、スマホアプリを開発する企業「ドリグロ」の社長・西まりもさん(@marimo_engineer)が、2021年5月31日にツイッターで投稿したもの。
西さんはこの画像とともに、
「ちょwwwSUZURIの支払い催促メールふざけすぎてて好きwww」
と、つぶやいた。
その文面には、
「本日がコンビニ払いの最終期限ですが逆に落ち着いてきました」
「スタッフ一同、お支払いをされていないことに心配をし、本来食べるべきでないものを食べたりしましたが、いよいよ本日を期限にして落ち着いてきました」
「きっと誤って注文をされたに違いないと信じられるようになりました」
――と、督促とは思えない表現が並ぶ。
最終的には、決して購入者に支払う気がないのではなく、誤って注文しただけだと信じる姿勢まで見せている。
投稿されたメールの優しさに、リプライ欄では
「読んでて楽しいw」
「最高っすねこれは」
「払わないと ってなりますね」
などの声に混じって、自分たちに届いたSUZURIからのユニークなメール文を貼っている人もちらほら。
どうやら代金の督促に限らず、SUZURIからのメールはいつも気が利いているらしい。
そこには何か狙いがあるのだろうか。
Jタウンネット記者は6月10日、SUZURIを運営するGMOペパボでSUZURIのディレクターを務める、荒木千佳さんに詳細を聞いた。
計3通、じょじょに変化する文面は...
荒木さんによると、督促メールの文面をユニークにしたのは、コンビニ決済の場合の未払いキャンセルがきっかけだったと言う。
「該当のメールはコンビニ前払いでのご注文に対して送っているものなのですが、コンビニエンスストアでの支払いという特性上、注文後の未払いキャンセル数が課題となっていました。
そのため、より気づきやすく、支払いに行ってもらいやすくなるようにメールの改善を担当者が考えたことがきっかけです」(荒木さん)
改善前は、支払日の前日に1通のみ、いわゆる通常のリマインド通知を送っていたと言う。
その後、19年6月から、未払いキャンセルを減らす施策の1つとしてメールの回数と内容を変更し、現在のスタイルになった。
現在、督促メールは支払日まで3回送っている。その文面はじょじょに変化するらしい......。
今回は特別に、実際の文面を見せてもらった。
最初に督促メールが届くのは、期限の2日前だ。
【2日前】
コンビニでのお支払いをお忘れではありませんか?(中略)
******さんがお忘れでないかスタッフ一同心配しております...!
近くのコンビニが閉店してしまったのではないか、やり方が分からず困っていらっしゃるのではないか、と心配が尽きません。
閉店は防げませんが、お支払い情報と方法のご案内はできますので、以下にあらためて記載いたします。
お支払いをよろしくお願いいたします。
※すでにお支払い済みの方へは行き違いのご案内となりますが、ご了承ください。
購入者が忘れてしまっていないか、心配してくれていることが伝わってくる。多くの人が、このメールを読んだらすぐにコンビニへ駆け込むはず。
では、もしこれもスルーしてしまうとどんなメールが来るのだろう。
こちらが、期限前日にくる文面だ。
【前日】
コンビニでのお支払期限が明日になってしまいました...どうしましょう...(中略)
まだお支払いがお済みでないということは、****** さんになにか一大事があったのでしょうか...?
ご状況がわからず、このようなご連絡を失礼いたします。なにぶんわれわれの心配が臨界点を超え、スタッフによってはおやつを抜く始末です。
「支払いたいけど忘れてた!」というときは、以下にお支払いのために必要な情報をすべて記載いたしますので、お近くのコンビニでお支払いください。
このメールを見た今がチャンスです!ついでにおやつも買いましょう。
※すでにお支払い済みの方へは行き違いのご案内となりますが、ご了承ください。
スタッフ一同の心配が臨界点を超えてしまっている......。
ついでにおやつを買うことを提案し、コンビニへ向かうハードルを下げようとしてくれているようだ。
まさかこれもスルーする強者はなかなかいないと思いたいが、この後に届く最後通告が、ツイートを投稿した西さんに届いたものと同じメールである。
ユニークな督促メールは効果抜群
【当日】
本日がコンビニ払いの最終期限ですが逆に落ち着いてきました(中略)
スタッフ一同、****** さんがお支払いをされていないことに心配をし、本来食べるべきでないものを食べたりしましたが、いよいよ本日を期限にして落ち着いてきました。
無我の境地というか、憑き物が取れたかのように心が澄み渡っています。******さんに何かがあったわけではなく、きっと誤って注文をされたに違いないと信じられるようになりました。先日からお送りしたメールの数々が今は懐かしく感じます。
万一、本当にお支払いをされたいながらまだでしたら、期限が迫っておりますのでお急ぎいただければと思います。 もしできるのであれば、この画面を開いたままお財布を持って最寄りの指定されたコンビニに行き、お支払いを! われわれがお支払いを確認したその時は、喜びで流れる涙を拭う間も惜しみながらすぐさま生産を開始いたします。 お支払いについては以下の情報をご参考ください。
※すでにお支払い済みの方へは行き違いのご案内となりますが、ご了承ください。
ずっと心配してくれていたスタッフ一同だが、この段階に至ると逆に落ち着いている。
それはもはや「無我の境地」......メールを受け取った側としてはとにかく今すぐコンビニで支払いを終え、喜びの涙を流してもらいたい気持ちになる。
このように、他の企業ではなかなか見ない遊び心あふれるメールは、購入者の買い物体験を考慮してのもの。
SUZURIでは、メールを単なる連絡ではなく「購入者との貴重な接点」と捉えていると言う。
「督促というメールではございますが、メール配信は購入者さんとの貴重なタッチポイントなので少しでもお買いもの体験を楽しく感じていただけるようにコミュニケーションを設計しています」(荒木さん)
では、楽しい督促メールを3回にわたって送ることで、期限内にきちんと支払う人は増えたのだろうか。
「メールの内容の変更を行ったところコンビニ前払いのキャンセル率が20%減少するという改善が見られました」(荒木さん)
なんと、メール文の効果は想像以上だったようだ。
ちなみに、投稿者の西さんによると、間違えてコンビニ決済を選択してしまったものの後からクレジットカードで決済し、注文した「墾田永年私財法」Tシャツが無事に届いたそう。
皆さんは、くれぐれも支払いが遅れないように気をつけよう。